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転生箱道中 ~ダンジョン異世界で僕はミミックでした~  作者: 和尚
第4章 王国と帝国という名のエリア
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第76話 裏ボス、登場



……想像以上に苦労した。


第9階層での、お目当ての『カースエメラルドコブラ』の討伐。

これが、ものすんごく大変だったのだ。


『カースエメラルドコブラ』は、普通のアオダイショウとかの蛇よりも少し大きめな、ジャングルでハリウッド女優が猟銃持って戦ってそうな感じのコブラだった。


全身が透き通ったような緑色の宝石……エメラルドでできていて、赤くきゅぴーんと光る眼が、薄暗い中で不気味だった。


そんな奴は、大して大きくもない体に反して、驚異的な戦闘力を誇っていた……というわけではない。

むしろ、戦闘力は全然大したことなかった。



★種 族:カースエメラルドコブラ

 レベル:3

 攻撃力:39  防御力:37

 敏捷性:102  魔法力:17

 能 力:通常能力『毒牙』

     希少能力『脱兎』

     希少能力『気配遮断』

     特殊能力『光学迷彩』



こんな有様である。


というか……弱かったという以前に、戦っていない。

それが、『手こずった』理由の1つでもあるんだけど。


逃げるのだ、こいつ。


スキル見るとわかるように、こいつは逃げる隠れるに特化したスキル構成になっている。


『脱兎』で逃げ足が強化されている上、『光学迷彩』で姿をくらまし、『気配遮断』でさらに見つけづらくなる。

油断するとあっという間に、いや油断しなくても普通に見失う。


かろうじて、フォルテとリィラのセンサーでどうにか見つけられるレベルの隠密能力。しかも、あちこちに岩や瓦礫が散乱する第9階層で、ゴーレムたちが普通に跋扈する中、他の魔物等に比べて決して大きくはないサイズの蛇を追いかけるのは、すさまじく大変だった。


素早く動いて、狭いとこに入り込み……魔物たちの間を縫って視界からあっという間に消えるんだから……まさか、こんな形で苦戦させられる敵が現れようとは。


しかしそれでも、さんざっぱら逃げ回られた末に、どうにか……方向転換で一瞬動きが止まったところを狙って、リィラの針の孔を通すような狙撃で仕留めはした。


仕留めても特に、膨大な経験値が入ってくるとか、そういうことはなかったんだけども……とりあえず、クエストの攻略条件の1つはこれでCLEAR……したと思って気を抜いた、次の瞬間。


行き着く暇もなく……もう1つ、特大のトラブルというかハプニングというか、が舞い降りた。



『特殊なクエストが発生しました』


『クエスト『クイーンダイアモンドコブラを討伐せよ』が発生しました』



……ゲームとかで、たまにあるよね。

小さいというか、子供のモンスターを討伐したり、卵を盗んだりすると、親モンスターが襲い掛かってくる、とかいうイベント。


恐らく、さっきまで『●●●』だったこのクエスト……それに名前のある『クイーンダイアモンドコブラ』。これが、『カースエメラルドコブラ』の親だったんだろう。


子供を倒されて怒り心頭の親が、こうして襲い掛かってきたわけだ。



★種 族:クイーンダイアモンドコブラ

 レベル:63

 攻撃力:675  防御力:629

 敏捷性:366  魔法力:595

 能 力:希少能力『猛毒牙』

     希少能力『鬼子母神』

     希少能力『気配遮断』

     希少能力『自動修復』

     固有能力『金剛防御』

     特殊能力『光学迷彩』



突如として虚空から滲み出すように現れたその母蛇は、大木のような太さの体をくねらせ、文字通り怒りに鎌首をもたげて……って強ぇなおい!? レベル63!? スキルが6つ!?


あのグレーターデーモンを除けば、間違いなくこれまでで最強の敵だろう。

つか、レベルも覚醒後の『バルバトス』にちょっと及ばないくらいだし。


結構洒落にならんレベルの攻撃力に、僕らに並ぶ規模の防御力。敏捷性も魔法力も高い……しかもそこに、いくつものスキルによる追加効果があるときた。


さすがは(多分)このダンジョンの裏ボス……ってとこか。

これは苦労しそうだ……マジで。


☆☆☆


蛇は全身が筋肉の塊である。

前世でそんなことを聞いたことがあったけど……まさにそんな感じだ。


……どうみてもこいつの体は、肉でできてはいないんだけども。


僕らの目の前で、巨体に似合わない素早さで動く……全身が金剛石の大蛇。

全長にして20mにもなろう巨体をくねらせ、時に噛み付きで、時に魔法で、時に尻尾や胴体での殴打で、時に巻き付いて締め付けでこちらを殺しつくさんとしてくる。


……と、思う。


え、どういう意味かって?


