表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生箱道中 ~ダンジョン異世界で僕はミミックでした~  作者: 和尚
第4章 王国と帝国という名のエリア
87/118

第85話 ある労働者の1日

やっと更新したと思ったら外伝的な話という暴挙。

……すいません、書いておきたかったんです。こういう、第三者視点的な話。


本編も……ちょっと今、矛盾とか無理がある展開がなくなるようにプロット弄ってます。しばしお待ちを……。



トリエッタ王国のどこか。


恐らくは、山の奥であろうその場所に、その労働施設はあった。


ダンジョンマフィア『ドラミューザ・ファミリー』によって設置され、経営されているこの労働施設は、簡単に言えば、多数の人手と優れた設備――シャープが作ったマジックアイテムや、精製した眷属を利用した『魔物設備』を含む――により、様々な物品を生産する工場だ。


基本的に、少し説明を受けて勉強するだけで誰でもできるような、簡単……とは言わないまでも、単純な仕事がここでは行われている。


例えば、他の工場で生産された部品を組み立てて製品に仕上げたり、

生産された物品を梱包して販売できる状態にしたり、

運び込まれる食料……野菜や穀物などを箱詰めしたり、加工して保存食にする、などである。


流れ作業を取り入れ、明確な役割分担によって徹底的な効率化が図られ、生産量はかなり大きい数値を出していると同時に、そこで働く労働者たちにとっての負担減にもなっていた。


そして、本来であれば専門的な知識と技術を要する、1つ1つの部品作りという点で……シャープとその眷属のスキルによる大量生産が行われている。

そのため、素人の単純作業による人海戦術だけが仕事として残っているのである。


もっとも、この施設の概要は、そこで働いている者達でも、ごく一部しか知らされていない。


場所を隠して、十数人が一度に乗れる乗合馬車で連れてこられ、ここで住み込みで働いているのだ。自分たちがいるのがどこかも、誰によって経営されているのかも、労働者たちは知らない。


しかし、そんなことは彼らにとってどうでもいいことだった。

それが不安、ないし不満でないのかと問えば……彼らは皆、口をそろえてこう言うからだ。


そんなことどうでもいいから、ずっとここに居たい。ずっとここで働いていたい、と。


彼らの多くは、様々なバックグラウンドを持つ貧困層である。


戦争で土地が荒れて農作ができなくなった者、仕事がなくなった者、稼ぎが足りなくて暮らしていけず、夜逃げして放浪していた者……様々いる。


そんな彼らは、戦勝国であり支配者である、王国やその貴族、その傘下にいる商会などによって仕事を回され、それで食いつないでいたものがほとんどだった。それは、日雇いの賃金の安い仕事だったり、長期で賃金はある程度あるものの、危険な仕事だったりした。


日雇いであれば、良くも悪くもその仕事はその日限りである。

開発現場で資材を運んだり、穴を掘ったり、ものを壊したりするような、人手と力のいる仕事が多く、特別なスキルは必要としない。要するに、体1つで誰でもできる仕事だ。


だが、当然賃金は安い上、毎日安定して仕事がある保証もない。仕事でミスでもしようものなら、給料を棒引きにされたり、折檻として暴力を振るわれたり、次の日から雇ってもらえなくなったりする。簡単だが過酷で、保証と呼べるものは何一つないと言っていい。


長期の分類の仕事はさらに過酷である。賃金はいいが、その釣り合いを明らかに超えたレベルで過酷な仕事場で働かされるからだ。鉱山労働や、危険な海域での漁や狩りがその例だ。


鉱山ならば崩落や、有害なガスや粉塵、引火によるガス爆発といった危険があるし……狩りや漁はそのまま、獲物に返り討ちにされたり、遭難したりする危険がある。


そんなことは知るかとばかりに、使用者によって労働者は酷使され、消耗品同然に扱われ……ケガをしたり、体を壊せばそのまま捨てられるのが常だ。敗戦国の国民や貧困層の者達など、人間扱いされることがそもそも少なく、そんな中を必死で生き残っていくしかなかったのだ。


