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2.9-37 国37

 少し時間は遡る。


「あは……私、終☆わ☆っ☆た☆」


 ハイリゲナート王国の王城()()には、某人物の手によって、瓦礫の山が形成されていた訳だが、その瓦礫の中に一人の女性が生き埋めになっていた。より具体的には、頑丈な金庫があって、その中に女性が入っていたのだ。


 彼女の名前はヴァレンティーナ。つい先日も、某人物の手で居城(?)を失ったばかりの諜報機関長——もとい、ハイリゲナート王国の第一王女である。魔族の襲撃をいち早く察した彼女は、王城関係者たちに警報を発した後、何を思ったのか城から脱出せず、大型金庫の中に隠れたのである。


 ちなみにこの金庫、ただの金庫ではない。襲撃や事件が起こったときに、緊急的に隠れるための個人用シェルターである。ヴァレンティーナが王都の鍛冶屋にわざわざ特注したものだ。引き籠もり気質の彼女らしい一品である。


 本来であれば、味方の助けが来るまでの短い間だけ利用するはずのシェルターだ。ところがこの時、彼女が隠れていたシェルターには、とある重大なトラブルが発生していたのである。


「ふ、ふふっ……扉が……開かない……」


 彼女の言葉通り、シェルターに隠れたは良いが、扉が開かなくなっていたのである。それもそのはず。彼女は今、シェルターごと瓦礫の中に埋まっているのだ。扉が動かなくて当然である。


「ふひっ……もう、ダメみたい……」


 極限の状態だったためか、元々こうなのかは不明だが、ブツブツつぶやきながら暗い笑みを浮かべつつ半べそをかくヴァレンティーナ。そんな彼女は、誰の目から見ても、紛うことなき喪女である。国民たちが今の彼女を見れば、1000人中995人くらいは幻滅することだろう。


 水と食料は1週間分ほど。極限まで切り詰めれば、2週間といったところだろうか。しかし、食料があったとしても、救援が来る可能性はほぼゼロ。絶望がヴァレンティーナの心に暗い影を落とす。


「政略結婚の見合いに失敗して……ふふっ……部下たちも失って……ひ、ひひひっ……お父様ともお母様とも、弟妹たちともうまくいかなくて……ふ、ふひっ……踏んだり蹴ったりの人生だったわ…………ふふふふふ……」


 薄暗いシェルターの中で膝を抱えて小さくなるヴァレンティーナに希望と言えるものはない。彼女の魔法を使えば、遠隔地にいる諜報機関員たちと通信できるが、シェルターの壁が邪魔をして魔法を通さなかったのである。もし、外から魔力を探知されれば、ヴァレンティーナがシェルターの中に隠れている事がバレるので、シェルターを注文する際に、彼女は魔力を通さない材料を選んで発注したのだ。おそらく、世界一高い棺桶だろう。


 死因はきっと飢餓か脱水症状だろう……。その時は苦しいのだろうか……。死んだ先に何が待っているのだろうか……。死ぬ前に何か処分しておかなければならないものは無かっただろうか……。ヴァレンティーナの頭の中で、ネガティブな思考ばかりが、グルグルとループする。


「……そうだわ。ネガティブな考えばかりをしてちゃダメって、カトレアたちも言ってたわ。ポジティブに考えなくちゃ……うん。とりあえず、寝よ」


 彼女の場合、"救いようがない"という言葉は、複数の意味を持っているのかもしれない。


 結果、ヴァレンティーナは、シェルターの中にあったベッドにダイブして、夢の世界へと旅立とうとする。しかし、その直前。


「あぁ、このような場所に、生き埋めの方がいらしたのですね」


 ヴァレンティーナしかいないはずのシェルターの中に、もう一人分の声が生じた。


 うつらうつらと意識を手放しそうになっていたヴァレンティーナは、その声が聞こえた瞬間、意識を一気に覚醒させた。しかし、ベッドからは飛び起きない。掛け布団を頭から被った状態で、布団の隙間から顔だけを出して周囲を見渡す。


 そして彼女は、背の低い黒髪の少女を見つける事になる。


「だ、誰……?」


「私の名前は木下小枝。小枝と呼んで下さい。人を捜しに伺いました」


「ふ、ふひっ?!コ、コエダ様?!も、もしかして、ブレスベルゲンのコエダ様ですか?!」


「えぇ、そうです。もしかして、貴女が、ヴァレンティーナさんですか?」


「ヴァレンティーナ!そう、私はヴァレンティーナですわ!ふひっ……よ、よかった……助かりました……」


 ヴァレンティーナは胸をなで下ろした。これで助かると思ったのだ。


 だが、どうやら話はそう簡単ではないらしい。


「確か、貴女は、私の大切な友人に失礼を働いたのでしたね?」


「ひっ?!し、失礼なんて——」


「フューリオンさんとの商談に、暗殺者紛いの方を送り込んで、商談を台無しにしたとか……」


「っ!」


 ヴァレンティーナの顔からみるみるうちに血の気が引いていく。先日、アルティシアを、離宮へと強引に案内しようとしたことが、小枝にバレていたのだ。


 この時点で、ヴァレンティーナには、小枝のことが救世主には見えていなかったようである。では、何に見えていたのか。ヴァレンティーナの口からその言葉が出てくることは無いが、彼女の引き攣った表情と、カチカチと鳴る歯が、暗に語っていると言えるのかも知れない。


所々、読みにくい箇所があって申し訳ないのじゃ。

眠いせいかのう……。元々かのう……。

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