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2.7-03 蛇足3

「先ほどのカトリーヌ様ぁ〜、怖かったですねぇ〜。まるで宰相閣下に怒られているみたいでしたぁ〜」


「ストレスが溜まっているのでしょう。言うことを聞かない冒険者が多いのかも知れません」


「言うことを聞かない冒険者が多いと怖くなる〜?もしかして、宰相閣下も同じなのでしょうかぁ〜?」


「えぇ。冒険者ではありませんが、もしかすると、言うことを聞かない知人が多いのかも知れません」


「誰なのでしょうねぇ〜?」


「さぁ?見当も付きません」


「大変ですねぇ〜。可愛そうに〜」


 ハイリゲナート王国の王宮には"鬼"が住んでいる。もちろん、本物の鬼ではない。普段から怒っているように見えるので、知人から"鬼"と呼ばれているのだ。


 彼の名前は、アルマ=エルファレス。何かと外出が多い王族に変わってハイリゲナート王国を治める実質的な最高権力者だ。


 ただし、彼は、その権力を、民に対して振りかざすようなことはしない。むしろ、彼の力の矛先は、目上の存在であるはずの王族たちに向けられることが多かった。カトリーヌと同じように、何かストレスが溜まっていたのかも知れない。なお、具体的なストレス源については、本人以外に誰も知らなかった——いや、認知されていなかったりする。


 まぁ、それはさておき。


 放蕩娘(おうじょ)たち2人組は、取り留めの無い会話を交わしながら、ブレスベルゲンの郊外へとやってきていた。より具体的には、町を囲む壁よりも外側。1ヶ月ほど前から急速に建築されていた真新しい住居群よりも更に外側である。


 ちなみに、町の壁の外側にある新しい住居とはいえ、治安の悪いスラムではない。アルティシアたちの都市計画に基づいて作られた新たな居住エリアだ。住んでいる者たちは、人間族や獣人たちだけでなく、人化したドラゴンなども住んでいるので、魔物に襲われる心配は無く、治安もすこぶる良かったりする。


 そんなエリアを越えると、畑()()()ものが見えてくる。樹海、密林、木の塊などなど……。表現する言葉は色々とあるが、いずれにしても、人が好んで入りたくなるような場所ではない。狼娘のブラウですら侵入を諦めるほどの密度の森だ。


 しかし、カトレアとヘレンの行き先は、まさにその畑(?)の中だった。顔見知りのドラゴンたちに聞けば、テンソルはサヨと共に畑仕事の真っ最中。畑を突っ切らなければ、テンソルに会うことが出来ないというのである。


「なんだかぁ〜、先ほど見たときよりもぉ〜、さらに木の密度が上がっていませんかぁ〜?どこからともかくぅ〜、ミシミシ、バリバリ、という音が聞こえてきているような気がするのですがぁ〜」


「お姉様。気のせいです。世の中には、"気のせい"で片付けた方がいい事柄もあるのです」


「そうですかぁ〜。気のせいですかぁ〜……。えぇ〜、気のせいですねぇ〜」


 カトレアは深く考えるのをやめた。考えたところで事態は進展しないからだ。またの名を、現実逃避とも言う。


「では、行きますかぁ〜」


「しかし、どうやって?このまま突っ切るのは難しいと思われますが……」


「そこは魔法ですよぉ〜?」


「魔法?まさか、燃やすのですか?延焼が気になります」


「違いますぅ〜。そのような雑な方法は採りません。もっと的確な魔法があるんですぅ〜」


 カトレアは、壁のような植物の前に立つと、手を前に上げて唱えた。


「【分解《デコンポジション》】」


 直後、煙や蒸気、そしてジュゥという音を上げて、植物の壁の一部が消える。まるで、腐敗の過程を高速化するかのようだ。


 その異様な光景を前に、ヘレンは思わず問いかけた。


「お姉様……いえ、師匠。今の魔法は何ですか?」


「見ての通りぃ〜、分解魔法ですよぉ〜?植物にしてもぉ〜、動物にしてもぉ〜、身体を構成しているのは多量の水分と有機物ですぅ〜。もっと細かく言えばぁ〜、水素と酸素と炭素ですぅ〜。物質についてはぁ〜、コエダ様に習いましたよねぇ〜?生物を構成する物質を分解するようにイメージしながらぁ〜、魔法を使ったのですよぉ〜。回復魔法の応用ですね〜」


「……ということは、植物だけでなく、動物も分解できる、と?」


「えぇ〜、当然ですぅ〜。硬さもぉ〜、耐魔法強度もぉ〜、関係ありません。対象が生きていてぇ〜、物質として存在する限りぃ〜、例外なく分解しますよぉ〜?」


「えげつない魔法ですね……」


「さて〜、どうでしょうかねぇ〜?実戦で使ったことはありませんからぁ〜、意外と使い勝手は悪いかも知れませんよぉ〜?」


 と、口にするカトレアだったが、ヘレンは逆のことを考えていたようだ。


「(もしかして、お姉様は、最強なのでは……)」


 はたして本当に最強なのかは不明だが、少なくとも、この時のヘレンは、姉の強さを疑わなかったようである。


魔王?「筋力と魔法が最強です」

堕聖女「筋力と反応速度が最強です」


王女2「か、回復魔法がぁ〜……」

王女3「最☆強です」


夜狐「でも、お姉ちゃんには効かない」

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― 新着の感想 ―
分解すればいいというサイエンス。 じゃあ筋肉の概念を超越した筋肉なら最強という筋肉
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