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17日目午後-31

 そして小枝とアルティシアが、リビングからいなくなり、キラは一人取り残される形になった。


 そんなキラは、これからどのようにアルティシアたちとどのように関わっていくのか、その明確な方法を小枝に聞きそびれてしまったようである。ただ、何も分からなかったというわけでもなく、小枝がアルティシアたちの力を増強し、自分たちの心配がいらないほどに強くする、という考えを持っていることについては理解したようだ。


 先ほどの小枝とアルティシアの会話を思い出しながら、キラは自室の窓から見える夜空を眺めながら考えを巡らせた。


「(皆を強くする必要はある?)」


 人が魔物よりも圧倒的に弱いこの世界においては、ある程度の強さがあれば、魔物相手には勝てずとも、人相手にならそう簡単には負けないはずだった。弱肉強食の原理に照らし合わせるなら、強くなればなるほど、敵は少なくなっていくと言えるだろう。しかし実際には問題が起こっているのである。


「(ドラゴンを軽々と倒せるほどに強いのに、人には負ける?なぜ?)」


 ドラゴンはこの世界においても最高と言えるほどに強い種族である。そんな彼らのことを、アルティシアたちは易々と蹂躙していたのだ。その事実を鑑みれば、既にアルティシアたちは、人同士の争いなど簡単に撥ね除けることができるはずだった。


 にもかかわらず、ノーチェ、リンカーン、グラウベルの3人は、一方的に傷付けられてしまったのだ。それはつまり、強いからといって、自分の身を守れるとは限らない事を証明しているのではないか……。キラはそんな疑問を抱いていたらしい。


 力があるのに、争いごとを防げないのは何故か。キラには——いや、正確には、ここにはいない小枝にも、原因は一つしか考えられなかったようだ。


「(……やっぱり、力の使い方を間違えているとしか考えられない……)」


 アルティシアたちは、小枝から授業を受けた結果、かなり高度な知識を有するに至っているのである。その上、アルティシアやグレーテル、あるいはノーチェなどは、魔法という形で相当に強い力を行使出来るのだ。知力もあり、魔力もあるというのに彼女たちが争いごとに巻き込まれるのは何故か。最早、力の使い方、あるいは知識の使い方を間違っているとしか、キラにも小枝にも考えられなかったようだ。


 まぁ、実際にはそこまで複雑な話ではなく、単に、人の社会で生きる以上、人のルールに縛られなくてはならないために、憲兵隊や騎士団といった権力組織に対抗出来なかっただけである。しかし、元の世界で、人を避けて生活していたキラたちにとっては、人の社会というものが理解出来ず、すべての争いは力でどうにかなると考えていたのだ。非常に原始的な考え方だと言えなくなかったが、そもそもガーディアン同士では争いごとと言えるようなことは殆ど起きないことを考えるなら、一周回って、人々の争いの方こそ原始的、とキラたちには思えていたのかも知れない。だからこそ、原始的な思考を持つ有象無象は、圧倒的な力によって、ねじ伏せるべきなのではないか、と……。


「(前回のノーチェの時は、躊躇が原因。アルティシアかグレーテルが檻を壊して、ノーチェを助けに行けば、あんなことにはならなかった。じゃぁ、今回のリンカーンとグラウベルの出来事は……うん。また躊躇)」


 力の使い方のどの辺が間違っているのかを考えたキラは、"躊躇"という言葉に辿り着いた。人のルールに則って大人しく捕まるという行為が、キラや小枝には、躊躇をしているように思えてならなかったのだ。


「……躊躇は良くない」


 結果、キラは、自分の教え子に当たるカイネとアンジェラに対し、徹底して"躊躇"を無くすよう授業を進めることにしたようである。この世界だけでなく、人として生きるためには、躊躇も必要なはずだが、人ではないガーディアンたるキラにとっては、やはり無駄だとしか思えなかったようだ。


……人の法?なにそれ、おいしいのかの?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 503/503 ・なるほど。仲間内でも差異が生じるわけですな [気になる点] いいぞ。躊躇なんて投げ捨ててしまえー [一言] 魔王:「力こそ正義。いい時代になったものだ」
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