彼らは皆、その現実を知っている。体験したことがある者もいれば、そういう体験談を聞いたことがある者もいる。そういう危険な現場で、仲間や家族を失ったものも少なくない。


そんな彼らだからこそ、口をそろえて言うのだ。

ここは天国だ、と。


☆☆☆


1人の労働者が、ベッドで寝ていた。


まだ20歳にもなっていないであろうこの彼は、昨日ここに連れてこられた新入りである。

簡単に施設を説明され、今日から本格的に働き始めるわけなのだが……彼は今日、まだ仕事が始まっていないこの時点で、すでに困惑していた。


いや、正確に言えば、昨日、ここの説明を受けていたたあたりからずっと困惑している。


彼は以前、鉱山で働いていた過去を持つ。

そこでは、人を人とも思わない現場監督や、そのさらに上の事業主の指示により、無茶で過酷で危険極まりない労働が当然のように行われていた。それでいて、労働者が身を置く環境は、劣悪そのものだった。


何十人もの、同僚と呼ぶべき雇われの鉱夫たちが大部屋で雑魚寝。風呂になど滅多に入れず、部屋は汗やら泥やらで酷い匂いが立ち込めていた。当然のように虫も湧き、病もはびこる。

食事も少なく、味も悪い。食べられる期間を過ぎているのだろうことは明らかだった。


体調を崩して働けなくなる者、作業中の様々な事故でケガをする者が続出する中、それでも労働を続けさせられる……そんな現場を知っていた。


だからこそ、ここは……片っ端から、ひたすらに驚かされっぱなしだったのだ。


そもそも、今の状況がすでに驚きだった。

自分達のような、一山いくらの人夫は、自分の記憶にあるような扱い方をして暮らさせ、寝かせておくのが普通だ。大部屋で雑魚寝、着るものは自前、あるいは毎日同じもの。


しかし今、自分は……洗濯された清潔な部屋着を着て、ふかふか、とは言えないまでも、きちんと弾力を感じる布団を敷いたベッドに寝ている。しかも、部屋着とは別に作業着が、予備含めて2着支給されていた。ほつれ一つない、新品と思しきものだ。


そしてここは大部屋ではなく、二段ベッドが4つ置かれた、8人相部屋の部屋だった。

そこそこの人数の同居だが、匂いもなく、空気も悪くない、清潔な環境だ。しかも、小さいが自分用の荷物を入れておく戸棚まである。1つ1つに鍵までついていた。


明らかに、自分のような平民、いや、貧民の労働者への扱いではない。

しかもそれが、ここで働く何十人、何百人に等しく与えられているのだ。


この時点で彼は、自分の雇い主が一体何者なのか、想像することすらできなかった。できなくなった。


ここへは、自分が住む町を最近仕切り始めた、ある組織の紹介で来たのだが、その時会った者も雇い主そのものといった感じではなかったし、いくつも間に仲介を挟んでいるようだった。

果たして、その一番向こうにいるのは何者なのか。貴族か、あるいは大商人か。


そんなことを考えていると、突然、部屋の外からラッパの音が鳴り響いた。

新入りの彼は、すぐにそれが、昨日聞いていた『起床の合図』だとわかった。


鉱山勤めの時のくせで早く目が覚めていた彼は、すぐさま起き上がって着替え始める。


するとその瞬間、同じ部屋で寝ていた者達が……自分と同じように起きていた者から、どう見ても多少のことでは起きないほどに熟睡していた者まで、一斉にばっと起きて支度を始めた。


寝起きがいい者が多いのだな、と、新入りは感心した。

彼の前の職場では、疲労のあまり朝起きることができず、遅刻し給料を棒引きにされる、などということも珍しくなかったからだ。そうならないよう、皆、必死に起きようとはするのだが。


