プロローグ 出会い
「やっぱり、キャラデザが神だよなあ。何より絵が綺麗すぎる!!!本当にコロナリィ―アの見た目は滅茶苦茶好みなのになあ。なんで悪役王女様なのか…。」
私しかいない筈の寝室に響いた声に思わず辺りを見回した。今し方湯浴みと身支度を終え、メイドを下がらせた所だったのだから、当然部屋には誰もいない。夜に自分の寝室から知らない人間の声がすることなんて、十二年間生きてきた中で数える程しかない。そして、その数える程にはあった経験は全て身に危険が及ぶものだった。
王女の寝室に忍び込むのは非常に難しい。ここに来るまでには何度も城の警備を通らなくてはならないし、警備にはこの国最高峰の騎士が集められた近衛騎士団が当たっている。恐らくここは王国の中で王と王妃、そして兄達の寝室の次に安全な場所だ。
つまり、ここに忍び込めるということは相当な手練れ。
「特に!!!!本当に見た目がタイプすぎて辛い…。なんでリアたんは悪役王女様なのか…。私は正直リアたんを主人公にするか、リアたん攻略ルートからの百合展開か、リアたん友情エンドが欲しかった…。」
連呼される自分の名前が更に警戒を強める。一部の言葉の意味が分からないが、恐らく呪文か何かだろう。聞いたことのない呪文だから、対処のしようがないが未だ何も起きていない辺り遅効性の魔法か。とにかく相手のいる位置を把握しないと、迂闊な行動が出来ない。
部屋に二人きりになった瞬間に襲ってこなかったということは、相手もすぐに仕掛けるつもりではないだろう。大方、呪いか毒か。ならば、魔法をかけられることは許容するしかない。相手の詠唱は始まってしまっている上に、ここに忍び込める程の手練れを一人で倒す術を私は持っていない。私が生き残る方法は相手を倒すことではなく、相手の捕獲だ。
相手の外見、使用する魔法系統、声、何でも良い。情報を集めてこの部屋から相手が立ち去った後に見つけ出し、解呪か解毒の方法を聞き出すしかない。不確実な生き残り方法にはなるが、相手が部屋を出た瞬間にメイドや護衛を呼んだとして捕獲できる可能性は低い。
身じろぎすることなく思考を巡らし、結論を出した私は意を決して口を開いた。
「何処の手のもの?私に手を出してただで済むと思っているのかしら。今解呪か解毒の方法を教えるなら、減刑の口利きをしてあげるわ。今ここで私を害して無事逃げられたとしても、貴方が無事でいられる可能性は低いわよ。」
この部屋までたどり着く者は大抵が本職の暗殺者だ。今まで何度か同じ提案を持ち掛けたが、一度も相手が提案に乗ってきたことはない。だが、この提案への返答で情報を得られたことも多い。その経験から今回も同じ提案を持ち掛けた。
けれど、その日だけは違った。その日返ってきた答えは私が想像すらしていない、まさに予想の斜め上をいく返答だった。
「え、嘘!?リアたんの声!?いや、でも少し幼い?幻聴?幻聴かな?幻聴だな。好きだ好きだとは思っていたけど、まさかここまでとは…。一瞬でも本気で喜んでしまった自分が悲しい…。喜んだ分の悲しみと虚無感が凄い…。」
「…。」
去年の誕生日の夜、私が守護霊の声を聞くことができるようになった日から、私の人生は変わった。
初投稿の見切り発車なので、どこまで続けられるか分かりませんが、褒められると伸びるタイプなのでコメントとか頂けたら泣いて喜んで続き書きます。