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14日目午前-09

「あの、つかぬ事をお伺いしたいのですが、よろしいでしょうか?」


「ふむ、なんd……おっほん。なんでしょうか?」


 突然話しかけられるとは思ってなかったためか、フューリオンは元のしゃべり方で喋ってしまいそうになるものの、どうにか思いとどまって、兵士らしい口調で返答した。


 すると、シワ一つ無い黒い服に身を包んだ少女が、質問を口にし始める。


「実は、国王陛下に謁見させていただくご予定になっているのですが、いかんせん、お手紙をいただいたタイミングが悪く、謁見の日取りが今日なのか、それとも明日なのか分からないのです。それで、どこに行けば教えていただけるのかと思いまして……」


「謁見の予定……今日は入っていないから明日となると……あぁ!」


 そしてフューリオンは合点がいった。明日、ブレスベルゲンの領主と会合することを思い出したのだ。


 それと同時に彼は思う。まだ見ぬアルティシアというブレスベルゲンの領主が——、


「(そうか……此奴がアルティシアか!)」


——そこにいた身なりの良い少女なのではないか、と。そう、アルティシアが国王に会ったことがないのと同じで、国王もアルティシアに会ったことが無く、お互いに姿を知らなかったのである。


 そのせいか、フューリオンは、アルティシア(?)に興味が湧いたらしい。スケジュールを話すだけで会話を終えようとしていた彼は、単に用件のやり取りだけで会話を終わらせるのではなく、もう少しそこにいたアルティシア(?)と話をしてみることにしたようである。あるいは、謁見の場で話すのと、市井に紛れて話すのでは、引き出せる情報が異なると思ったことも、理由の一つだったと言えるかも知れない。


「わたs……陛下との謁見は明日の昼過ぎだ。明日の当直の門番に事の次第を知らせておくから、ブレスベルゲンの名を出せば、来賓室まで案内してくれるだろう」


「それはありがとうございます。では私はこれd——」


「あぁ、待ってくれ」


「?」


「実はそなt……貴殿に聞きたいと思っていたことがある」


「私に、ですか?」


「なに、難しい話ではない。最近、ブレスベルゲンから、王都への食材の供給が滞っておってな……。風の噂では、ブレスベルゲンの領主が謀反を起こしたとも聞く。それと同時に、軍務卿のガイアス殿や、教会の司教殿もブレスベルゲンで行方不明になった、ともな。どうも、ブレスベルゲン界隈で、焦臭い空気が立ちこめておるようだが……実際にはどうなのだ?外からではよく見えないのだ。内側から見た真実を個人的に教えてはくれまいか?」


 フューリオンは謁見の場でアルティシアに聞く予定だった話を、黒い服の少女へと問いかけた。


 するとアルティシア(?)は、目を瞑ったままフューリオンを見上げて、彼の質問に答え始める。


「今、貴方が挙げられた出来事は、すべてバラバラの出来事で、それぞれ関連する出来事ではありません。そもそも軍務卿のガイアス様はどんなに探してもブレスベルゲンの領内に入った痕跡は無く、審問官様の方はスタンピードから町を救おうとして大怪我を負われたものの、無事に王都に戻られたとお話を伺っております。また、食料の供給が滞っているのは、魔女の森のスタンピード後、森の中で寄生虫が蔓延して、ブレスベルゲン周囲の昆ty……食材が、食用に適さなくなったので、寄生虫騒動が落ち着くまでの間、採取を見合わせているだけです」


「ふむ……そういうことだったのだな……(枢機卿の話とも合致しておるか……)」


「いったいどこからブレスベルゲンについての悪い噂が立っているのか……。私としては今回の王都訪問で、その原因が突き止められるとありがたいと考えておりますが……どこからそういった噂が出てくるのか、門番様はご存じですか?」


 黒いアルティシア(?)が問いかけると、全身甲冑姿のフューリオンは、その甲冑の下にヒゲでも隠しているのか、まるで長いヒゲを触るかのような素振りを見せながら返答した。


「……好き好んでそういった混乱を招くような噂を流す輩が城内にいるとすれば、国益を損なうゆえ罰せねばならんが、少なくとも私の耳にはそういった者がおるという話は入ってきておらん。むしろ、私の方が教えてほしいものだ。そういった不埒を働く者がおれば罰するというのに……」


 といって溜息を吐くフューリオン。そんな彼は、正体を悟られまいと全身に甲冑を身につけており、顔の表情が外から見えることはなかったものの、甲冑の中でひどく幻滅したような表情を浮かべていたようである。


 そんなフューリオンの姿を知ってか知らずか——、


「ふふっ……」


——アルティシア(?)はニッコリと微笑んだ。


「どうしたのだ?急に……」


「いえいえ、門番さんは随分と親切な方で、国のことをとても大切に考えられているのだと思いまして」


「む……」


「貴方のような方が中央にいらっしゃれば、この国も安泰でしょう」


「ふふん?」


「さて、そろそろ行かなければなりません。もしも陛下にお会いするようなことがございましたら、明日の謁見の際はどうぞよろしくお願いしますとお伝えください。あぁ、あと……」


「?」


「貴方は多分、誤解されているかと思いますが、私はアルティシアちゃんではありませんよ?」


「えっ……」


「では、明日はよろしくお願いいたしますね。()()()()


 そう言って恭しく礼をした後で、その場を立ち去る黒髪の少女。そんな彼女の背中が人混みの中に消えるまで、フューリオンは彼女から視線が離せず……。ずっとその場に立ちすくんでいたようである。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 402/402 ・素敵な会話に見えました。お互いいい人ですね ・『黒いアルティシア(?)』から存在感を感じ取りました [気になる点] 小枝さんやりますね。王様は演技ガタガタでしたけど。…
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