サルに馬鹿にされるJK。
魔法陣は二重の円の中に六芒星が書かれているザ・魔法陣って感じで、これを配置した人はわざと分かりやすくこのデザインを採用したんだろうなって思う。
魔法陣に二人で入ると、二重の外の方の円から光が立ち上り私達を包んで、ふわっとエレベーターに乗った時みたいな浮遊感の後、目の前に新しい景色が広がる。
今度はなんだか森っぽい感じの場所に出た。
「また透明な壁に囲まれてる感じかな?」
「いや、よく見てみろ。ちゃんと向こうに岩肌が見えるだろ? 多分ここはちゃんと外壁があるよ。細い通路とかはなさそうだが……」
そんな事を話していると、急に私の首筋に激痛が走る。
「痛いっ!! 何これ痛い痛い!!」
「おいお嬢どうした!? 見せてみろ……うわ、ぱっくり割れてるじゃんか。何があった?」
首の後ろあたりから生暖かい液体が鎖骨のあたりを通って胸元に向かって垂れていく。
めっちゃ気持ち悪い。
てか血ですぎじゃない? これ私大丈夫なの?
「めちゃくちゃ痛いよなんとかして……」
「分った。ちょっと待ってろ」
アーニャが腰に付けた小さいポーチから一枚葉っぱを取り出して私の首筋に張り付ける。
するとその葉っぱがピカっと光ってボロボロと崩れていく。
その葉が消え去る頃には私のぱっくり割れた傷は跡形も無くなっていた。
「ありがとー。びっくりした……しっかし相変わらずその葉っぱ凄いね。どういう原理なんだろ」
「あんたが原理とか考えても無駄だから気にするな。それより何かいるぞ。気をつけろ!」
さらっと馬鹿にされた気がするけど、今はそんな場合じゃなさそうだ。
私は大虐殺バールを構えて辺りを見渡す。
確かに木と木の間を凄い速さで飛び回る何かがいる。
「あんにゃろ……私の柔肌に傷を付けた事後悔させてやんよ……!」
「そりゃ頼もしいね。現状あんたしか戦力にならないんだから頑張って倒してくれ。くれぐれも私に攻撃がこないようにな」
はいはい。
それはつまりきっちり壁になれよって事だよね。
いいですよー。どうせ私はアーニャ親衛隊その一ですよーだ。
せめて「お願いっ! 私を守って!」くらい言えないのかなぁ。
そしたらめちゃくちゃやる気出るのに。
「うわぁっ!!」
飛び回っている姿を追っていたら、急に目の前に飛び出してきて焦った。
なんとかバールで防いだけど、あれはサルだ。
手に鋭く長い爪が生えたサル。
またぴょんぴょんと飛び回って距離を取る。
あんにゃろめ……。
「アーニャ、ダンジョン内のオブジェクトって壊したらどうなる?」
「基本的にはしばらくすれば再生する筈だぞ。って、おいあんた何する気だ?」
「私あの動きについていける気がしないから、この周辺燃やし尽くしてやる!! 大虐殺バール! お前の力を見せてやれ!!」
私はバールをしっちゃかめっちゃかに振り回し、まだ散策もしていない森は熱気と炎に包まれた。
「馬鹿野郎! 私達まで焼け死ぬぞ!」
「あ、それは考えて無かった」
「死ね! いや、死ぬ! これはまずいって!」
私達の心配をよそに、思いのほか早く炎は鎮火した。






