2日目-02
一部、記述が抜けておったゆえ、追記したのじゃ。
追記した内容については、あとがきを参照くださいなのじゃ。
小枝が日本を出発したのは朝の7時。そして、前回の転移で、異世界と現代日本とは、およそ6時間の時差があるのである。
つまり——、
ブゥン……
「……あっ、真っ暗……」
——小枝がブレスベルゲンにやってくると、真夜中の1時。辺りはシーンと静まりかえっていた。
「(戻った方が良いでしょうか……?)」
暗闇の中、小枝は考える。夜中に町の中をうろついていたら、衛兵に怒られてしまうかもしれない。あるいは、うろつかず、町の中で座り込んで朝日を待っていたとしても、やはり衛兵に補導されることになるのではないか、と……。彼女は、自分の容姿が幼いことを自覚していた——いや、気にしていた——否、すごく気にしていたので、衛兵に子ども扱いされるかも知れないと心配していたようだ。
ちなみに、彼女が和装をしているのは、ひな人形のような姿をしていれば幼く見えるので、元々幼く見える容姿を誤魔化せるのではないか、と考えてのことだったりする。そのせいで、彼女は元の2倍以上(?)幼く見えるのだが……。そのことに小枝は気付いていなかったりする。
まぁ、それはさておき。小枝は悩んでいた。夜の町中で見るものなど何も無いに等しいのだから、この際、町の外に出ようかとか、と考えていたのだ。しかしそれも難しそうだった。なにしろ、外に出るためには門を通過しなければならないが、夜になれば町の門は閉ざされてしまうのである。
「(空を飛んで外壁の上から外に出る?……いえ、しばらくは大人しくするつもりですから、それは無しですね。戻ってきた時に、どこでどんな手続きが必要になるかも知れませんし、魔法があるのですからどんなセキュリティーが設置されているとも分かりませんし……)」
そして小枝は自身の中で結論を出した。
「(……仕方ありません。衛兵さんに見つからないよう、夜の町を探索してみましょう)」
そして小枝は歩き始める。
深夜とは言っても、町の中には、少なくない数の人の気配が漂っていた。その内、半分は、酔っ払い。ふらふらになりながら奇声を上げている者。建物の壁に向かって説教をしている者。道ばたに座り込んで酒の瓶を傾けている者などなど……。場所によっては、昼間よりも賑やかなのではないだろうか。
「(随分と酔っ払いの数が多いですね?)」
町の中の様子を見ながら、小枝はそんな感想を抱く。
ちなみに、酔っ払いの9割は冒険者たちである。冒険者たちと言えば、名実ともに荒くれ者たち。もちろん例外もいるが、一歩間違えれば"ごろつき"と表現しても過言ではない者たちで……。酒癖の悪い者が多いというのも、不自然なことではなかった。
「(ふーん。ここは繁華街なのですね?)」
深夜であるために、既に多くの店が閉じていたこともあって、小枝は、いま自分がどこにいるのか、遅れて気付いたようだ。
彼女がいたのは、酒場や料理屋などが建ち並ぶ繁華街。そこには石畳でできた5mほどの幅の道があって、その両側に店が立ち並んでいたようだ。
「(この町……もしかして、真っ直ぐな道は無いのでしょうか?)」
酔っぱらいたちを静かなステップで避けながら、小枝は道を進んでいく。彼女が見る限り、町の中に真っ直ぐな道は無く、至る所でくねくねと曲がっていたようだ。ただし、同じような大きさの家が一定のパターンで並んでいるところをみると、適当に町を作ったから道が蛇行してしまった、というわけではなく、区画を整理した上で敢えて曲がりくねった道を作っているようだ。おそらくは、外部からの侵入者の足止めを狙って、こういった複雑な作りの町にしているのだろう。
「(中世のヨーロッパでは、下水が発達していなかったために、家の窓から汚物を投げていたと聞きますが……この町ではそういった感じはありませんね。下水道が作られているのか、はたまた汚水を処理する何か……そう、魔法のようなものがあるのか……)」
小枝が辺りを見回してみると、石畳の道の所々にマンホールの蓋のようなものが見受けられた。おそらくはその下に、下水を処理するための何かが作られているのだろう。
小枝がそんなことを考えてながら歩いていると、辺りの景色が大分変わってくる。繁華街は繁華街でも、売っているものが食べ物ではなくなってきたのだ。
「(この辺は雑貨屋や服屋ばかりで……この町の商店街といった感じでしょうか?あ、武器屋もある……)」
町の正門を入り、反時計回りに外周路を回っていくと、全体の1/4が飲食店街。そして次の1/4が商店街だった。
「(太陽が昇れば、ここも賑やかになるのでしょうね……きっと)」
この町に来るまでの間に出会ったクレアたち曰く、この町は冒険者のためにあるような町なのだという。彼らにとって、武器や防具、あるいは薬などの消耗品は、冒険をするにあたって必要不可欠な物のはずなのだ。恐らくこの商店街も、時間帯によっては、冒険者たちでいっぱいに溢れるのだろう。
そこからさらに歩いて行くと、次の1/4が見えてくる。
「あっ……ここは……」
その様子を見た直後、小枝の移動速度が速まった。何やらピンク色の灯りが点っている店が多い、と言えば、どんな場所なのかは想像できるだろう。
そんな建物以外にも、奴隷商のような店もいくつかあったようである。外から見ただけでは中を伺うことはできなかったものの、店の名前に"スレーブ(Slave)"という文言が含まれていたので、おそらくは間違いないはずである。なお、あまりに自然に書かれていたためか、それが地球でも使われているアルファベットだったことに、小枝は気付いていなかったようだ。
そして最後の1/4。そこには、小枝が予想していた通りの建物が並んでいた。
「冒険者ギルド……」
そう、この町のギルド街である。組合ばかりが立ち並ぶエリアらしく、比較的大きな建物が並んでいた。とは言っても、町の景観を保護するためなのか、縦に大きくそびえ立っているわけではなく、長屋のように横へと向かって広がっていたようだ。
冒険者ギルド、商業者ギルド、錬金術ギルド、鍛冶組合などなど……。複数のギルドに所属する者がいるかどうかは定かでないが、短時間で回ることを考えるなら、非常に楽な配置になっていたようである。もしかすると、各ギルドのトップたちが、会合を手短に済ませるために、敢えてお互いのギルドを近づけて建物を作ったのかも知れない。
こうして小枝は町を一周したわけだが……。彼女の足は止まらなかった。次に行く先は、外周路を外れて町の中心部。この町の貴族たちが住んでいるだろうエリアである。
アルファベットでSlaveと書かれておる、という部分を追記したのじゃ。
ついつい忘れてしまったのじゃ。まぁ、小枝自身は未だ気付いておらぬようじゃがのー。




