第97話 不死で有名なアイツ
今、僕らの目の前にいるのは、以前にも戦ったことのある『ドラゴガーゴイル』という魔物だ。
岩石を削りだして作られた、ドラゴンの姿をしているガーゴイル。すなわち石像である。
石像とはいうものの、魔物であり、独特の『補正』のようなものがかかっていることにより、その体はそこらの金属など比べ物にならないレベルの頑丈さを誇り、またその戦闘力は、単純なパワーで言えば本物のドラゴンにも勝るとも劣らないと『ズガン!!』言われあのごめんちょっとまってまだ説明の途中で……
……えーと何が起こったか一言で言うと。
「……えーと、やっぱりこのくらいの相手なら一撃でいけるですね」
今、目の前で機械仕掛けの銃剣……ガンブレードみたいな武器を構えているリィラの魔力弾の一撃で、『ドラゴガーゴイル』が爆散した。ただそれだけである。
攻撃して弱らせたところにとどめを刺したとかではない。遭遇してすぐ、HP満タンの状態で、せいぜい中パンチ程度の、通常攻撃の部類でしかない一発で爆散した。
★名 前:リィラ
種 族:機攻戦乙女
レベル:1
攻撃力:3004 防御力: 980
敏捷性:4285 魔法力:1920
(以下略)
……ステータス見てわかっちゃいたけど、強くなりすぎだろ、リィラ。
最終段階である『第五位階』に歩みを進め、『機攻戦乙女』に進化したリィラは、恐ろしいほどに戦闘能力を強化させていた。
進化前と比べて……能力値なんて文字通りの『桁違い』だ。かつて戦った悪魔や勇者がかわいく見えるレベルである。
他のパターンでもそうなのかはわからないが、どうやら『第四位階』から『第五位階』への進化は、それ以前の進化を大きく上回るパワーアップを果たすらしい。『頂点』とそれ以外の差、とでも言うんだろうか……。
たぶん、いや確実に、僕らの今のメンバーで……リィラとそれ以外で戦闘を行った日にゃ、勝負にもならずに僕らが負けるだろう。
まあ、味方というか仲間なわけだし、そのへんは別にいい。
普通に頼もしいし……戦闘能力で言えば、『シェイアーガー』にちょっと及ばないくらいだ。単独でそれだけの力を振るえるってんだから……全員が進化するまで『合体』できないな、なんて思ってた不安点が吹き飛んだ形である。嬉しい誤算だ。
ただ、問題点が一つ。
戦闘に参加させれば頼もしいものの……まさにその、あまりに強すぎる点が問題なのだ。
僕らに出番が回ってこない……とかそういうのではなく。
前にちらっと話したと思うが、この世界に置いて、共闘したメンバー内での『経験値』の分配方法は、どのくらい強いか、その程度戦いで貢献したか、この2点による。
リィラを戦闘に参加させると……まず、あまりに僕らと強さの格が違いすぎるせいで、経験値がほとんど持ってかれる。ただでさえ僕らは今、レベルアップ、ないしは進化に必要な経験値が足りなくてひーこら言ってるのに、これはちょっとどころじゃなくきつい。
そして、その強さゆえに……ほとんどの敵が一撃で、酷い時は当たってないのに攻撃の余波で死ぬ。ここで『貢献度』の面でも、意図せずしてリィラが圧倒してしまうので、またしてもこっちに入る経験値が少なくなる。
結果……申し訳ないが、リィラには一時的に『戦力外通告』の指示が出た。
弱いからじゃなく、『強すぎるから』ってのが変な感じではあるが。
じゃないと、ますます僕らが進化できないので。
「なんというか……すみませんです。まさか、こんなことになるとは」
「いや、いいよ……僕らだって、予想もできなかったし……それに、リィラが強くあってくれる分には、僕らとしては頼もしいしさ」
「そうだな。魔物化直後の頃、いつビーチェとかレーネが力加減間違えてパキッとやっちまわねーかハラハラしながら見てた頃が懐かしく感じられるな」
「ちょっとそこ、思い出話のついでに人のことディスるのはおよし」
レーネのツッコミは受け流しつつ、さて、進みましょうかね。
リィラが戦闘に参加できなくなって、実質ここからはマイナス1人での攻略になる。難易度上がったけど……何とかなるだろう。
☆☆☆
さて、ちょっと前、僕が立てたフラグが2つほどあったと思う。
そのうち1つは、『ゴールドグリフォン』を倒したことで回収したものの、もう1つが未回収だったため、どうせなら早くやっちゃおうってことで、それを目指して進んでいた。
ヒントになるのは『霊廟』とか『怨念』とか、いかにもホラー、ないしはアンデッド風味な記載ばかりだったので、それにしたがって、かつて王族や貴族の墓地があったエリアに行ってみたところ……出るわ出るわ、アンデッドの軍団。
王国軍の総本部、王族のお膝元だからだろうか? 『栄都の残骸』で戦ったスケルトンなんかよりも、明らかに上、豪華で協力な装備の……『スケルトンナイト』や『スケルトンメイジ』が、そこらへんからポコポコ湧いて出る。
都合というか間のいいことに、そろそろ夕暮れってことで、今日はもう休もうと思っていたところである。無機物組以外のメンバーは、生身であり、休息が必要だし。
その、レーネ、リィラ、レガート、そしてアルベルトのために、いつも通り『箱庭』で安全地帯を作ったわけだが……そこの守りをリィラに任せて、僕らは夜通し戦い続けることにした。
