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4日目-28

「(今日もGTMN料理とか、胃は無くてもリバースしてしまいそうです……)」うっぷ


 地獄のような(Hell's)料理屋(Kitchen)から解放された小枝は、最悪な気分で路地裏を歩いていた。ちなみに彼女は、GTMN料理を口にしたわけではない。いつも通り果実水しか飲んでいないので、悪くなっていたのは気分だけである。


 この時、巷では、毎日のようにHealth Kitchenに出入りしている小枝の事を見て、とある噂が立ちつつあったのだが——、


「(可能ならもう来たくはありません……。皆さん、どうしてあんなにもGTMN料理が好きなのでしょう?)」


——GTMN料理が苦手な小枝自身はまったく把握しておらず……。後に混乱を招くことになるとは、気付いていなかったようだ。その話について追々することにしよう。


 それはさておいて、小枝は急ぐように、路地裏を早足で歩いていた。人がいない場所を探して、現代世界に戻ろうとしていたのだ。


「(いつも路地裏から転移していますけど、そろそろ誰かに見つかりそうですよね……。もう、この際、どこかに家を借りてしまいましょうか?あっ……そういえば、今はお金がないのでした……)」


 税金以外にゴールドの使い道が無いと考え、半ば自暴自棄になって、手持ちのゴールドをギルドに渡してしまった事を思い出し、今更になって後悔する小枝。それから彼女は、金策について考えるものの、今からどうにか出来るわけでも、数分で家を借りられるわけでもなかったので……。取りあえず次の日の目標にすることにしたようだ。


 そして彼女は、今日も路地裏から、現代世界へと帰還した。



ブゥン……


「ただい——」


「?!」びくぅ


「あっ……グレーテルさん。目が覚めていたのですね?」


 小枝が現代世界の検疫室(?)に戻ってくると、そこにあった作業台(ベッド)の上では、グレーテルが眼を覚ましていた。彼女は、突然現れた小枝を見た瞬間、驚きのあまり身を引き、青いその眼を大きく見開く。


「コ、コエダちゃん?!」


「えぇ、小枝です。グレーテルさん、具合はどうです?どこか痛いところとかn——」


「あなたたち何者なの?!」


「えっ……」


 グレーテルの視線と表情が、恐怖の色に染まっていることに気付いて、小枝は思わず言葉に詰まった。近くには姉もいて、事情の説明を受けているはず……。にもかかわらず、恐怖するとはどういうことなのか。小枝には理解出来なかった。


 ……いや、正確に言えば、理解出来なくはなかった。自分たちとグレーテルが住む世界は別の世界で、文明の進み具合もまるで違うのである。グレーテルからしてみれば、自分たちのことは、もしかすると宇宙人か何かのように見えているのではないか……。小枝はそんな予想を立てつつも、そうでなければいいと考えていたようである。それはつまり、現代世界の技術の粋を集めて作られた自分たちに対し、忌避感や恐怖を抱いている——つまり、嫌われてしまった、とも言い換える事ができるのだから……。


 しかし、現状、小枝には、それ以外にグレーテルが恐怖を感じている理由に思い至れず……。その最悪の可能性を受け入れるほかなかったようである。


「……ごめんなさい、グレーテルさん。私たちが何者か分からなくて怖いというのは分かるのですが、私たちにグレーテルさんのことを傷付けるつもりはありません。むしろ、魔物のスタンピードで家に潰されて死にそうになっていたグレーテルさんを助けたくらいなのです」


 小枝のその言葉に対するグレーテルの返答は、小枝が予想したものとは大きく異なっていたようだ。


「それならそうと言ってくれれば良いのに!」


「……えっ?」


「この人、何も言わないで、私のことを押さえつけて、じろじろと身体中見てくるのよ?!」


「…………」むすっ


「……あっ」


 そして小枝は悟る。姉が酷く無口だったことを……。


「……姉様?」じとぉ


「…………!」びくっ


「どうして説明してくれないのですか?」


「…………」


「言葉に出して言っていただかないと、考えていることが通じないといつも言っているではないですか。姉妹の私たち同士なら何となく理解出来ますが、グレーテルさんは普通の人なのです。ちゃんと言葉で説明していただかなければ、まず通じませんよ?」


「……面目ない。緊張して、言葉が出なかった」


「子供ですか?!」


 キラが無口だった理由が、あまりに酷かったためか、はぁ、と溜息を吐いて頭を抱える小枝。それから彼女は、肩を落としたまま、姉に向かってこう言った。


「グレーテルさんに謝罪してください。私からではなく、姉様から直接です」


 その言葉に、キラはコクリと頷くと、グレーテルの方を向いて、そして言った。


「……申し訳ない」


「「えっ……それだけ?」」


「…………」かぁっ


 そして再び黙り込むキラ。どうやら彼女は、相当な恥ずかしがり屋だったようである。


 こうしてドタバタとした異世界生活4日目が終わり……。そしてそのまま5日目に突入した。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 90/90 ・『ブゥン……』がクセになってきた。 [気になる点] 現代世界(@超科学)って、神の世界か何かに見えるんでしょうか? [一言] ルシアホイホイ つ[稲荷寿司]  [稲荷寿司…
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