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転生箱道中 ~ダンジョン異世界で僕はミミックでした~  作者: 和尚
第4章 王国と帝国という名のエリア
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第89話 帝国攻略、開始



帝国への侵入は、そう難しくはなかった。


もともと、いくつものペーパーカンパニーを利用して、王国、帝国、その他諸国とは普通に取引を行っているのだ。そのルートをちょっと弄って、紛れ込めば……少人数が密入国することくらい、造作もない。


ましてや僕らには『無限宝箱インベントリ』があるので、何なら手ぶらでの移動だって可能だ。必要な時に必要なものを取り出せばいいんだから。


そう言うわけで目立たないように商人風、あるいはそこで働く作業員風に偽装した上で、最高幹部を中心に選抜された『帝国攻略チーム』は、無事に『ゲルゼリア帝国』に密入国した。


メンバーはいつもの感じだ。

まず、ボスでありながら前線主義であるビーチェ。その右腕レーネ。

彼女達の側近である、レガートとフェル、そして……ピュアーノ。

そして、実働部隊と言うか、自分で言うのもなんだが、敵を倒して彼女達を守る最高戦力として、僕、フォルテ、リィラの無機物トリオ。


以上、8人。

いや、3人と5体、と言うべきか……まあいいや。


で、その8人でどうにか潜り込んだわけなんだけども……どうやら『奴』にはそれもお見通しだったようだ。


連絡も何もしていないのに――これからするつもりではあったけど――僕らが通るルート上の経由地できっちり待ち伏せて、合流してきた。


ホント、どんな頭の中してんだか……このウサギ皇子は。


☆☆☆


「さて、ろくなもてなしもできなくて悪いが……歓迎しよう、『ドラミューザファミリー』諸君」


「どうも……そちらもご息災のようで、アルベルト皇子」


「どうにかな。いや、それなりに急いできたんだが……合流が間に合ってよかった。貴君らが場所を帝国に移した以上は、動くなら早い方がいいからな」


そう、いつもの笑顔で言う彼……帝国の第3皇子、アルベルト・ジョワユーズが、僕らの前に姿を現していた。

少ない護衛、というか部隊だけを連れて……今までに見たことのない服装で。


もっとも、僕らが見たことのあるこいつの服なんて、軍服くらいのもんだけど……それとは違う、もっと動きやすくて、それでいて頑丈な装備だ。


ごてごてした装飾のない、普通の布地の服。長袖長ズボンの上下で……その上からベスト型の上着を纏っている。頭には、バンダナみたいな布を巻いていた。

その上からさらに、急所を隠す程度の軽鎧と、両手両足を保護しつつ、武器にもなりそうな手甲具足を身に着けていた。

そしてその背には、肩にかける感じの鞄を背負うように下げている。


見た目一発、完全に旅装か何かである。それも、戦闘を視野に入れた類の。


その上、あれらは普通の鎧や服に見えるが……直感的にわかる。彼の身を包んでいるのは、マジックアイテムの類であり……見た目からは想像もできないくらいの防御性能を持っていると。


あんなもんを装備した状態で、なぜこんなところにいるのかと言えば……


「その恰好……事前にもらった連絡を見た時は、暗号解読をミスしたのかと思いましたけど、どうも違うみたいね。……本気で私たちと一緒に行くつもり?」


「もちろんだ、世話になる。……ああ、まあ、世話になると言いつつ、自分のことは最大限自分でやるつもりだし、足を引っ張るようなら最悪置いていってくれていい。ただ、そこらの兵卒よりは役に立つ部分も多いと自負しているから……よろしく頼めるのであれば嬉しい」


そう。今回の『帝国攻略』……この皇子様が臨時メンバーに加わるのだ。


今回の帝国道中の目的は、大きく分けて3つ。


1つは、いつも通りと言うか、王国でやってたのと同じというか。

『帝国』のダンジョンやらエリアを攻略し、僕の縄張りを広げること。


これにより、帝国国内で僕や僕の仲間たちが行動する際に、圧倒的なアドバンテージを得ることができる。戦闘から生産まで、あらゆる行動に補正がかかる……はず。


2つ目。これは1つ目と通じるところがあるんだけど、帝国国内における、アルベルト達の勢力の優位を確立すること。


帝国は……王国よりマシとはいえ、やはり上の方はあまり褒められたもんじゃない状態になっているようだ。権力やら支配欲からじゃなく、国策として、自国の国力を取り戻すために戦争を行っている感じ。あくまで、安全と資源・金銭確保が目的です、みたいな。


ただし、国が大きい分、行政運営に必要な金銭やら何やらも膨大であり……小国相手に戦争で買っても、必要な文を補填できず、むしろ戦争に資源を割いたせいでまた負債が別口でできてプラマイ限りなくゼロ……みたいな感じの負のループが、最近あるらしい。


