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2.6-23 聖都への帰還11

 吹き飛ばされたリュウには、何が起こったのか分からなかった。剣を突き出し、ユーリカの首まであと少し、というところまでは記憶が残っていたのだが、そこから先の記憶がすっぽりと抜け落ちていたのである。気付くと壁にぶつかり、瓦礫に(まみ)れている状態。白昼夢を見たか、はたまた気絶していたかを疑うほどだった。


「いったい何が……」


 常人なら大怪我を負っていてもおかしくない状況だった。しかし、そこは"勇者"の称号を持つ者。壁にぶつかった程度では、ビクともしないらしい。


 状況を飲み込めないリュウは、周囲を見渡した。ユーリカがいるだろう方向は、なぜか土煙が上がっており、見通すことはできない。一方で、教皇たちの姿は見ることができた。


 彼らが浮かべていた表情は驚愕。目の前の光景が信じられないと言わんばかりに、目を丸くしていた。


 そこから導き出された結論は、ユーリカが何かしらの力を使って、自分のことを攻撃し、そして吹き飛ばしたのだということ。彼女は、一見すると、ボンヤリと立っているようにしか見えなかったが、自分の知らない攻撃を繰り出したのだろう——とリュウは考えた。


 結果、彼は、慌てて立ち上がる。未だ小枝は勝敗を判断していないのだ。つまり、決闘は継続しているということなのだから。


「(ユーリカのやつ、何をした?!)」


 状況を判断すべく、リュウは周囲に気を張り巡らせる。次の瞬間に何が起こるのか分からないからだ。全身全霊をもって警戒するのは当然の事だろう。


 そして、ユーリカが立っていた位置から土煙が晴れる。彼女の姿が辛うじて見えたような気がした——その直後の事だ。


「どこを見ているのですか?」


 リュウの後ろから声が聞こえる。後ろには壁しかないというのに、だ。


 結果、リュウは、慌ててその場から立ち去ろうとするが——、


   ドゴォォォォ!!


「がはっ?!」


——と、再び吹き飛ばされてしまう。


 今度は重傷だ。彼が受けた攻撃は、脇腹への攻撃。肋骨辺りに異様な痛みを感じるほか、右腕も使えない状態に陥ってしまう。例えるなら、身体の右から車に突っ込まれたような状況と言えるかも知れない。


 しかし、攻撃はそれで終わらない。


    ドゴォォォォ!!


「ぶふっ?!」


 吹き飛んで地面にぶつかるよりも先に、再び強烈な衝撃が彼を襲ったのだ。今度は左だ。まるで、複数人から暴行を受けているように、間髪入れず、リュウの身体を衝撃が襲う。


 その後も似たようなものだ。左の次は前。前の次は後ろといったように、まったく異なる方向から攻撃を受け続ける。


 しかしそれでも、攻撃を受けていたリュウには、何を使われて、どのように攻撃を受けているのか、まったく理解も認識もできなかった。真っ正面から衝撃を受けても、そこにはユーリカの姿も、武器の姿も無いのだ。まるで透明な魔法で攻撃されているかのよう。当然、ただひたすら杖で殴られているだけなどとは夢にも思っていなかった。


 そして、ユーリカが、5発目の攻撃を行おうとしたところで——、


「はい、やめてください。それ以上は、リュウさんが死んでしまいます」


——ようやく小枝(レフリー)によるストップが掛かった。


  ◇


「…………」


 決闘の後、ユーリカは放心していた。とはいえ、思考が高速化しているために、言葉が話せなかったわけではない。彼女が望んだときに思考が高速化し、また望んだタイミングで通常状態に戻るからだ。


 リュウを殴打した事でぐにゃぐにゃに折れ曲がった魔法杖を手にしたまま、ユーリカはボーッと月を見上げる。彼女自身にも、自分の身に起こった出来事をすぐには理解出来ず、整理するのに時間が掛かっていたのだ。


 そんな彼女のことを心配して、仲間のプリシラとフェルディナントが声を掛けようとした、そんな時だ。


「あは」


 ユーリカの口から声が零れる。


「あははは」


 乾いた笑みだ。しかし、その笑い声は次第に大きくなっていき——、


「あはははははっ!」


——最終的には、大声の笑い声になった。そう、普通ならあり得ない、大声での笑い声だ。大声を意識して出さない限り、生じないはずの笑い声である。


「あは」


 最後に小さく声が零れたところで、ユーリカは教皇たちの方を振り向いた。


 そんな彼女の顔は、決闘前と酷く変わっていた。決闘前は、まだ聖女と呼べるような柔らかさが残っていたのだが、今の彼女は目が鋭く、まるで刃物のよう。まったくの別人と言えるほどに変わっていた。


 教皇たちも、ユーリカの変わり様や、彼女の強さを前にして、言葉を失っているようだった。そんな彼らの頭の中に渦巻いていたのは、まったく同じ考え。……トンデモない相手を敵に回してしまったのではないか、という恐怖だ。


 そんな彼らの恐怖が見えているのか、ユーリカは口が裂けんばかりにニヤリと口角を吊り上げる。


「さぁ、教皇様方。私が勝ったのですから、私の主張を受け入れて下さいますよね?それとも、まだ受け入れられないというのでしたら、引き続き、あなた方とも決闘いたしますよ?」


 今の彼女の容姿は、聖女の服を着た魔女。そのあまりに業の深そうな見た目に、プリシラとフェルディナントの2人は、現実逃避でもするかのように、遠い夜空に目を向けるのであった。


女神1「空気です」

女神2「気体です」

女神3「流体です」

魔神?「ホログラムです」

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― 新着の感想 ―
あー、クレイジーな顔ですね。 私も空気です。百合を見守る空気
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