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6日目-29

 周囲の者たちから白い目で見られつつ、男泣きを終えてから……。グラウベルは、領主を回収しに行こうとしていた小枝にとって、意外な(?)発言を口にする。


「……コエダちゃん。アル……いや、領主様を救出するのはまた今度でも良くなった」


「えっ……また今度でも良いって、ずいぶんと適当ですね?本当に良いのですか?」


「あぁ……色々と事情があるんだよ……色々と……」


 そう言って、アルティシア――もといキノシタに対し、視線を向けるグラウベル。その視線は「領主でなければ、何と名乗っているんだ?」と語っていたようだ。


 その意味を察したアルティシアは、何を思ったのか……。満面の笑みを浮かべながら、グラウベルに向かってこう言った。


「えっと……グラウベル様?今の私はキノシタと名乗っています。ですから、私の正体については()()()口外せず、平民として扱ってください」


「(やっぱり、コエダちゃんにも正体を話してないのか?)……本気ですか?」


「えぇ、本気です」


「アルティシア様……ではなくて、キノシタ様がそう仰るのなら……」


 どこか納得できない様子だったものの、自分を無理矢理に納得させるかのように頷くグラウベル。

 

 その直後、彼はハッとした表情を浮かべた。非常に大切な事を思い出したのだ。

 

「そういえばアルティシア様。お身体の具合は――」


「キノシタです」むっ


「……キノシタ様。お体の具合はよろしいのですか?」


 アルティシアは病弱だったはず。にもかかわらず、館から抜け出して外を歩いていても良いのか……。そう考えるグラウベルだったが、目の前にいたアルティシアは、以前見た時とは異なり、健康そうな顔色に見えていた。そのことが余計に、彼に疑問を抱かせる要因となっていたようである。


 対するアルティシアは、頬を膨らませつつ、グラウベルの質問に答えた。


「敬語が気に入らないですが……まぁ、私も同じですから良いとしましょう。実はですね……コエダ様に治してもらったのです!」


「マジか?!」ギュン


「……食事を作っただけですけれどね(今、音が聞こえたような……)」

「……私に接するときも、そんな態度で接してくれれば良いのに……」


「良かった……本当に良かった……」ぶわっ


 そして再び男泣きを始めるグラウベル。そんなリーダーの姿を眺めていた他の騎士たちは、事情が分からず困惑していたようだが……。ネガティブな出来事が起こったわけではないことを察して、皆、すぐに、安堵したような表情を見せていたようだ。


 その後、再びグラウベルが落ち着いた後。小枝たちはその場を後に――、


「それでは私たちはこれd――」


「ちょっと、コエダちゃん?私の自己紹介終わってないわよ?!」


「あぁ、そうでしたね。この人は私の友人で、まj」


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ?!魔女じゃなくて、薬屋のグレーテルですっ!」


――後にする前に、薬屋(仮)のグレーテルをグラウベルに紹介をしてから……。今度こそ、騎士団の詰め所を出ようとした。


 しかし、小枝たちは、その直前で、グラウベルに呼び止められてしまう。


「待ってくれ、コエダちゃん。これからどうするつもりだ?」


「これからですか?そうですね……。キノシタちゃんを誘拐したことで、私はお尋ね者になってしまいましたからね……」


「……町を出て行くのか?」


 グラウベルは最悪の展開を想像した。いま小枝が町から出て行けば、アルティシアという後ろ盾をなくした自分たちの命は保証されなくなるのである。その上、アルティシアの身のことを考えると、町から出て行くというのは良い選択とは言えず……。場合によっては、小枝たちと共に行動しなければならないのではないかと考えていたようである。


 しかし、彼の予想は、予想外の展開を見せることになる。それも、ある意味、最悪の想定を大きく超えた最悪(?)というかたちで……。


「いえ、せっかくお尋ね者になったのですから、もう少し好き放題、生活を満喫させてもらおうと思います」


 グラウベルには小枝のその言葉の意味が理解できなかった。指名手配犯になったので生活を満喫する、という言葉からして意味不明だったのだが、好き放題やるという言葉の意味が何よりも分からなかったのだ。……すでに好き放題やっているのではないのか……。グラウベルだけでなく、他の騎士たち、それにグレーテルも同じことを考えていたようである。


 そんな中で事情を理解していたのは、姉のキラだけだったと言えるだろう。なにしろ、彼女は小枝と同じガーディアン。その上、小枝の姉なので、小枝が何をしようとしているのかは手に取るように分かっていたのだ。ただ、彼女の場合は、価値観の物差しが小枝と近かったためか——、


「…………」


――大した反応は見せていなかったようだ。普段通り、といった様子である。


 そんな者たちに囲まれながら、小枝は再び口を開く。彼女の視線は、キラキラと目を輝かせるアルティシアへと向けられていたようだ。


「具体的にはですね……キノシタちゃんが住めるように、今のお家を改造しようと思います」


「「「……は?」」」


 その瞬間、場の空気が固まってしまう。それも仕方の無いことだと言えるだろう。何しろ、そこにいた9割9分の者たちは、小枝が現代世界の超兵器であるガーディアンであることを知らないので、彼女が家を建てられるとは思っていなかったからだ。


 ……尤も、家を建てられることだけを知っていたとしても、家を建てた後に見せるだろう反応は変わらないはずだが。


この物語のテーマソングが定まったのじゃ。

まぁ、敢えて言わぬがの?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 144/144 ・感情の動きがすごい。自分はまだ上手い事書けないですから。 [気になる点] テーマソング……歌の知識(+その他)がショボイですからまるで想像できないですね。 [一言] 家…
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