第96話 進化×2
『ゴールドグリフォン』を倒し、安全地帯へと一変したボス部屋で、僕らは休憩していた。
その最中、
「ふむ……ふむ、ふむ……」
アルベルトが、独り言っぽく呟きながら、虚空を眺めている。
恐らくは、『鑑定』で自分のステータスを確認しているんだろう。
そして同時に、手元に置かれている一振りの剣を見ている。交互に見ている。
さて、そのアルベルトが見ている自身のステータスについてだが……こんな感じである。
★名 前:アルベルト・ジョワユーズ
種 族:獣人・月兎
レベル:107
攻撃力:592 防御力:331
敏捷性:941 魔法力:871
能 力:希少能力『毒物耐性』
希少能力『超再生』
希少能力『暗殺術』
希少能力『心眼』
希少能力『神聖魔法適正』
固有能力『月兎烈脚』
固有能力『神算鬼謀』
固有能力『完全記憶能力』
特殊能力『重力超越』
特殊能力『鑑定眼』
特殊能力『地獄耳』
特殊能力『千里眼』
特殊能力『戦略魔法・智』
特殊能力『杯』
……えらいことになっとる。
うん、進化したのは素直におめでとうなんだけど……スキルが。スキルが。
『通常能力』が1コもなくなって……それでなお、数が14個。しかも、新たに取得したものであろう、見慣れないスキルが増えていると来た。『杯』を除いても13個だ。
加えて……『進化』ゆえの変化だろうが、能力は爆上がりしている。
特に、魔法力の上り幅が尋常じゃない。前まで200行ってなかったよね!?
何さらっと、魔法関係の専門家であるエルフ族超えてんの!? このメンバーの中で勝ってんの、フォルテとビーチェだけなんだけど!?
つか、『月兎』って何!? 聞いたことないんだけど!? この種族のせいか!?
あー、魔物図鑑で調べられればいいのに……亜人は載ってないんだよな。
……次のレベルまで『黙示録』が進化したら、それもどうにかなるかもだな。
しかし、僕の場合……相変わらずその『進化』が遠いんだよなあ……。
★名 前:シャープ
種 族:王宝牙棺
レベル:65
攻撃力:833 防御力:1194
敏捷性:695 魔法力: 715
能 力:希少能力『悪魔特効』
固有能力『機動生命体』
固有能力『秘宝創造』
特殊能力『杯』
特殊能力『悪魔のびっくり箱』
派生:『無限宝箱』『絡繰細工』
『奇術道具』『箱庭』
『眷属小箱』『愛箱弁当』
『箱入娘』『牙箱菜園』
『千両替箱』『梱包贈答』
結構な強敵と戦って、『黙示録』2冊分の経験値ブーストもかけて……レベルが上がったのは2、か。もっと強い敵と、もっとたくさん戦わなきゃいけない、ってことかね。
幸い、この宮殿内には複数のボスモンスターがいるようだし……それら全部がゴールドグリフォン級なら、レベルの上りも期待できる。そして、それらの頂点に立つダンジョンボスも、そりゃ強いだろう。
もちろん、強さ自体を警戒しなきゃいけないのは十分わかってるけどね。
でもって、もう1つ……アルベルトが手に持っている剣についてなんだけど。
どうやら、中庭の端っこにあった石碑――戦闘の余波で壊れた――の下に空洞があったらしい。そこから出て来たのが、この剣だ。
ボロボロだったんだけど……アルベルトが手にした瞬間、光に包まれて……それが収まると、修復され、新品同様の状態でそこにあった。
どういうことかと驚いたけど、アルベルト曰く、光る瞬間『クエスト達成』のアナウンスが聞こえたらしい。
それを聞いて、皆、納得がいった。
こないだ僕がフラグを立てた、『秘宝』の件。アレがこの剣だ。
あれを見つけろっていうクエストがあったはずだから……アルベルトが手にした段階で、クエスト達成になって、その報酬としてコレが修復されたんだ。いつだったかの機密書類みたいに。
★品 名:月光剣アルミラージ
レア度:5
説 明:夜空に輝く月のかけらを鍛えて作られたと言われる魔剣。
強力な神聖属性の魔力を秘めており、所持しているだけで所有者の
全ての攻撃に神聖属性を付与・強化することができる。
なお、一部の能力が封印されている。
……いい品なのはわかるんだけど……月のかけらっていわれても。
この一文のせいでちょっと嘘くさく……月行っても、せいぜいそこにあるのは月の石程度だと思うんですけれども……いや、この世界だと違うのかな? まあいいや。
さて、休憩終わったら次に行くんだし、準備しとかないとな。
☆☆☆
そしてその時は、次のボス部屋を攻略した時に訪れた。
城内を進んでいき、行き着いたのは……聖堂、っていうのかな、こういう場所。
かつてビーチェ達が拠点にしていた、廃教会の礼拝堂に似てる気がする。
そこで待ち受けていたのは……なんとまあ摩訶不思議な魔物で。
僕らが聖堂に全員入った瞬間、なんとステンドグラスから飛び出してきた。
ハリウッド映画みたいに、ガラスをぶち破って入ってきたわけじゃなく……ステンドグラスの中の絵が飛び出してきたのだ。
★種族名:レインボーゴースト
レベル:37
(略)
きらびやかで神々しい見た目に反して、かなり高位のアンデッド系モンスターらしい。ひげを蓄えた聖人っぽいおっさんが、ステンドグラスそのままの原色カラーで舞い降りて来た光景は……なんともいいがたい迫力があった。一昔前の、雑なCG合成みたいな……わかりにくいか。