魔法生物系の魔物である僕らには、精神的なものはともかくとして、肉体的な疲労はない。なので、こういう勝手に敵が湧き出る場所は、レベリングには持ってこいだ。
加えて、アンデッド系は夜、活性化するという特徴があり、POP頻度も跳ね上がる。
経験値的に美味しいし、何より僕個人的には単純作業は苦ではないということもあり、はりきって徹夜で戦い続けた。
で……あたりが暗くなってから明るくなり始めて、って感じだから……ざっと12時間近くぶっ続けで戦い続けた。
フェルとピュアーノは、途中何度か休憩挟んでたけど、フォルテと僕はずっと一緒に、休憩返上でひたすらアンデッド狩りである。こいつも単純作業は得意だし、それ以前に真面目でストイックなところがある奴だからな。
背中を任せて戦うには一番安心できる奴だし、それもあって僕らの精神的な負担・疲労は蓄積しにくかったかもしれない。
恐らくは夜明けまでの間に、数千のアンデッドの軍団を葬り去っただろう。
そのかいあって、僕らのレベルはだいぶ上がった。塵も積もれば何とやら、って感じだ。
★名 前:シャープ
種 族:王宝牙棺
レベル:68
(以下省略)
★名 前:フォルテ
種 族:機械龍
レベル:68
(以下省略)
★名 前:フェルミアーテ・ミュート
種 族:鎧精霊
レベル:54
(以下省略)
★名 前:ピュアーノ・セライア
種 族:剣精霊
レベル:50
(以下省略)
同じ時間戦っていたのに、レベルでフォルテに追いつかれてしまっていた。
まあ、フォルテは魔法攻撃とかブレスとかで、僕よりも広範囲に攻撃できる場面が多かったからな、その分多く倒してたんだろう。
これなら……次か、その次のボス戦あたりで、目標レベルに達するだろう。
☆☆☆
明るくなると共に探索を再開した僕らは、順調に歩を進め、すぐに『霊廟』の最深部にたどり着いた。ここ自体、そんなに大きくも深くもなかったし、ダンジョン化で拡張してるなんてこともなかったようだしな。
それに、個々に出てくる魔物は、昨日さんざっぱら戦って、動きから何からわかり切ってたので、よそ見したり無駄話してても対応できるくらいになってたから。
そんなわけで、すぐにこのエリアのボス部屋にはたどり着くことができた……わけなんだけど。
そこで待ち受けていた奴は、道中と違って、そこまでお手軽に相手できるような奴ではなかった。
扉の向こうで待っていたのは……骸骨だった。
ただし、スケルトンなんかとは明らかに雰囲気が違う。黒いローブを纏い、手には長い杖を持っている。眼窩の奥に見える赤い光だけの目は、なぜか、深い知性のようなものを感じさせた。
そして、その周囲にまとっている黒いオーラ、感じ取れる威圧感、あふれ出んばかりの魔力量……今までの道中で戦った、スケルトンメイジなんかとは、明らかに違う存在だと一目でわかる。
これは、まさか……アレか? 鑑定。
★種 族:リッチ
レベル:64
攻撃力:298 防御力: 230
敏捷性:264 魔法力:1024
能 力:希少能力『最上級魔法適正』
希少能力『状態異常無効化』
希少能力『魔力急速回復』
希少能力『深淵の呪詛』
固有能力『眷属精製・冥』
固有能力『眷属強化・冥』
予想的中。とうとう出た……かの有名な、超強力なアンデッドが。
能力値的には……魔力が突出して高い。スキルも、見た目一発凶悪なのがそろってる。
いつぞやのキノコで地獄を見た『眷属』系のが特に注意が必要だな。
……なんて思ったそばから、リッチはスキルを使ったらしい。
その周囲に、両手の指ほどの数の魔法陣が現れ……中から、アンデッドが湧き出て来た。
あんまり当たってほしくなかった予想通りの光景、というか展開だ。
しかも、湧き出て来たのは……スケルトンやゾンビといった、そこらへんで見かけるようなザコモンスターじゃない。
その上位種の、スケルトンナイトやグールなんかですらなかった。
★種 族:スケルトンドラゴン
レベル:50
(以下略)
★種 族:スケルトン・バーサーカー
レベル:50
(以下略)
★種 族:凶毒屍鬼
レベル:50
(以下略)
★種 族:魔魂騒霊
レベル:50
(以下略)
骨の体を持つドラゴンに、全身鎧に両手剣を持った大柄なスケルトンの騎士。腐敗した体から毒々しい色の腐液を垂れ流しながら呻く死体に、半透明の体を持つ魔術師のような亡霊、その他諸々。
さすがはリッチ。召喚する眷属もエリート仕様か。
階層ボス、あるいはダンジョンボスでもおかしくないような魔物を召喚して兵士扱いとは……。
ステータスからして、放たれる魔法攻撃は恐ろしい威力をもって襲い掛かってくるだろう。
それに加えて、眷属召喚能力で、前衛や補助・援護要員まで用意された。
キノコに比べれば圧倒的に数は少ないが……個体ごとの強さは明らかにこっちが上だ。
おそらく、難易度自体もこっちの方が上だろう。つか、こいつら第3位階の魔物だとしたら……レベル50って、カンストしてるってことじゃないのか? なんてもの呼び出すんだよ……。
こいつは絶対に油断できないな……気を引き締めていこう。




