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1日目-01

 小枝が出発した時、地球——特に日本では、夕方だった。


 一方、彼女がやってきた異世界は、というと——、


「……真っ昼間ですね。時差は6時間くらいでしょうか?」


——という小枝の独り言の通り、昼少し前ころといった雰囲気だった。4時間ほど前にやってきた時には朝方だったので、時間の流れ方は地球とほぼ一致しているようである。


 ちなみに、この世界に再びやってきた小枝は、初めてやってきた時とは異なり、きりもみ状態に陥るということは無かった。どうやら空間制御システムは、使う直前の物理状態と位置がそのまま維持されるという親切設計になっているらしく、来るたび来るたび、きりもみ状態になるという展開にはならなそうだった。というわけで、彼女は今、空中にいて、そこから森を見下ろしている状態である。


 人の姿のまま空に浮かぶ彼女は、そのまま周囲を見渡してから、何かを考え込むかのように眼を細めた。


「(さーて、これからどうしましょう?ビーコンを探す限り、やはり周囲にワルツの気配は無さそうですし、地面に落下した様子も無さそうですし……)」


 妹のことは簡単に見つけられそうになかったので、小枝は今から24時間先までのスケジュールを考え始めた。


「(食料は持ってきましたが、可能なら現地調達出来た方が良いでしょう。そのためにはまず、森の植生について詳しい調査が必要ですね。あとは動物がいれば捕まえて——)」


 と、食料の確保について、小枝が思慮を巡らせている時のことだった。


「クェェェェェッ!!」


 どこからともなく動物のものと思しき鳴き声が聞こえてくる。


「鳥ぃ?!」


 小枝は喜々とした表情を浮かべながら、声が聞こえた方向へと視線を向けた。この惑星にも鳥などの動物がいるのか、と嬉しくなったのだ。


 しかし、彼女が視線を向けた先にいたのは、期待したような鳥ではなかった。ただし、空を飛ぶ動物である事に間違いは無かったようだが。


「プ、プテラノドン?!」


 空を飛ぶ恐竜のような動物。その予想外すぎる姿に、小枝は思わず声を上げた。


 コウモリのような薄い膜の付いた大きな翼を羽ばたかせながら、大空を飛ぶ巨大な爬虫類。その様子はまるで恐竜のプテラノドンのような見た目で……。到底、鳥には見えなかった。


 それどころか、ただの動物ですらなかったようである。


「クェェェェェッ!!」


ドゴォォォォ!!


 プテラノドンのような動物が口を開けると、そこから直径30cm程度の火の玉が吹き出てきたのだ。


「ちょっ?!」


 自分に向かって飛んでくる火球を見て、小枝は眼を疑った。動物が火球を吐き出すなど、あり得ない事だったからだ。


 ただ、機械である彼女にとって、プテラノドン(?)が吐き出した火球は、脅威でも何でもなかった。彼女の反応速度や思考速度に対して、あまりに遅かったのだ。


 ゆえに彼女は最小限の動きで火球を躱すと——、


「これ、どうなっているんでしょう?」


——自分の横を飛んでいく火球を追いかけ始めた。一定の距離を保ったまま、彼女は火球の観察を始める。


 そんな小枝の様子を見ていたプテラノドン(?)は、彼女のことを追いかけようとはしなかった。自身が放った火球を、異様な動きで追いかけていく人間を見るなど、彼にとっても初めての出来事だったので、得体の知れない不安を感じたのだ。


 こうしてプテラノドン(?)は、九死に一生を得たのである。



「結局、2kmを飛んで来てしまいましたが、本当にどうなっているのでしょう?」


 小枝が追いかけた火球は、そのサイズを変える事無く、緩やかな放物線を描きながら飛び続け、発射地点からおよそ2kmほど離れた場所で、ふわりと掻き消えるかのように消えてしまった。その現象が不可解だったためか、小枝は虚空を見つめたまま首を傾げていたようである。


 そして、10秒後。


「……はっ?!いけない、いけない……。つい目的を忘れるところでした」


 飛んでいった火球を"そういうものだ"と結論づけた小枝は、再び森に向かって視線を下ろす。


 すると、偶然にも、彼女は、そこにあるものを見つけた。


「道がある?!」


 明らかに人工物と言えるような道が、深い森の中に作られていたのだ。木々に隠れていたせいで、空からは殆ど見えなかったせいか、今まで気付けなかったらしい。


「(ということは、人間……いえ、知的生命体がいるということですか?)」


 そう考えた小枝は、小さく口元を緩ませた後……。打って変わって険しい表情を浮かべた。


 というのも、彼女たちガーディアンは、これまでできるだけ人前に姿を見せないように生きてきたのである。しかし、空を浮いている現状、彼女の姿は、誰かが空を見上げていれば否が応でも見えてしまう状態で……。見る相手が人間ではないと確実に言い切れるまでは、可能な限り姿を見られないように振る舞うことが望ましかったのだ。


 ゆえに小枝は急いで森へと下りる。その際、道に直接下りなかったのは、偶然に誰かと遭遇することを怖れたためか。


「(……もしかして、さっきのプテラノドンが、この世界に住む知的生命体……?いえ、彼らには翼があったので、それは無いですね。彼らに地面を歩く必要はありませんから……)」


 小枝はそんなことを考えながら、森の中を移動して……。幅が3mほどある道らしい道へと歩み出たのであった。


サブタイトルに個別の名前を付けると後々後悔すると学んだゆえ、簡単に書くことにしたのじゃ。


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