ただ、それなりに強かったものの、1体だけだったので苦戦はしなかったが。
魔法バカスカ打ってきてうざかっただけで、『箱庭』で保護してしまえばそれも無力。
どうやら、絶え間なく放たれる全体攻撃が脅威、って感じの魔物だったらしい。
守りつつ、突っ込んだ僕とフォルテでタコ殴りにしておしまい。
そして……問題は、その戦いが終わった直後のことだった。
これを見てほしい。
★名 前:リィラ
種 族:武装機傀
レベル:70
攻撃力:781 防御力:580
敏捷性:899 魔法力:420
能 力:希少能力『連携強化・大』
固有能力『機動生命体』
固有能力『臨戦・射撃』
特殊能力『杯』
備 考:進化(保留中)
……とうとう来た。この時が。
僕らの中から……最終段階『第五位階』の魔物が生まれる瞬間が。
「いやあ……先越されちゃったね」
「仕方ねーだろ。リィラは種族的にレベルの上りが早いからな……ちなみにお前今いくつだ?」
「66。フォルテは?」
「63だ……まだ先は長そうだな」
「え、えっと……もしアレでしたら、私、お二人が70になるまで待ってるですよ? 3人同時に進化した方が……何ていうか、収まりもいいですし」
と、善意からだろう、リィラが言ってくれるものの、
「いやいやいや、それはないって。経験値もったいないじゃん」
「だな。俺たちのことを待ってて、それまでレベルカンストのままじゃ、その間にお前がもらって多分のそれが無駄になる。進化して強くなった後、さらに強くなれるいい機会だろ?」
「で、でも……私だけそんな……いいのでしょうか?」
そう、なんか恐縮してしまってるので、レーネ達にも手伝って貰って、何とか説得した。
実際、戦力が上がってくれた方が、単純に僕らもありがたいと思えるしね。お世辞とか、リィラに気を使ってるとかじゃなく、偽らざる本音である。
ただ、彼女の述べた懸念の中には、ホントにというか、真剣に考えなきゃいけないものも、確かにあった。
それは……『合体』である。
僕らの最大戦力……合体形態『シェイアーガー』。これになるには、僕ら3体のレベル差が大きくなく、また同じ位階の魔物である必要がある。
つまり、ここでレーネだけ進化すると……あと、僕とフォルテが進化するまで、切札である『合体』が使えないのだ。それが、不安要素と言えば不安要素である。
だが、それを差し引いてもなお、ここでリィラを進化させるメリットは大きい。
結論として、僕らは、リィラに先に強くなってもらうことに決めた。
「で、ではいくのです……皆さん、その……ご注意を。光りますので」
そう、緊張気味に言って……次の瞬間、リィラの体が光り出す。
全身が光に包まれ、輪郭があいまいになり……変化していく。
それと同時に、僕らは、冷汗を流していた。
目の前で、リィラは形を変えていくだけじゃない……その存在感が、膨れ上がっていく。
こんなこと、今までの進化じゃなかった。
確かに、強化された結果として、醸し出す存在感が大きくなった、とかはあった。けど、こんな、変化してる最中から、あたりにまき散らされる威圧感は……なかったはずだ。
(これが……『第五位階』。魔物の、頂点に立つ者達の存在感……!)
味方だとわかっているのに、戦慄せずにはいられない。そんな圧倒的な存在がそこにあった。
そして、実際はほんの数十秒だったにも関わらず、もっとずっと長く感じられた時が過ぎた。
そこに立っていたのは……不思議な少女だった。
何が不思議って……神々しい雰囲気と、重厚でメカメカしい雰囲気が同居してるんだよ。
丁度いい例えを探すなら……『戦乙女』って奴だろうか。女性としての魅力、かわいらしさ、凛々しさ……そういったものを損なわないデザインになっていながら、機能性も十分備えている装備。
しかしそれは、僕から見て……明らかにロボット系の見た目でもあった。ロボットの装甲を、美少女が身にまとっている。そんな感じに見えた。
今までもそんな感じだったけど、今回はさらに……背中に、いくつもの金属の塊? 板? が組み合わさってできた、鋼の翼があった。これもメカメカしい。
そして、手にしている武器は……突撃槍とライフルを組み合わせて、それを近未来仕様にしたような、これまたメカメカし……というかどう考えても機械だよねコレ。
「……進化、完了……なのです」
声は、変わっていなかった。前と同じ、リィラのかわいい、ちょっと甘ったるい声だ。
自分の光が自分でも眩しかったんだろう。閉じられていた瞳が開き、その向こうの、サファイアのような透き通った青い目が見えた。
その彼女に、僕は見とれながらも……『鑑定』を使って……
★名 前:リィラ
種 族:機攻戦乙女
レベル:1
攻撃力:3004 防御力: 980
敏捷性:4285 魔法力:1920
能 力:希少能力『連携強化・特』
固有能力『機動生命体』
固有能力『臨戦・射撃』
固有能力『超極地戦闘適応』
固有能力『眷属精製・機』
特殊能力『超速演算』
特殊能力『超機動戦闘術』
特殊能力『杯』
……えらいことになっとる(本日二回目)




