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19日目午前-05

「なぜにダイカーン殿に渡すのだ……」


「エカテリーナおねえちゃんが飲んだ方が、疲れに効くと思うから。今のエカテリーナお姉ちゃんからは、魔力を感じない」


 テンソルからの問いかけに、ノーチェはそう答えた。エカテリーナは元々魔法が殆ど使えない体質なのだが、その事情を知らないノーチェは、魔力を殆ど感じられないエカテリーナが魔力的に疲れていると思ったらしく……。彼女にマナを飲ませれば、魔力を回復させられる、と考えたようである。昨日の出来事——つまりエカテリーナが迷宮を一撃で破壊したという出来事を人伝に聞いていたことも、エカテリーナが魔力的に疲弊しているのだとノーチェに思わせてしまう理由の一つになっていたようだ。


 対するエカテリーナは、ノーチェから差し出された氷入りのマナを見て、目を丸くしていたようである。まさかノーチェが自分のために、()を出してくれるとは思っていなかったのだ。 


「こ、これはどうしたのです?」


「…………」かきかき[テンソルが水をほしいって言ってた。たぶん、エカテリーナおねえちゃんもほしいと思って。きっとつかれが取れる]


「まぁ!」ぱぁっ


 ノーチェの黒板を見たエカテリーナは、目をキラキラとさせてノーチェを見つめた。エカテリーナにとっては、気の利くノーチェのことが、天使か何かに見えていたのかも知れない。


「素敵……素敵よ!ノーチェちゃん。あぁ……私も、こんな気の利く妹が欲しかったわ……」ちらっ


「…………」ムスッ


 エカテリーナがアルティシアに視線を向ける。対するアルティシアは普段通りに顰め面を返す。2人にとっては、もはや様式美。パターンである。


 そんな中、エカテリーナは、嬉しそうな表情を浮かべたまま、コップの中身を口の中へと注ぎ込んだ。マナ自体は無色透明無味無臭の液体——というより、魔力が溶け込んだ水ようなものなので、彼女にはマナを飲んでいるという自覚は無いようだ。そもそも、マナを水として飲む地方もあるので、エカテリーナの身体に害が生じる事はないはずである。


 ただし——、


   ボフンッ!


——普通の濃度のマナなら、の話だが。そう、テンソルがノーチェに与えたマナは、古龍の知識を以て濃縮したマナなのである。単なる高品質なマナというわけではなかったのだ。


「うーん、普段飲むお水と違って、すごく甘くて、とっても美味しい気がするわ!」


 マナを飲み干したエカテリーナが、満足げにそう口にする。しかし一方で、彼女の様子を見ていた全員が、目を丸くしていたようだ。それは小枝も同じ。普段、目を閉じているはずの彼女ですら、目を大きく開けていた。


 一体何が起こったのか……。マナを飲み干したばかりのエカテリーナはまったく気付いていない様子だったせいか、アルティシアは思わず問いかけてしまう。


「カ、カーチャ?身体は大丈夫なのですか?!」


「えっ?何ですの?急に……」


「えっと……その……」


「ハッキリ言ってくださいまし」キリッ


「……その頭と腰に生えているモノのことです。というか、身体全体?」


「えっ……」


   フサァ……


 アルティシアに言われて頭を押さえようとしたエカテリーナが気付く。


「な゛っ、何ですか?!これはっ?!」


   フサァ……


 手が黄色い毛で覆われていたのだ。いや、手だけではない。全身が髪の毛と同じ色の黄色い毛で覆われていたのだ。ただし、顎の下は白い毛。そして頭からは——、


「耳が生えてる?!」


——三角形の尖った耳が生えていて、そして腰からは——、


   フサァ……


「尻尾も生えてるぅっ?!」


——ふっくらとした大きな尻尾が生えていたのだ。


 その見た目はどこからどう見ても狐。どうやら高濃度のマナを飲むと、魔物の場合は人に変化する一方で、人は何か別の生き物に変化してしまうようである。


エカテリーナ殿の髪の色を金髪として描いた頃から、いつかこの話を書きたいと思っておったのじゃ。

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[良い点] 543/543 ・いえーいぃ、モフられる未来しか見えない。  モフモフするのだ! [気になる点] っというのは置いておいて、げっそりオーラの予感 [一言] おおっと、昨日の個性コールは独…
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