10日目午前-05
なんか、サブタイの日付が無茶苦茶になっておったゆえ修正したのじゃ。
おかしいのう……。
ドシャッ……ドシャッ……ドシャシャーーッ……
地表スレスレを飛んでいた地面効果翼機が何度か沼地の上でバウンドして、無事に着陸(不時着?)を果たす。ブルースワンプフィールドは、その名の通り"青い沼地"という意味なので、不時着に適した沼地が広がっていたのだ。
「着陸時の安定性は悪くないけど、固い地面の上に降りる時は、跳ねるのが怖いから、もう少しゆっくり着陸出来たほうが良さそうね……」
「もう少し船体を長くして、お尻から着陸出来るように改良してみましょう」
[ タイヤをつける? ]
「それよ!」
「それです!」
「!」ぱたぱた
と着陸した後、すかさず反省会を開くアルティシアたち3人組。そんな生徒たちを前にした小枝教諭は——、
「(なんか、想像していたのとかなり違う展開になってしまいましたね……。このまま放っておいたら、このうち航空機や飛空艇の類いを作ってしまうのではないでしょうか?)」
——と生徒たちの行動に、内心で驚いていたようである。
しかし、彼女はスパルタン。その内心を表に出すこと無く、淡々とした様子で口を開いた。
「行程の半分、お疲れ様です。残り半分も頑張って下さい」
対する生徒たちとしては、そんなシンプルな労いの言葉でも、十分に嬉しかったようである。
「はいっ!」
[ がんばる! ]
「無事に戻れるかしら……それが心配だわ……」
そんなやり取りをした後、地面効果翼機が沼の水で浸水する前に、一行は岸へと辿り着いく。そしてWIG機を人の目に付かない場所に停泊させた後、目的のブルースワンプフィールドへと向かって歩き出したのである。
◇
ブルースワンプフィールドに着くと、香ばしい香りが立ちこめていた。昼食を作っている家屋が多く存在したのだ。
ブレスベルゲンほど大きくない町だったので、さすがに大量の屋台が昼食を売っている、というわけではなかったようである。それでも、そこにあった屋台では、ジューッ、という食欲をそそられるような音を上げながら、魔物にタレを付けて焼いただけのシンプルな串料理が振る舞われていたようだ。沼が多い地方なので、沼特有の魔物が多く生息しているらしい。
ただ……。アルティシアにしても、グレーテルにしても、あまり食欲はそそられなかったようだが。
「トードの丸焼き……」
「案外行ける、って話は聞くけど……」
[ とり肉みたいな味がする! ]
と、唯一、カエルの丸焼きに抵抗がなかったのか、美味しいと言わんばかり文言で味を主張をするノーチェ。しかし、他の2人はあまり乗り気ではなかったらしく……。目を輝かせるノーチェを相手に、微妙そうな表情を浮かべることしか出来なかったようだ。
そんな中で小枝が問いかける。
「食べますか?カエル」
すると、アルティシアが、口をムグムグと動かしながら言った。
「その……コエダ様のお弁当が無いようでしたら考えます」
グレーテルもその後に続く。
「そ、そうね……。コエダちゃんのお弁当が楽しみだから、遠慮しておくわ?」
年長者たちの言葉を聞いて、ノーチェも黒板を掲げた。
[ お姉ちゃんのおべんとーがあるからだいじょうぶ! ]
そんな3人に小枝は言った。
「実は今日、お弁当を作ってきて——」
「「「えっ……」」」
「ありますよ?」
「「「…………」」」
「……なんかすみません。ただの冗談です」
皆、ぽかーん、と口を開けている様子を見て、冗談が盛大に滑ってしまった事に気付き、謝罪をする小枝。
その後、彼女は、話題を切り替えて、ダメージコントロールを図る。
「食事の前に、とりあえず町のギルドに向かいましょう。ただ荷物を届けるだけの簡単なお仕事ですから、受領印をもらうだけで終わりのはずです。そんなに時間は掛からないでしょう」
「そうですね。賛成です」
「私もそれでいいわ?」
[ ノーチェも! ]
「では、行きましょうか」
そして町の中を歩き始める小枝たち4人組。
それから間もなくして、彼女たちは、ギルドの看板を見つけることになる。しかし、小枝はそのまま建物内部には入らず、扉から少し離れた場所で立ち止まった。
「「「?」」」
「ギルドに入る前に、みなさんには言っておかなくてはならないことがあります。この世界のギルドや冒険者の方々は、見た目や常識というものに非常に拘る方々で溢れているのです。そのため、私やアルティシアちゃん、あるいはノーチェちゃんがギルドに入ると、ギルドの受付の方や冒険者の方々に絡まれる可能性が否定出来ないのです」
「……私は良いの?」
「グレーテルさんは見た目が大人なので問題は無いと思います」
「……それってつまり、私は老けt——」
「ともかく、行き付けではない初めてのギルドに入るときは、覚悟を持って入って欲しいのです。では行きます」
グレーテルに余計な事は喋らせずに、ギルドの扉に手を掛ける小枝。
そして彼女はその扉を開くのだが……。その中での展開は、小枝が想定していたものとは大きく異なっていたようである。




