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7日目-06

 自宅の地下にあった岩風呂へ向かう道中、ノーチェは心配そうな表情を浮かべていた。周囲が薄暗かったということもそうだが、自身の手を引くキラが無口だったので、人見知りをしていたのだ。


 しかしキラの方は、ノーチェのことなど気にする様子なく、どんどん廊下を進み、そして暗い階段を降り始める。


「……ここ」


「…………」ごくり


 階段の先にあった脱衣所までやってきたノーチェは、思わず息を飲んだ。どこまでも続くかのように思えた薄暗い階段を降りきったところにあった部屋の奥。その薄暗い空間の先にあった扉は、向こう側を望むことができず、中に何があるのか見えなかったのである。扉の向こうには、もしかすると、言葉にすることも(はばか)られるような恐ろしい光景が広がっているのではないか……。険しい表情を見せていたノーチェにとって、その扉はもしかすると、地獄の門のように見えていたのかもしれない。


 しかしである。つい数時間前、同じ場所に来たアルティシアやグレーテルたちの反応がそうだったように、ノーチェの表情も、キラがガチャリと浴室の扉を開けた直後、激変することになる。


「…………!」ぱぁ


 落ち着けるようにデザインされた間接照明。優しく包むかのような温泉の熱気。そして温泉の湯気自体がもつ鎮静の効果……。それらが相まって、ノーチェの中から急速に不安な感情を取り除いていく。


 その結果、直前の心配そうな表情が打って変わって、目を輝かせていたノーチェへと、キラが手短に説明を始めた。


「……服を脱いでこのかごの中に入れる」


「……!」ぬぎぬぎ


「……そこのシャワーで頭と身体を洗う」


「…………?」


 どうやらノーチェは、"シャワー"というものが分からなかったらしい。まぁ、当然だが。


 首をかしげるノーチェを見たキラは、無言まま服の袖と裾を捲り始めた。ノーチェの背中を流すことにしたのだ。彼女は準備を終えると、先に浴室の中へと入って……。そして——、


「……ここに座る」


——シャワーで洗浄した椅子へと、ノーチェのことを誘った。


 するとノーチェは、浴室の中の光景を物珍しそうに見回しながら、キラに言われるがままに木の椅子の上へと腰掛ける。そんな彼女の背中へと、キラはシャワーを掛けた。


シャァァァァ……


「!」


「……熱い?」


「…………」ふるふる


「……冷たい?」


「…………」ふるふる


「……そう。なら、頭にお湯と石けんをかけるから、目を瞑って」


「…………」ぎゅっ


 石けんをかけるというキラの言葉に、ノーチェは疑問を抱いていたようである。何しろ、石けんは固形であることが当然の世界。"かける"という言葉は、まるで食べ物にかけるソースのように聞こえていて、固形の石けんをどうやって"かける"というのか、想像が結びつかなかったらしい。


トロォー……


「……?」


シャカシャカ……


「……??」


 石けんが目に入ると痛いということを知っていたノーチェは、初めての感覚が頭を襲っても、目を開けることができなかった。ただ、キラに洗われていた頭はとても気持ちが良かったらしく、彼女はキラにされるがまま、大人しくしていたようだ。


 そして、お湯で洗い流して、再びシャンプーで洗って、最後にコンディショナーをかけて、再びお湯で洗い流したところで——、


「……終わった。もう目を開けても良い」


——キラがノーチェに終わりを告げた。


「……痛くなかった?」


「…………」ふるふる


「……そう」


 首を振るノーチェの髪の毛を、キラは優しく持ち上げると、身体に付かないようバンドを使って頭の上で固定する。


 そして今度は布(BBSウールではない)にボディーソープを垂らし、泡立ててから、それをノーチェの背中にこすりつけた。


「(すごい!)」


「……すごい?」


「(ソースが泡立った!)」


「……ソース……。これ、石けん」


「(えっ……石けん?)」


 金属製のボトルから出てくる液体洗剤。今まで目を瞑っていたために、キラがどんな石けんを使っていたのか知らなかったノーチェは、泡立つ液体洗剤を初めて見たのか、目をまん丸に見開いた。


 そんなノーチェの反応に、キラは何を考えたのか——、


シャカシャカ……!


——ものすごい勢いで泡立て始める。ノーチェの反応に気をよくしたらしい。


「!」キラキラ


「……はい、完成」ぶわっ


「(ふかふか)」もふ


 自分の身体を包み込む柔らかな石けんに、零れんばかりの笑みを浮かべるノーチェ。


 そんな彼女の事を、キラは優しく洗い上げて、石けんの泡を残らず洗い流して……。その後、彼女は、ノーチェに入浴を勧めた。


 対するノーチェは、浴槽の中になみなみに注がれた湯に入ることを最初は戸惑っていたようである。彼女の常識の中では、お湯とは身体を沈めるものではなく、布を浸してそれを使って身体を拭いたり、やっても頭からかぶる程度のものだったからだ。


 しかし、キラに促された手前、断ることも、後に引くこともできなかったらしく……。彼女は覚悟を決めて、湯の中に身体を沈めた。


 その結果、彼女は、とある表情を浮かべるのだが……。その表情については、"前例"と同じだったと書けば、伝わるだろうか。


ほのぼの風呂回、パート2なのじゃ。


……なお次回は、さつばつとしておる模様。

というか、閲覧注意なのじゃ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 182/182 ・ノーチェの細かい感情の動きが伝わってきました。すごい。 ・シャカシャカ [気になる点] ナンダッテー、閲覧注意ですと!? [一言] おはようございます。(健康的な早起…
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