戦争して資源や国土その他を勝ち取らないと、身の内の負債で押しつぶされる。

だから戦争して他国から奪わなきゃいけない。

そんな感じの動機で戦い続けているようだ……周辺の小国とも、王国とも。


……止まると呼吸ができなくなって死ぬ、サメとかマグロみたいだな。


そういうわけなので、祖国がつぶれるのを良しとしない以上、この国の大多数は戦争賛成派として、あらゆる機関の運営に携わっているのだ。

まあ、そりゃ仕方ないよな……食べ物や資源がなきゃ、死んじゃうんだし。


だがそれは、逆に言えば、戦争以外でそういったものを供給するめどがつけば、戦争賛成派は激減する可能性が高い、という公算があることを示してもいる。


例えば、何かしらの方法で、別口から大量の食料やら資源を用意すれば。

膨れ上がった負債を、何とかして返済、あるいは補填するだけのあてがあれば。

さらに言えば……戦争が止まり、出番がなくなることで、軍隊に徴用されていた若い労働力を、農村や工業地帯といった、生産の現場に戻して働いてもらうことができれば。


考えるまでもなく、帝国内の状況は劇的に改善するだろう。


そして、それをもたらした者の発言力・影響力は、絶大なものになる。

それこそ、民衆から官僚、貴族、軍部まで全てが味方に付くだろう。というより、そんな存在を敵に回すような位置に立つなど、愚策でしかない。


ここまで言えばもうわかると思うが、ここでそうなるのばアルベルト。そしてその派閥である。


僕らの資源その他の提供による下支えを受けながら、アルベルトの知識や人脈、政治手腕をフルに活用すれば、短期間で爆発的に影響力を広げることが可能だろう。


もっとも、表立って大きく動けば、それだけ注目されることになるから、段階を踏む必要はあるだろうが、それくらいの時間はある。


今から始めても十分間に合う。

『その時』が来る頃には、気が付けば、アルベルトによって帝国は実質ほとんどをおさえられている、彼について行く以外に選択肢がない……なんて感じになっていることだろう。


もっとも、そこに至るまでには、かなり高度に政治的なプロセスが多いそうなので……僕は、全部は理解できていないんだけども。

まあ、ビーチェとかフェルはわかってるみたいだし、任せるとしよう。


で、この国に来た目的、最後の3つ目だが……単純に、僕らの修行である。



★名 前:シャープ

 種 族:王宝牙棺キングギフト

 レベル:63

 攻撃力:789  防御力:1028

 敏捷性:689  魔法力: 677

 能 力:(略)


★名 前:フォルテ

 種 族:機械フルメタルドラゴン

 レベル:61

 攻撃力:848  防御力:929

 敏捷性:573  魔法力:936

 能 力:(略)


★名 前:リィラ

 種 族:武装アーマード機傀モービル

 レベル:67

 攻撃力:733  防御力:545

 敏捷性:875  魔法力:396

 能 力:(略)


★名 前:レーネ・セライア

 種 族:修羅森妖ヴィルーダエルフ

 レベル:109

 攻撃力:689  防御力:770

 敏捷性:600  魔法力:756

 能 力:(略)


★名 前:ベアトリーチェ・ドラミューザ

 種 族:真祖の吸血鬼トゥルーヴァンパイア

 レベル:105

 攻撃力:729  防御力: 415

 敏捷性:440  魔法力:1089

 能 力:(略)


★名 前:レガート・ディミニー

 種 族:森妖聖騎士オーダーエルフ

 レベル:112

 攻撃力:627  防御力:389

 敏捷性:689  魔法力:711

 能 力:(略)

     

★名 前:フェルミアーテ・ミュート

 種 族:鎧精霊メイルエレメント

 レベル:39

 攻撃力:462  防御力:523

 敏捷性:374  魔法力:496

 能 力:(略)

     

★名 前:ピュアーノ・セライア

 種 族:剣精霊ソードエレメント

 レベル:14

 攻撃力:659  防御力:627

 敏捷性:709  魔法力:421

 能 力:(略)


★名 前:アルベルト・ジョワユーズ

 種 族:人間(混血獣人・兎)

 レベル:78

 攻撃力:197  防御力:64

 敏捷性:421  魔法力:84

 能 力:(略)



