2.8-03 科学?3
「シェリー、光魔法が使えた?」
「ちょっとものすごく気合いを入れたら出るよ?」
シェリーの光魔法は、昼間の明るさの中でも明らかに分かるほど、眩く光っていた。ただし、破壊的な力を持っているわけではないらしい。
「……もしかして、ただ眩しいだけ?」
「もう、ノーチェちゃんたら。6歳の私がそんな強力な魔法を使えるわけないじゃん。ノーチェちゃんがすごいだけだよ」
「…………?」
シェリーから説明を受けるノーチェだったが、どの辺がどうすごいのかは分かっていない様子だ。世の中の6歳児たちは、致死性の魔法を使って、友人たちと遊んでいる……。彼女はそんな認識を持っているらしい。
もちろん、そんな恐ろしいことはありえず、6歳児程度では、才能ある者も、殆ど魔法が使えないことが普通である。そんな尺度からはみ出ているノーチェは、確かに"すごい"と表現出来るのかも知れない。むしろ、"異常"と言うべきか。
しかし、ノーチェにとっては興味のないことだったので、彼女はシェリーの発言をスルーする。
「その光魔法をどうする?」
「えっと、戦争とかでは、魔法使いの人たちが、光魔法を剣みたいにして使ってる、って話だから、私も魔法で剣を作って宝石を切れるかな、って思ったの」
「ん。じゃぁ、やってみる」
「うん。でも私、光魔法で剣を作ったことないから、上手く出来ないかも知れないよ?」
「その時はその時。ノーチェの魔法では、まったく歯が立たなかった」
「わかった。じゃぁ、試してみるね」
シェリーはそう言って、光魔法を細くしていく。
彼女の魔法は、まるで太陽光を虫眼鏡で集めるかのようだった。魔法を調整することで、放出する光の太さや出力を変えることが出来たのだ。
ゆえに彼女は、できるだけ細く強い光を想像しながら、光魔法を集束させていった。そしてその光をルビーに翳す。
「むぅ……」
「…………」
「むむむむむっ!」
「…………」
「……何も起きないね」
「…………」
「……ダメっぽい」
シェリーが諦めかけたその時。黙っていたノーチェが口を開く。
「もっと強くする」
「もっと?えっと……これが限界なんだけど……」
「それでも強くする!気合い」
「き、気合いでどうにかなるものじゃないよー」
「例えば、一瞬だけ魔法を使ってみる、とか」
「一瞬?」
「一瞬だけ気合いを入れて、一瞬だけ光魔法を強くする」
「なるほど!」
連続的に光魔法を使い続けていたのでは、すぐに限界がくるが、一瞬だけ強力な魔法を使うのであればどうにかなりそう……。シェリーはそう判断したらしい。
一方、ノーチェの方も、何か作戦を考えていたようである。
「ちょっと待つ」
ノーチェはそう言うと、木下家の中へと消えていった。何か道具を取りに行ったらしい。
そして30秒後。彼女の手にあったものは、銀色のシートのような物だ。キッチンにあったアルミホイルである。当然、異世界で売っているわけではない。小枝が作ったものだ。
「何それ?」
「薄い鏡のようなもの。これを宝石に巻き付ければ、光魔法を逃がさない」
「なるほど!でも、切れるのかな?宝石の中から光が漏れないようにしても、切れるようになるとは思えないんだけど……」
「何事も試してみなきゃ分からない」
「そうかなぁ……」
シェリーとしては納得がいかないものの、ノーチェは前向きな様子だったので、とりあえず宝石をアルミホイルで包んでみることにしたようだ。
「じゃぁ、やるね?」
「…………」こくり
シェリーは、アルミホイルの隙間目掛けて、光魔法を放った。カメラのフラッシュのように短く強烈な光が、宝石の中で何度も反射する。
その直後の事だ。
パンッ!
アルミホイルが音を上げて爆ぜた。より具体的には、ルビーを包み込んでいたアルミホイルの一部に穴が開いたのだ。
「んん?何?今の」
「シェリーの光魔法?」
「私の魔法で鏡が爆発した?鏡って、普通、光魔法を反射するんじゃなかったっけ?」
「……反射しきれなかったのかもしれない。それか、鏡が薄すぎた?」
「……もう一回やってみる?」
「やってみる!」
ノーチェとシェリーは、光魔法を使ってルビーを切断する、という目的をすっかり忘れて、実験を繰り返した。そのたびに、アルミホイルには穴が開いて、2人の興味を惹きつけたようである。
そんな彼女たちは気付いていなかったようだ。穴が開いていたのはアルミホイルだけでなく、隣家——もとい木下家の壁にも開いていたことに……。
今日は疲れきったゆえ、投稿をお休みしようと思ったのじゃが、なぜか書けてしまったのじゃ。
活動報告に休む旨を書いたのじゃがのう……zzz。




