変わりゆくJK。
「なんだよそれ。どういう意味だ?」
「そのまんまの意味だよ。どうなっても責任取れないよ? いや、責任取らせてくれるならそれでもいいんだけど」
「お嬢が何を言ってるのかわからん」
アーニャは本当に私の様子がおかしいと心配してくれているらしく、「熱でもあるのか?」とか言って一歩踏み出し、私のおでこに自分のおでこを当ててきた。
手で触ればいいじゃん。
なんでおでこくっつけるの? そんなの漫画の中か新婚夫婦くらいしかしないってば。
「ん、ちょっと熱いんじゃないか?」
「誰のせいだよ……」
「なんの事だ……? まぁそれはいいとして、お嬢はもう夕食の準備しちゃった?」
私の気持ちなんて全然知らないでアーニャは買い物袋片手に靴を脱いで家に上がり込む。
「……まだだけど」
「よし。じゃあたまには私が作ってやろう。食材も買って来たから。無駄にならずに済んでよかったぜ」
私が反応に困っていると、すたすたと私の横を通り過ぎてアーニャが台所へ向かう。
「こじこじはどうしてる?」
「今は部屋で辞書読んでるよ」
あの子はふむふむとか独り言いいながら辞書を読み込むのが好きらしい。
妙に賢いのをこじらせるとああなるようだ。
「そっか。じゃあ美味い物作ってお嬢の飯よりこっちの方がいいって言わせてやるぜ」
アーニャは台所の前に立つと、袖をまくり、スーパーで買ってきたらしい食材を並べていく。
そして勝手知ったる我が家のように、引き出しを開けて包丁を取り出した。
「……アーニャ、本当になんとも思わないの? ここは……あの家だよ? 本気で泊っていくつもり?」
「そんな過ぎた事はどうでもいい。私もどうしてか分からないけれど、以前ほどここが嫌じゃない。……お嬢との思い出もあるからな」
……そう言ってくれるのはとっても嬉しいし、以前の私なら泣いて喜んだだろう。
だけど、私には今アーニャが言った「どうしてか分からないけれど」の部分に心当たりがあるんだよ。
それを言いたくてもアーニャにはもう伝える事が出来ない。
それをして万が一ダンジョン撤去なんてなってしまったら彼女に合わせる顔が無い。
私がこの状況を受け入れれば済む話だ。
アーニャも、記憶が改竄されたとかじゃなくて、話を聞く限り気持ちが楽になったから、という事らしいし……思っていたほどの悪影響はないのかもしれない。
むしろ彼女が過去の出来事で自分を責め続けていたのを知っているから、それが楽になるなら……アーニャが自分を許せるようになるのなら、きっとその方がいいのだ。
この変化はアーニャにとってプラスになっているのかどうか……。