唐突に出したが、アルベルトを含めた僕らの能力が今、こんな感じだ。

ぶっちゃけ、かなりの水準である。そこらの……っていう言い方が的確かどうかはわからんけども、正規軍くらいなら十分粉砕できるレベルの力はある。


だが、何が起こるかわからないのが戦争だし、国家、それも大国の軍部ともなれば、どんな切り札を隠しているかわかったもんじゃない。

ぶっちゃけ、どれだけ警戒し、どれだけ慎重になって備えても、やりすぎってことはない。


なので、帝国の未攻略ダンジョンその他を利用してレベル上げしようぜ! ってのが、今回のプランなわけだ。僕ら『最高幹部』クラスを含めてね。


そして、それにアルベルトもついてくると。

自身の戦力向上もそうだけど……彼がいれば、帝国の関所とか、色んな所をフリーパスにできる。面倒な手続きとかすっ飛ばして、怪しまれることなく移動できる。


……いや、より正確に言えば、アルベルト自身、若干怪しまれてるのがデフォルトの人なので、多少の違和感はそのまま『いつものこと』という感じでスルーされるそうだ。


「他の兄弟や、同い年の貴族の子女らと違ってというか、私は価値観や行動原理が独特だった部分があるからな……言ってしまえば珍獣扱いだ。今更、亜人の使用人の1人や2人や3人や4人増やしたところで、『またか』と言われて終わりだろうよ」


「頼もしいんだか不安なんだか……まあいいわ、同行するのは承知した。こっちにとっても助かる部分が多いし、色々道すがら情報を聞いたり、作戦とか話したりできるしね。けど、ダンジョンアタックの際は別よ? 難易度にもよるけど、正直、部外者の面倒見る余裕はないかもだし」


「ああ、心得ている。できればついて行きたいし、可能そうなら……私だけでもついて行こうとは思っている。だが、本当にヤバそうなら遠慮させていただくとするさ」


「もっと強くなるために? 自分が強ければ、護衛なしでもフットワーク軽く動けるし……いざって時に身を守れるものね」


「実際、うちのボス、大抵の戦闘員やら護衛より強いから、逆に安心だしね」


「……まあ、それもなくはない。だが、本命はこいつだ」


言いながらアルベルトが取り出したのは……毎度おなじみ『黙示録』。

それを見て、僕も同じように、自分の『黙示録』を取り出し……2つが同じ場に姿を見せたこの光景に、アルベルトはすごく楽しそうな、面白そうな笑みを浮かべた。


「知っての通り、こいつを持っている者が、ダンジョン攻略なりボス討伐なり、何か手柄を上げると……それに見合った報酬が出るからな。シャープ殿のそれと、私のこれ。『黙示録』持ちが2人いれば、単純計算で恩恵も2倍だ。我々の戦力増強に、大いに役立つだろう」


なるほど、確かにそうだな。


油断すると忘れそうになるものの、この『黙示録』に表示される『天啓試練オラクルクエスト』の達成報酬は、結構豪華だ。

金銭とか食料の時もあれば、重要な書類とかだったり、豪華なマジックアイテムだったり、貴重な薬剤だったり、時にはなんとスキルだったりする。


それを2倍……しかも、おそらくは全く同じ条件のものが両方に出るはずだから、ホントの意味で単純に2倍になるわけだ。


例えば『ゴブリンを100匹倒せ』とかのクエストなら……僕とアルベルトの『黙示録』にそれぞれが表示され、実際にゴブリン100匹を倒すと、僕のとアルベルトの、それぞれで報酬がもらえる。達成したのは1回分だけなのに、2回分の報酬がもらえる。確かに、これはお得だ。


「それに、もしかしたら私とシャープ殿のもので、違うクエストが表示されることもあるかもしれないだろう? 所有者が何らかの条件を満たしている・いない、といった理由でな。その場合……今言った『2倍』のルールは適用されないが、同じチームとして行動していれば、達成時に全員がその恩恵にあずかれる。これはこれで、自分達では手に入らなかった恩恵を手にする好機だ」


なるほどね。筋は通ってる。

アルベルトを連れていくのは……確かに、有益だと言えるだろう。


不安要素としては、やはりレーネ達に比べてまだ弱いってところはあるにはあるけど、もともとレーネ達だって、ちょっと前までは似たようなもんだった。僕らと一緒で、ダンジョンっていうレベル上げのための設備もあったから、今でこそ爆発的に強くなってるけど。


なら、十分カバーは可能だろう。


そして正直、最も僕がこの共同作戦に期待するのは……『黙示録』が2冊あることで、恩恵の1つである『経験値アップ』も効果2倍になることだ。


最近、ホントにレベルが上がりづらいからな……次の進化のためのレベル上限、恐らくは70であろうその数値にたどり着くために。

今、僕ら3人、全員レベル60代とかなのに、戦っても戦ってもほとんど変わらないからな……早いとこレベル上げたい。進化したい。強くなりたい。


その為には、ダンジョンという経験値大量ゲットの場所で、さらにその経験値を増やせる可能性があるこの作戦はもってこいだ。


……とまあ、このへんまでは事前に話が済んでいる領域でもあるので、確認だけして、予定通り今後行動を共にすることにした。

アルベルトと、その部下の参謀や精鋭部隊の人たちと。


帝国攻略道中――主に標的はダンジョンだが――いよいよ開始である。





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