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6日目-15

 そして次に小枝たちがやってきたのは、冒険者ギルド。経路的には、下水処理施設がある北門から反時計回りに町を回って……。つまり、奴隷商やピンク色のカーテンが付けられた建物がある4丁目を経由して、1丁目へと戻ってきたのだ。


 小枝としては、治安の悪そうな4丁目を通るというのは気が進まなかったようである。しかし、今の時間帯は未だ朝。客たちがいるわけでも、治安が悪いわけでもない、と判断した小枝は、町を遠回りに、3丁目(商店街)、2丁目(飲食街)と経由せず、経路的に近い4丁目(繁華街?)を通ってギルド街のある1丁目へと移動することにしたようだ。


 ただしその目的は、近道をしたかったからというわけではなく、4丁目がどんな場所なのかを、キラやグレーテルに説明するためで……。早い内に、2人に対し、町の中の区分けについて教えたほうが良いと考えた結果だったようだ。


 そして、特に何事も無く、4丁目を通過した彼女たちの姿は件の冒険者ギルドの中にあった、というわけなのだが……。そこでは小枝が予想だにしなかった事態が彼女たちのことを待ち受けていたようだ。


「「「い、いらっしゃいませ!小枝様とそのお姉様!」」」


「……は?」


 小枝たちがギルドに入るや否や、ギルド職員たちが総出で、彼女たちの事を出迎えたのだ。その普段とは異なる行動に、小枝は思わず首を傾げてしまう。


 一方、出迎えた側の職員側としては、無意味に接客態度を改めたというわけではなかった。彼らが小枝に対する接客態度を改めたのは、このギルドに初めて小枝が来た時のことを思い出したからである。その際、何があったのか……。そして小枝の後ろに立つ2人の者たちが何者で、ギルドに何をしにやってきたのかを知っていたとなれば、当然の反応だと言えるだろう。


 そんな職員たちの代表をして小枝たちに話しかけてきたのは、カウンターで頭を下げていたカトリーヌだった。


「ぼ、冒険者として登録されると聞き及んでおります!こ、こちらの書類の必要項目に記入をお願いいts……はうっ!」


「……あの、カトリーヌさん?それに皆さん?普段通りの対応で構いませんよ?姉様には事細かにこの町で何があったのかを説明してありますから」


 小枝がそう口にした瞬間だった。ギルドの中がピシリッと音がするかのごとく固まったかと思うと、目で見て分かるほどに、どんよりとした青黒い空気が立ち込め始めたのだ。


「あぁ……もうダメかも知れないわ……」


「何がダメだというのですか?」


「こういう場面って、第一印象が大切だと思うんだけど、それが始まる前から最悪の状態だったなんて知らなかったのよ……」


「それ、4日前のご自身に言ってください」


 と、4日前にギルドで子供扱いをされて追い返されたことを思い出しながら、肩を落とす小枝。その間、静まりかえったギルドの中を、カツカツという音を立てながら、キラが小枝の隣までやって来る。


 すると、再びギルドの中の空気が変わった。キラの姿を見て、冒険者たちが息を吞んだのだ。出るべきところが一部出ていないという但し書きは付くが、黒く長い髪に肌白で、そして長身でスレンダーなキラの姿は、現代世界においても異世界においても美女と言える部類に入っていたのだ。彼女がひとたび歩けば、ふわりと黒いスカートが揺れ……。まるで芸術品の人形が歩いているかのような印象を皆に与えていた。……まぁ、実際、人形(ひとがた)ではあるのだが。


 息を吞んでいたのは、男性だけではない。カウンターにいたカトリーヌも、自身よりも長身なキラを前にして——、


「…………」ごくり


——思わず緊張して、身体を強張らせていたようだ。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………」


「いやいや、そこ、黙って見つめ合っていないで、どちらかで良いので喋りましょう?話が先に進みませんから」


 と、普段から無口な姉と、緊張して喋れなくなっていたカトリーヌに対し、苦言を呈する小枝。その結果、ようやくフリーズ状態から戻りつつあったカトリーヌのところへと、今度はグレーテルがやって来る。


 彼女もまた、美しい部類に入る女性だった。キラとは違い、出るところは出ていて、凹むところは凹んでいて……。素材自体は申し分ない女性だった。……そう素材自体は。


 今までずっと一人暮らしを続けてきた上、興味が魔物や植物の研究にしか向けられていなかったせいか、一挙手一投足の振る舞いが洗練されていない上、服装の着こなしも適当。グレーテルが歩いても、女性がただ歩いているだけ、といった雰囲気だった。むしろ彼女の場合は、MOJO(喪女)の部類に入ると言っても良いかも知れない。


 それゆえか、グレーテルが移動しても、誰も特にこれといったような反応は見せていなかった。カウンターの向こう側にいたカトリーヌも、キラが近付いてきた時とは反応がまるで違っていて——、


「あ、すみません。後ろに並んでもらえますか?」


——などと口する始末である。


「……なるほどね。コエダちゃんの言ってたとおり、確かに失礼なギルドかも知れないわ……」


「えっ?」


「あれ?言っていませんでしたっけ?グレーテルさんは私の友人で、森で魔j——」


「あああああーっ!魔女なんてしてないわよ!私はコエダちゃんの友人ってだけ。そう、それだけよ?!」


「…………」


「「…………?」」


「……終わったわ」ばたっ


 そして昏倒するカトリーヌ。どうやら彼女は人生という歴史の中に、また新たな黒い1ページを刻んだことに気付いてしまったようである。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 130/130 ・カトリーヌさんの胃GAAAAAA!! ・『MOJO』って表記初めて見ました。 [気になる点] 除法 無限基数 κ と基数 λ > 0 にたいし、κ > λ のとき …
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