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2.8-16 科学?14

 その頃。


「……お役所仕事って、良くないわよね」


「は?急に何言い出すんだ、カトリーヌ」


 昼食後の閑散とした冒険者事務局で、受付嬢のカトリーヌと事務局長のダニエルが、雑談をしていた。


「だって、私たちって、冒険者ギルドじゃないでしょ?前みたいに非営利団体ってわけでもないし、働いたら働いただけ給料が貰えるわけよね?」


「何が言いたいのかは分からないが……確かに、ウチの冒険者事務局は、非営利団体ではないわな」


「しかもここはブレスベルゲン。一方的に魔物から蹂躙されるだけの町じゃないんだから、私たちが頑張れば、その分、冒険者の作業効率もアップするでしょ?で、冒険者の作業効率が上がれば、私たちの給料もアップする、と」


「まぁ、間違ってはいないわな」


「そして、昨日、お高いソファーを買っちゃったでしょ?」


「いや、知らんがな。っていうか、それ、冒険者と何も関係無いよn——」


「ようするに、私たちは、より多くの給料をもらうために、努力すべきだと思うの」


「…………」


「ダニエルだって、もっと多く給料をもらいたいと思わない?冒険者ギルドだったころは、職種ごとに定額の給金が支払われていたけど、今はその縛りも無くなって、出来高払いになったんだからさ?」


「……まぁ、言ってることは分からんでもない」


 ダニエルは呆れ気味な様子で、カトリーヌの説明に相づちを打った。平時における冒険者ギルドの職員給与は、薄給なのである。冒険者事務局になって、資金の出所が変わり、多少給与が上がったとは言え、未だ薄給なのは変わりないのだ。


 もっと贅沢な暮らしをするためには、業務の内容を見直す必要がある……。ダニエルは、カトリーヌの言い分を、すぐに理解した。富が集まりつつあるブレスベルゲンにおいては、"贅沢"が庶民の手の届くところに見えつつあるのだから。


 ただ、話はそう簡単ではない。


「具体的に、どんな努力をするつもりだ?」


 何をすれば業務の効率化、あるいは収益強化に繋がるのか……。その内容は自ら考えなければならなかった。これまでの冒険者ギルドのように、本部から指示が降ってくるのを待っているだけでは、何も変わらないのである。一般的な商店などと同様に、活動内容まで考える必要があった。


「どんなって……それが分からないから、こうして相談しているんじゃない」


「……いや、相談されていることをいま初めて知ったんだが?」


「じゃぁ、儲かる方法を一緒に考えて」


「なんだか、最近のカトリーヌって横暴だよな……。誰かに似てきた、っていうか……」


「……あとで、コエダ様に相談しようかしら?ダニエルがコエダ様のことを横暴だ、って言ってたって」


「ちょっ?!だ、だれもコエダ様に似てきたとか言っていないだろ?!」


「ふーん。そういうことにしておくわ」


 などとやり取りをするが、このとき初めて収益強化の方法を考え始めたこともあってか、良いアイディアは浮かんでこない。


「魔物肉の売買は、ウチの事務局だけで成立するものじゃないから、すぐには業務の効率化は望めないし、業務の無駄を無くすのも自分の首を絞めることになるからあまりやりたくないし……」


「……なぁ、カトリーヌ。本当に稼ぐ気はあるのか?」


「ともかく、何かウチの事務局だけで完結するような、新しい事業を始める必要があると思うのよ。他の事務局と協力するっていうのは正直面倒だしね」


「お前……やっぱり、稼ぐ気ないだろ……」


 真面目に考える気はあるのだろうか……。やるせない気持ちに苛まれたダニエルが、深く溜息を吐いた——そんな時。


   バタンッ!!


「たのもう!」

「お邪魔します……」


 冒険者事務局の扉を乱暴に開けて、2人の少女たちが入ってきた。ノーチェとシェリーである。


 彼女たちは、カトリーヌの姿を見つけて、言った。


「カトリーヌ!(きん)を集める!」

「えっと、ようするに、一緒にお金儲けをしませんか、という話をしにきました!」


 そんな2人のことを、カトリーヌが無碍に扱わなかったのは、本気で金儲けをかんがえていたからか、それともかつて痛い目にあった記憶を思い出したためか。

どうでも良いことなのじゃが、魚介類が食べたい季節なのじゃ。

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