10日目午前-03
台車にタイヤをくっつけて、そこにパラシュートを取り付けただけのシンプルな乗り物。それが試作1号車だった。ちなみにタイヤの側面には、小枝の助言で、木の板を押し当てるというブレーキが取り付けられている。
「……いきますね」
「……えぇ」
「…………」ごくり
制作者3人が試作車に乗った後、アルティシアは台車に取り付けられたパラシュートに向かって風魔法を行使した。
……が。
ビュオォォォ!!
「あれ?動かn――」
ギュン!ガンッ!
ガタガタガタ!
「「「きゃっ?!」」」
なかなかパラシュートが開かず、風魔法を強くしていった結果、ある風速を超えたところで一気にパラシュートが開き、台車が勢いよく引っ張られる。その結果、試作車両は不整地の上をバタバタと揺れながら移動し始めるのだが、余りに勢いが強かったせいか、皆、思わず悲鳴を上げた。
そしてノーチェが転がり落ちそうになったところでグレーテルが緊急ブレーキを掛けて事なきを得る。
「あぶな……。これ、パラシュートを畳んだ状態じゃダメそうね。最初から開いた状態で風魔法を送り込まないと……」
「…………」こくこく
「そ、そうですね……。すみません。力加減を誤ってしまったようです」
と言って、しゅんと肩を落とすアルティシア。
そんな彼女の肩にグレーテルはポンと手を置いて……。
「まぁ、失敗しない人なんて誰もいないから、気にすることじゃないわ?」
そんな励ましの言葉を口にした。ノーチェも黒板に[ だいじょうぶ! ]と書いていたようである。
「……ありがとうございます。では、すぐに修正して実験してみましょう」
そしてパラシュートの縁に木の枠を取り付ける3人組。ついでにパラシュートを車体に固定して、転げ落ちないよう取っ手も付けて……。間もなくして、試作2号車が完成した。
「……それじゃ、いきますね?」
「「…………」」こくり
ブワッ!
グレーテルとノーチェが頷いた直後、馬車の後ろから風が吹き抜けた。すると今度はゆっくりと車体が動き始めるのだが――、
ガタガタガタ!
「な、なんか、す、すごく揺れるわねっ?!」
「っ!し、舌を噛みましたっ!」
「…………」かきかき「※×○☆△!」
――サスペンションの類いが付いていなかったせいか、揺れが酷く、乗り続けられるような代物ではなかったようである。
結局、20mほど移動したところで、3人は試作車を止めた。
「悪くはないけど、これじゃ乗り心地が最悪ね。馬車のタイヤってどうなってたっけ?」
「あぁ、たしかバネが付いてましたね」
[ 鉄のいた? ]
と、板バネ式のサスペンションを思い出す3人。
しかし彼女たちは、板バネの取り付けを諦める。そもそもその場には鉄が無く、板バネを作ることは出来ないと考えたからだ。
ちなみに小枝としては、相談されれば、板バネやそれを固定するための金具くらいなら提供しようかと考えていたようである。しかし、3人が、あーでもない、こーでもない、とアイディアを出し合っている様子を見ているうちに、横から口を挟むのはどうかと思ったらしく……。彼女はそっと3人のことを見守っていたようだ。
そしてアルティシアたちは、とある結論にたどり着く。
「つまり、揺れなければ良いんですよね?飛べば良いのでは?」
「飛ぶ……いや、それ、パラセーリングと同じじゃ……」
[ 少しだけうく? ]
「そうです。完全に飛ぶというのはどうかとおもいますが、私たちが乗る部分だけ、タイヤの付いた車体から浮けばいいのではないかと思うのです」
「あぁ、なるほど。車体を二重構造にして、上と下が離れるようにする訳ね?浮き方は……パラセーリングと同じ感じ?」
「パラシュートを斜め上に取り付けて、浮きながら前進するように角度を調整すればいいのでは?」
「そういうことね。やってみましょうか」
「…………」こくこく
そして再び改良を重ねる3人。段々と作業になれてきたのか、試作3号車は数分程度で完成する。
「じゃぁ、行きますね」
「さてどうなることやら……」
「…………」
グレーテルとノーチェが固唾を飲んで見守る中。アルティシアが風魔法を行使した――その瞬間だった。
ギギギ……フワッ……ガタガタガタ!
二重構造の車体の内、上側だけが浮かび上がり、それに追従する形で、下側のタイヤ付きの車体が追従する。
コトコトコト……
「んー、良い感じね」
「でもちょっとこれは……」
[ びゅんびゅん! ]
ドドドドド……!
みるみるうちに車体が加速していく。
最初は歩く程度の速度だったものが、走るよりも速くなり、ついには馬単体よりも早くなっていく。その内にタイヤが路面に追従出来なくなり、バウンドして、ドンドンと跳ね始めた。
「やばいやばいやばい!」
「!」
「と、止めます!」
そして風魔法止めて、ブレーキを掛けるアルティシア。結果、大事故に繋がる前に、車体を止めることに成功する。
そんな3人の所へと、小枝がやってきた。
「良い感じで出来たのではないですか?」
しかし3人の表情は暗い。
「……まだね」
「これでは危険です」
「!」こくこく
どうやら小枝が納得しても、3人は納得できなかったらしい。
結果、彼女たちは、車体にさらなる改良を加えて、試作4号車、5号車、6号車と作っていくのだが……。そのたびに段々と馬車の形状からは遠ざかっていったのは、小枝の授業の賜か、それとも必然的な流れか。
なんか、テンポが速いのじゃ……。
まぁでも、2週間目ゆえ、こんなものかのう……。




