表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1117/1392

2.3-20 ブレスベルゲンの探検17

 数分後。サヨは白目を剥いていた。なぜか。アルティシアがサヨに対し、書類整理の手伝いをさせていたからだ。


 とはいえ、ただの書類整理で、サヨが白目を剥くというのは、ありえない事。問題はその中身だった。


(にゃん)で、こんな重い内容の書類(かみ)ばかりにゃんですか……」


 処刑、追放、拘留延長、財産没収などなど……。アルティシアから整理を頼まれた書類には、焦臭い内容ばかりが書かれていたのである。いずれも領主の確認事項だ。


「何で、と言われましても……私の仕事は、これらの書類を確認して、サインを書き込むことですから、そういうものだとしか言いようが無いです」


「(やっぱり、この人、怖い人にゃぁ……)」


 サヨはブルリと震えた。彼女は未だにアルティシアの名前を知らず、すぐにでもアルティシアの前から立ち去りたいほどだった。もしも、名前を知らないと知られれば、書類に名前が載っている者たちと同じ目に遭う可能性を否定できない……。そんな悪い考えが、サヨの脳裏をかすめる。


 ちなみに、サヨは、書類に書かれているアルティシアの名前を、何度も目の当たりにしていたようである。しかし、彼女はアルティシアの名前が読めなかった。アルファベットの筆記体で書かれていたので、日本語しか分からないサヨには読めなかったのだ。


「(どこの文字で書かれている名前(にゃまえ)にゃ?何て書いてあるのか分からにゃいにゃ……)」


 アルティシアの発言にあった"サイン"というものがどういう意味なのかサヨには分からなかったが、多分、名前なのだろう、という予想はサヨにも立てられた。ゆえに、彼女は必死でアルティシアの名前を読もうとするが、真っ直ぐ見ても、逆さに見ても、ミミズが這ったような文字にしか見えない。


「(せめて名前さえ分かれば……)」


 どんなに思い出そうとしても分からないのは確実。あとは、本人から聞き出すしかない……。


 そう考えたサヨは、熟考に熟考を重ねた結果、一つの案を思い付く。


「……ちょっといいにゃ?ここに書いてある字は、何て読むにゃ?」


 サインに何て書いてあるのか、直接聞くことにしたのだ。


 文字が汚いと思われるリスクはあった。しかし、何もせずともリスクはあるのだ。なら、聞くリスクを冒して、名前を確かめるべきではないか……。サヨはそう判断したのだ。


 結果は——、


「あぁ、私の名前です」


「……んにゃ(終わった!)」


——アルティシアの名前が本人の口から出てくる事は無かった。


 更には——、


「汚い字ですよね……すみません」


「   」


——予想していた最悪の展開がサヨに襲い掛かる。


 サヨは再び白目を剥きそうになった。ここで気絶できれば、どれほど楽だろうか、などと思うが、人間(?)というものは、そう簡単には気絶しない。


「ぜ、ぜ、ぜ、ぜんぜん汚くないにゃ!むしろ、このくらいの字じゃにゃいと、真似されるにゃ!」


「このくらいの字……」


「はうっ?!」


 余計な事を言った、と後悔し、サヨは頭の中で()()()()回った。文字が汚くないと否定するだけで良かった、と。


 どうやっても追い詰められていくサヨに、更なる追撃が加わる。


「サヨさん、もしかしてですけれど、私の名前を覚えていらっしゃらない?」


「?!」びくぅ


「やっぱり」


 サヨの分かり易すぎる反応を見て、アルティシアはニコリと笑みを浮かべた。その笑みが、サヨを更に萎縮させる。


 とはいえ、怒っているわけではなかった。正式に名乗ったわけでもなければ、顔を合わせてまだ2日目。名前を覚えていなくても仕方のない事だとアルティシアも分かっていたのである。分かっていて、彼女は、サヨに対して意地悪をしていたのだ。


「フフッ」


「ひいっ?!ご、ごめんにゃさい!ごめんにゃさい!死刑だけはやめてほしいにゃ!」ぶるぶる


「そんなことしませんよ」


 アルティシアはそう言って一枚の紙を手に取った。そして、その余白部分に、何やら書き込む。


「はい、これ」


「……んにゃ?」


「私の名前です。アルティシアと言います」


 アルティシアが手にしていた紙には、綺麗なアルファベットで"Alticia"と書かれていた。綺麗に名前を書けば、サヨにも読めると思ったらしい。


 しかし、当然、サヨには読むことができない。とはいえ、アルティシアが自ら名乗ったことで、サヨは彼女の名前を思い出すことに成功する(?)。


「そ、そうだったにゃ!"アルにゃん"にゃ!」


「あ、アルにゃん?」


「サヨの故郷では、大事な人の名前に"にゃん"を付けて呼ぶにゃ」


「アルにゃん……えぇ、アルにゃんでいいです。では、私も、サヨさんのことを、"サヨにゃん"と呼びますね?」


「えっ」


「えっ?」


 新たに妙な空気が立ちこめるが、直前まで漂っていた一触即発の雰囲気は無い。ひとまずサヨの身の安全は保証されたらしい。


 その後、サヨは、アルティシアから、木下家に住んでいる住人について、名前と説明を受けたようである。その説明でサヨが皆の名前を覚えられたかは、現段階では不明、とだけ言っておこう。


昨日はどうしてもネタが浮かばなかったのじゃ……。

そのうち2話分、アップロードせねばのう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