13日目午前-19
「zzz……んへっ?……はっ?!」
カトリーヌは目を覚ました。何かとても良い夢を見ていたような気がするが、彼女にはその光景を思い出すことが出来ない。というのも、目覚めた彼女は、瞳に飛び込んできた光景を理解した途端、再び意識が飛びそうになってしまいそうなほど驚いてしまったからだ。
「……ようやく目を覚まされましたかぁ〜。急に倒れられたのでぇ〜、一時は死んでしまったのではないかと心配になりましたよぉ〜?」
目を開けたら面前に広がるカトレアの顔。息が掛かるくらいの距離まで顔を近づけていたカトレアを前に、カトリーヌは思わず——、
「ひあっ?!」
ゴツッ!
「「あいたーっ!!」」
——と、飛び起きて……。カトレアの額に正面衝突。2人は揃って頭を抱えた。
その痛みが、カトリーヌの頭をリセットする。カトレアとは誰なのか、自分はいま何をしたのか、そして自分は今までどんな状態にあったのかなどなど……。一気に様々な情報が頭の中を駆け巡った。
そのすべてを同時に理解したカトリーヌは——、
「ひえぇぇっ?!」
——思わず奇声を上げてしまう。今、彼女は、王女であるカトレアに、頭突きをお見舞いしたのだ。それ即ち、死刑。もはや言い逃れは出来なかった。
藁を掴む思いで彼女が周囲に助けを求めようとしたとき、彼女はとある事実に気付くことになる。眼前によく見たことのある顔があって、そこにあった瞳が、唖然の一色に染まりきっていることに……。
「「な、なんで私が……」」
カトリーヌ(?)とカトレア(?)の声が重なる。2人が同時に声を上げたのだ。それもそのはず——、
「「どうして私が2人?!」」
——カトリーヌの目の前には、どういうわけかもう一人自分がいて、そして相手側のカトリーヌ(?)からしても、そこにもう一人の自分が見えていたのだ。とはいえカトリーヌが2人に増えてしまったというわけではない。
「……もしかして、カトリーヌとカトレア様の中身が入れ替わっちゃった感じ?」
額をぶつけた拍子に、カトリーヌとカトレアの意識が入れ替わってしまったようなのだ。漫画などで良くあるパターンである。
その状況に、普段は柔和なカトレア(意識)も、驚きが隠せないどころか——、
「すごい……すごいです!まさかおとぎ話の中にあった出来事が現実世界でも起こるなんて思いもしませんでした!なるほどなるほど……。感覚は同じなのですね。すこし胸が小さい気がしなくもないですが、肩こりをしないという意味ではこのくらいが丁度良いでしょう。ほうほう?こんなところにホクロが——」
——と、大興奮して、いつものしゃべり方を忘れている様子で……。カトリーヌの身体を遠慮無く確認し始めたようである。
「ちょっ!まって!それ私の身体!」
「えっ?あぁ〜、なるほど〜。私がこの身体に入っているということは〜、つまり逆にカトリーヌさんが私の身体に入り込んでいるということですよね〜。ダメですよ〜?おイタは〜」
「しないわよ!じゃなくて、しませんよ!」
「しかし困りましたね〜……。このままでは〜、カトリーヌさんが〜、私の代わりにお城に戻ることになってしまいそうです。まぁ〜、それもいいかもしれませんね〜。その間〜、私は〜、束の間の休日をエンジョイすることにしましょう」
「え゛っ?!」
カトリーヌ(意識)が信じられない言葉を聞いた、といわんばかりに唖然としていると、彼女の横にいたヘレンから声が掛かる。
「先生、そろそろお時間です。遊ばれていないで帰りますよ?」
「えっ、ちょっ?!」
「ではでは〜、頑張ってくださいね〜?」
「さぁ、先生!帰りましょう!」
「う、うそっ……そんな……!」
ヘレンに手を引かれて1歩また1歩と歩いて行く度に、徐々に遠ざかっていくギルドの景色。そこには慣れ親しんだ職場の光景と、腐れ縁とも言える幼なじみのダニエルの苦笑、そして自分を見送るもう一人の自分の姿があって……。
「いやぁぁぁぁっ!」
と声を上げたところで——、
「!」ガバッ
——カトリーヌは再び目を覚ました。具体的にはギルドの中にあったベンチの上で、である。
「な、何だ夢か……」
どうやらすべて夢だったらしい。
しかし、今度ばかりは、その夢の内容をハッキリと思い出せたようだ。なにしろ、彼女の目の前には——、
「やはり眠っておられたのですか〜……」
——カトレアの顔があって……。カトリーヌのことを診察するように、彼女の頭や腕に手を当てていたからだ。その光景は、夢の中のカトレアとほぼ同じで……。もはやわざわざ夢の内容を思い出す必要すらなかったようである。
「わ、私……あぁ、よかった……。胸が大きくなってない……」
「えっ?」
「いえ、なんでも……」
そう言ってホッと胸をなで下ろすカトリーヌ。
しかし、彼女はこの後で、夢の内容よりも更に酷い状況に自分が置かれていることを知ることになるのである。
よく夢オチ展開というものがあるわけじゃが、妾はアレが嫌いなのじゃ。
もしも夢オチ展開を書くなら、こんな感じなら許容出来るかと思って、試しに書いてみたのじゃ?