まともな職場かもしれない、と期待を少し大きくするこの新入りが……さっき聞いたラッパが、睡眠解除の効果があるマジックアイテムであると、それを毎朝、皆を起こすために使っているのだということを知るのは、まだまだ先の話である。

その時彼は、そんなことに、一様に高価なものとして知られるマジックアイテムを使うなど、本当にこの事業主は何者なのだと、驚愕を通り越して戦慄することになるのだが。


☆☆☆


全員で一度には入れないため、交代で食堂で食事をとった後は、いよいよ仕事の時間となる。


……その食事も、当然のように、彼からすれば破格のもの。


もしかして朝焼いたのではないかとすら思えるような、やわらかいパン。塩味のついた、フォークで刺しても破れないくらいの厚みがあるベーコン。野菜のスープには、はっきりと何の野菜かわかるくらいに大きく切られた具が入っていて、飲み物の水は泥臭くもなく澄んでいる。


満腹とまでは言わないが、十分に腹が膨れて活力がわいてくるような食事だ。祖国が戦争に敗れてからは……いやそれよりも前、市民の生活が困窮し始めてから、もう何年も見たこともないような……満足のいく、と言っていい食事。


夢中になって平らげた。周囲からの、生暖かい視線に気づくこともなく。


その後に連れてこられた作業場で説明された、今日の仕事。

正確には、彼らが、今日からしばらくの間従事することになる仕事。その内容は……それなりに覚悟を決めて来た『新入り』の彼らからすれば、拍子抜けするほどに簡単なものだった。


鉄鉱石の加工と、仕分け。それが内容だった。

どこかはわからないが、別の現場――あるいは、採掘場そのものかもしれないが――から運ばれてくる、大量の鉄鉱石。それを、炉で溶かすなどの手順を経て不純物を取り除き、残った鉄はインゴットにする。そしてそれを、次に運ばれていく先ことにまとめて、荷馬車に積み込む。


言ってしまえばそれだけだ。たったそれだけだ。

内容は、役割ごとにもう少し細かく分けられるし、扱うものは鉱石や、精製後の鉄、そしてその中間の物質であり、かなりの重量を運搬する大仕事ではある。力は要るし、疲れるだろう。


それでも、作業中に事故でいきなり死人が出る危険性がそこら中に転がっているような炭鉱とは、別格と言っていいほどに優しい職場だ。


設備に巻き込まれたり、溶鉱炉に落ちたりしなければ……そのあたりだけ注意していればいいのだから。自分の注意で防げる範囲の危険性だ。

後はせいぜい、運んでいる途中で石や鉄を足に落としたら痛い、くらいか。


新入りの彼が割り当てられたのは、最も過酷だが最も簡単な仕事の1つ。鉄鉱石の運搬だった。


縦横数メートルの、巨大な箱。そこに、鉄鉱石がぎっちり入っていた。

どこから、どうやって運んできたのかもわからない量。地面に積めば、平民が住む一件屋など、縦にも横にも軽く上回る大きさの山になるだろう量。

そうして積んでおかないのは、崩れると危険だからだと説明を受けた。


この鉄鉱石の山を、スコップで少しずつ台車に取り、運んでいく。

運ばれた先では、また別の作業が行われる。炉で溶かし、鉄と不純物に分ける作業が。


そこまでは彼は関わらない。彼はただ、鉱石をひたすら運び続けるだけだ。


色々と不思議に、疑問に思うことはあったが、ここの仕事は暇なわけではないし、力も使う。すぐに彼は、今までの仕事と同じように、目の前の仕事に集中してこなし始めた。余計なことを考えず、手早く、安全に、与えられた仕事を遂行することだけを考えて。


