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2.6-27 聖都への帰還15

 そしてブレスベルゲンに戻ってきた小枝たちは、そのまま木下家へと直行する。皆、夕食を食べていなかったので、木下家で食事を摂ろうとしていたのだ。


 時刻は20時頃。定刻通りに夕食を食べていた者たちは、ちょうど食事が終わるタイミングだ。本日の料理長はノーチェ。彼女が作った食事に、皆がご満悦といった様子だ。


 小枝たちが食卓に着くと、ノーチェやサヨ、アルティシアなどが配膳を始めた。領主が獣人と一緒に配膳するというのは、世間一般的に見れば異常な光景だが、木下家では普通のことだ。もはや、誰も気にしない。


「ええと……いらっしゃいませ?」


 温めた料理を配膳していたアルティシアは、疑問に思う。小枝やユーリカたちは、顔見知りなので、当然疑問には思わない。彼女たち以外——具体的には、3人ほど、知らない人物たちがいたのである。


『あら、可愛らしい方』

『お手数をお掛けしますが、よろしくお願いします』

『なんだか、色々な方々がいらっしゃる不思議な場所ですね?』


「え、えぇ……国中から様々な身分の方々が集まってきておりますので……」


 アルティシアから見た3人の印象は、一言で言えば白。もう少し説明を加えるなら、背が高く美しい、まるで絶世の美女を絵に描いたような女性たち、という認識だった。普通に会話をしただけでも、何か他者を圧倒するようなオーラのようなものを感じる……。そんな異様な感覚に、アルティシアは内心で首を傾げた。


 他の者たちも似たようなものだ。小枝はいったいどこからこのような美女たちを連れてきたのか……。そもそも何者なのか……

皆が共通した疑問を抱く。


 3人組に向けられる視線に気付いたのか、それともタイミングを見計らっていたのか……。食事が出揃ったところで、小枝が説明を始めた。


「皆さん、気になっているようなので説明しますね。彼女たちは女神です。しばらく滞在しますので、仲良くしてあげてください」


 その瞬間、木下家の空気が固まった。


 固まった原因はいくつかある。頭が小枝の説明を受け入れなかったこと。受け入れたとしても、聞き間違えではないかと、自身の認識を疑ったこと。やっぱり聞き間違えかも知れないので、改めて小枝の説明を思い出そうとしたこと。以下、無限ループ。


 しかしそれでも、完全に空気が固まりきらないのは、非常識と混沌に溢れる木下家だからか。


「ノーチェ、ノーチェ。"めがみさま"って、何な(にゃんにゃ)のにゃ?」


「多分、食べられないもの」


「そうにゃのかぁ……(いや、流石にそれはサヨでも分かるにゃ!)」


 獣人、もとい獣である2人には、食べられるか、そうでないかが重要であり、"女神"がどういうものかという話は、さして重要ではないらしい。


「のう、グレーテルよ。女神って、もしや、あの"女神"か?」


「コエダちゃんが連れてくるんだから、多分、あの"女神"でしょ」


「ふむ……さすがはコエダ様なのだ」


「…………」


 グレーテルとテンソル、それにセラスにとっても、ふーん、程度の事だった。魔女と古龍組にとっては、人の女神が現れた程度、驚くほどの事ではないらしい。


 そして、アルティシアは。


「(なんだか、ユーリカ様とコエダ様の位置が近い気がするのですが気のせいでしょうか?いえ、近いですよね?近い)」じとぉ


 そもそも、女神たちに興味が無かったようである。そんなことよりも、小枝の隣に座っていたユーリカが、わざわざ椅子を移動させて、小枝の隣に接近していたことの方が気になっていたようだ。


 その他の常識ある者たちは、ぽかーん、と口を開けて、10秒ほど固まっていたようである。その後で我に返った彼らは、慌てて平伏(ひれふ)したり、後ずさったり……。一部には、驚きのあまり、気絶する者までいたようである。


「   」ちーん

「カトリーヌさん!気を確かに!」

「め、女神様におかれましては、ご、ご機嫌麗しゅう——」

「も、もう、何があっても驚きませんわよよよ?!」

「あぁ……神よ……」

「…………?」


 こうして今日も木下家の晩餐会は、カオスが渦巻く修羅場と化すのであった。

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― 新着の感想 ―
ああ、カオス。そんなことより百合嫉妬ジェラート
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