絶対に許さないJK。
私はアーニャを突き飛ばし、傍らに落ちていた大虐殺バールを掴んでその人影に向かって思い切り……。
振り抜こうとしたんだけど、現れた顔が見た事のある相手だったので思わず手が止まってしまった。
「待てお嬢! 大丈夫だ敵じゃない!」
アーニャがワンテンポ遅れて私を止めに入る。
うん、知ってる。
敵じゃないのは分かるよ。
「お嬢!! 目が覚めたんですかい!? あぁ俺はなんて事を……無事で本当に良かった。俺のやった事はけっして許される事じゃありやせん。死んで詫びます! さぁ殺してくれ!!」
うっわ暑苦しい……。
「イル君こんな所でなにしてんの……? 人間殺すのとか気持ち悪いからヤダよ。でも殺された事は絶対に忘れないし一生許さないからね」
「お嬢……! それじゃあ俺の気がすまねぇんだ頼む殺してくれ!!」
今目の前で土下座してるチンピラは入間鬼太郎という名前で、アーニャの腹違いの兄。
「だから私人殺すのなんか嫌だってば」
「どうせ生き返れるんだ。一度くらい殺してもらわなきゃ気が済まねぇ……!」
そこでアーニャが軽く怒気を含んだ声を放つ。
「誰が、誰を生き返らせるって? アイテム管理してるのは私だぞ。私があんたを生き返らせると本気で思うなら死ねよ」
「うっ……愛菜、俺の事あんたなんて言わずにちゃんとお兄ちゃんって呼んでくれよ……」
「私はあんたを兄貴だと思った事なんて無いし、それは今も変わらないよ。それで? 死ぬの? 死なないの?」
イル君は顔を青くしながらプルプル震えた手で自分の頭に銃口を向けた。
「ていっ!」
私はすかさずその手を蹴り上げて銃を弾き飛ばす。
「もう! そういうのいいから。それよりどういう事なのかちゃんと説明してくれる?」
そう、私だっていきなり意味も分からず殺されたんだ。理由くらい知る権利は有るはず。
ひたすら土下座をし続けるイル君が言うには、今外の世界でいろんな人に追われててどうしようもないからダンジョンに逃げ込んでたらしい。
どうやら私よりも先に押し入れのダンジョンに気付いて逃げ込んだんだとか。
イル君が私の家にいた理由とかその辺もろもろは今はいいとして、逃げ込んだ時からこのフロアに小屋があったんだって。
それでここに隠れ住んでたんだけど、食料とかは森の中で果物とかいろいろ集めて飢えを凌いでたらしい。
で、せっかく集めた食べ物を変なサルがいつも奪って行くのに腹を立てて、待ち構えてたんだそうだ。
「なるほど、それで急に入ってきたお嬢をサルと勘違いして撃ち殺したと」
「本当にすまねぇ!」
いきなり撃たれた事自体は、生き返れたのでいいとしよう。
そんな事よりもだよ。
私をサルと勘違いした事だけは絶対に許さない。