☆☆☆


途中で挟んだ昼休み(昼食含む)を除き、1日の仕事時間は9時間ほど。

午前8時に始まり、午後6時には終わる。


それまでの間、ひたすらに作業を続ける。


その途中、いくつも驚くことがあった。


貧困層の者達にとっては、1日に3度の食事など、不可能になって久しい。基本的に1日に1~2食、町や村によっては、2日に1食などという者もいる。

仕事の途中で、弁当が……しかも、朝と同じくらいのボリュームで、昼食として食べるように、と渡された上、しばらく休みまでもらえたことに、驚く者は多かった。


作業中に、見たこともない道具……恐らくは、高価な機材、あるいは下手をするとマジックアイテムの類ではないかと思えるようなものも、いくつも彼らの目に入った。


このような末端の作業場まで、これほど金をかけるとは、一体どんな大物が雇い主なのか。


その驚きと同時に……もし万が一、何か事故があってあれらを壊してしまったら、自分達はどんな罰を受けるのだろう、という恐怖と不安もあった。ただの荷車とスコップだけが作業道具として渡されたことを、彼らはその意味で喜んだ。


最大の驚きは、作業中に不慮の事故でケガをした者が出た時だった。


鉱山や漁でそういった者が出た場合、雇い主のスタンスにもよるが……たいていの場合、ろくな手当もされずに放置される。


そのまま治って復帰できればよし。できなければ……最悪の場合、そのまま放り出される。

見舞金などと気の利いたものが出るはずもない。死ねと言われるに等しい措置だった。


新入りの彼も、今まで、そうなった者を何人も見て来た。

ここでも同じことになるのでは、と、不安に駆られても仕方ないだろう。


しかし、その心配とは全く真逆……彼らは、実に手厚く扱われた。


常駐している『医療班』という者達によって、すぐにその場から連れていかれたために、彼らはその先を知らないが……職場の先輩たちに聞いて、唖然としていた。


曰く、ケガをした彼は、これから医者にかかり、薬などを出されて必要な措置を受ける。

そして、仕事に戻るのに問題ない状態まで治るまで、病棟と呼ばれる場所で療養を許される。その間の賃金は出ないが、これは仕方ないだろう。そして、万全の状態で仕事に復帰する。


今まで、ケガを理由にここを去った者は、誰もいないという。

ケガをしても、見放されることがないというのだ、この職場は。


☆☆☆


仕事が終わると、風呂に入る。


数十人が一度に入れるほどの大きさの風呂。たっぷりと湯が使われたそこに案内され、そこで体を清潔にし、じっくりと温まって疲れを取ることを許される。それも、毎日。

時間制限はあるが、これも新入り達には驚きのことだった。


その後は、朝と同じように、食堂で夕食だ。メニューも、大体同じようなものが並ぶ。

先輩たちによれば、毎日少しずつは違うので、飽きることはないとのことだった。


そうして部屋に戻ると、後は自由時間だった。

仲間内で話すもよし、さっさと寝るもよし。消灯の10時まで、時間の使い方は自由だ。


また、彼は……今日は来なかったが、週に1度、『物販』なるものが行われるのだと、同室の先輩たちに聞かされていた。


基本的に、この職場での賃金は日払いである。きちんと各自、鍵付きの自分の物入に保管して、紛失したりすることのないようにと言い渡されている。

その賃金を使って、買い物ができるというのだ。主に、嗜好品などの。

毎回品ぞろえは微妙に違うが、中には、酒や菓子まであるらしい。


食事で出されるよりも美味な食べものも並ぶのだそうだ。

彼らからすれば、食堂と弁当のあの3度の食事は、あれだけで十分に美味なのだが。


前回はうまい酒があったとか、燻製肉のいいつまみが買えたとか、色々と話がはずんでいる先輩たちの雑談を聞きながら、新入り達はその時を今から楽しみに思っていた。


今日1日で、ここがいかに素晴らしい職場なのかわかった。

いや、今でもどこか信じられないような気がするものの……実際に見て体験したのだ、受け入れないわけにもいかないというものだった。


そんな幸せな、明日も仕事を頑張ろうと思える余裕すら心の中に覚えたまま、新入り達は、朝と同じベッドの上で、清潔な――信じられないことに、昼、自分達が働いている間に洗濯されていたらしい――寝間着を着て、ぐっすりと眠りについた。

明日の朝、また皆そろって、寝坊もなく起こされるまで。


いつか、彼も誰かに聞かれた時、こう答えるのだろう。

ここは天国だ、と。




☆☆☆




そんな新入りの彼の1日だが……3つだけ、よく言えば気になった、悪く言えばけちがついたことが、その日あった。


1つ目は、これは特に問題というほどのことでは全くない。

彼らが過ごす工場から居住スペースまで、どうも『長方形』の……箱のような形のものが多く目についたことだ。テーブルやベッド、ロッカー、荷車……なぜか、その形のものが多かった。


もっとも、普通にそういう形のものがあるわけだし、そこまで気にするようなこともなかった。


2つ目は……ここに来るにあたってつけられた条件の1つ。

彼らは、魔法的な契約によって縛られる。聞けばそれは、仕事で不正を働いたり、雇用主に対して嘘をついたりできなくなるというものらしい。


普通に暮らし、まじめに仕事をする分には何も問題ないものだというが、やはり気にならなくはない。奴隷の首輪のようなものではないのか、と思えてしまうのも仕方なかった。


もっとも、すぐにそんな文句は出なくなったが。

この待遇でこれ以上を言ったらばちが当たる。そんなことよりまじめに仕事をしよう、そうすれば何も問題はないんだから。そう言って、皆気にしなくなった。


……本当に忘れた者もいるかもしれないが。


余談だが、悲しくもこういった考えを持てず、仕事で不正をしようとしたり、嘘をついてずる休みをしようとしたりした者も、残念ながらいないわけではない。

そういった者達は、不定期で行われる『人事異動』によって、二度と見かけなくなるのだが。


そして3つ目。これが一番、新入りの彼にとっては不思議というか、意味の分からないものだった。


夕方、もうそろそろ作業終わりの時間になる、という頃。

彼は作業場の端に、1人……小さな子供がいるのを見つけたのだ。


作業着も来ておらず、なぜか……ここでも『箱』のような意匠の、鎧のようなものを着た、10歳かそこらにしか見えない少年。それが、すたすたと歩いている。


どこか別の作業場に雇われている孤児あたりか、迷子になってここに来たのか、と思った新入りの彼は、やれやれと思いつつ、その子供に声をかけた。丁度少年は工場に入ろうとしていたので、何かあってはいけないという親切心と、仕事の邪魔をされたくないという苛立ちがあった。


その際、男職場の荒っぽい中で生きてきたためだろう、少々乱暴な、年下をしかりつけるような上から目線の言葉遣いになってしまった。


その子供は、何度聞いても、どこの職場から来たのかなどは答えず『いや大丈夫ですから』『迷子じゃないですって、あー、詳しくは言えないですけど』などと言うばかり。


一向に解決しないため、早く仕事に戻りたがった彼は、少々言葉遣いが荒くなり、語気も強くなった。こんなところを現場監督に見られれば、ざぼっていると咎められるかもしれないと。


正にその時、現場監督がそこに現れ……とっさに彼は、『このガキが迷子になってて』『全然言うこと聞かないもんで』といったようなことを言った。その子供の襟元を、猫をつかむようにつまんで持ち上げ、手からぶら下げながら。抵抗されないのをいいことに。


そんな彼は、その直後……現場監督の顔色が青くなり、直後に赤くなり、そして自分めがけて鉄拳が繰り出されたのを見たのを最後に、意識を手放すこととなった。



後になって彼は、現場監督から、こう言われた。理由は、教えてもらえなかった。




『詳しくは話せない。お前も、今日のことは誰にも話すな。そして……体のどこかに、『箱』の形のアクセサリーをつけている者には、絶対に逆らうな。手を出すな。ここで働き続けたいならな』





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