「っ……そっちに行ったです!」


「え!? どこ!?」


「真上を思いっきり殴れ、シャープ!!」


僕はとっさに、フォルテに言われた通り、右腕を即座に変形させ……跳躍しながら真上に突き出した。すると、伸びきる前に、何かに拳が『ガギンッ!』と硬質な音を立ててぶつかった。


その瞬間、僕が『パイルバンカー』を作動させて追撃を加えるのと、『光学迷彩』のスキルを解除した『クイーンダイアモンドコブラ』が姿を見せるのは同時だった。


―――GYAAAAA!!


……これだよ。これが面倒くさい。

スキル『光学迷彩』……完全に透明化するスキル。『カースエメラルドコブラ』も使ってたけど……バリバリ戦う気の奴が使うと、こっちもホントに面倒だ。


このスキルのおかげで、こんな巨体であるにも関わらず、ちょくちょく見失う。

そしてそのたびに、対応がほぼ後手に回ってきついことになる。


センサーで察知できるフォルテとリィラがいるからどうにかなってるけど……ほら、また消えた。こんな感じで、薄暗くて見えづらいこのダンジョンの中で、さらに察知に困る擬態能力を駆使して、毎度毎度不意を突いて攻撃してくるのだ。


正面から戦っても手こずるであろう攻撃力と防御力を持ってるってのに。


加えて、その攻撃のうち……牙を使ったものは、スキルによって猛毒の効果を帯びる。


幸い、と言っていいのか……こっちのメンバーは、僕を含め半分が無機物。毒は意味ない。

牙に気をつけなきゃいけないのは、レーネ達……生身の3人だ。3人とも気を付けて動いてるし、『箱入娘ベイビーズガード』も常時発動させてるけど……正直、やはり700近い攻撃力を防ぐには心もとない。普通に食らうだけでも大ごとになりそうだし。


それにこいつ、これだけの巨体で縦横無尽に動き回るから、小石とか瓦礫の破片とかめっちゃ飛び散るし……『箱入娘ベイビーズガード』がなかったら、レーネ達はけっこうな数の傷を負っていたかもしれない。さっきから、破片が飛んでいくたびに発動してるから。


……って、言ってるそばからまた!


今度は牙ではなく、鞭みたいにしなって襲い掛かってくる……尻尾。

狙いは……レーネか!


「レーネ!」


「わかった! 来て!」


言うと同時に跳躍し、レーネの元に飛んでいく僕。

飛びながら……戦斧に変形する。


それをキャッチしたレーネは、その勢いのままぐるんと一回転し……その回転の勢いを乗せて、襲ってくる大蛇の尻尾に思いっきりフルスイングをかました。


レーネの攻撃力に僕の攻撃力が合わさった一撃は、微妙に下から上に掬い上げるような軌道で放たれ……攻撃の軌道をずらすことに成功。


レーネと、その背後にいたビーチェ、レガートの頭の上を素通りする形になった。


さすがに威力が威力だっただけに、レーネもちょっとよろけたけど……すぐに体勢を立て直す。


すると今度は、蛇は3人(と、僕)を囲むように、円を描く感じで体を……おい、まさか。


直後、急激にその円が狭まり始め……やっぱり、締め付けか!

大蛇系モンスターにとって、毒牙以上にお家芸的な攻撃。絞め殺して、丸のみにする……王道のパターン。


こいつの攻撃力での締め付けはさすがにまずい。しかし、サイズ的に今から3人全員が外に逃れるのは難しい……となれば。

僕は、大斧モードを解除して跳びあがり、『機人化』を解除。さらに、サイズも開放した。


広い部屋だったからできたことではあるけども……プレハブサイズの『王宝牙棺キングギフト』に戻った僕は、その巨体をつっかい棒にする感じで、レーネ達をガード。


その隙にレーネ達が、下の方から潜り抜ける感じで脱出し……僕はそのタイミングで、素早く『機人化』し、できた隙間を利用して脱出した。


脱出しながら、腕を片方ガトリング砲に変化させて撃ちまくったけど……ダメージらしいダメージはなし。傷一つついてないな。


ふぅ……危なっ。ぎしぎし言ってたよ……僕の体が。

素の能力値に加えて、スキルによる補正こみのこいつの攻撃力はホントに侮れないな。下手したら、封印解除前のグレーターデーモン級くらいあるんじゃないかな?


しかし、隠密性、猛毒、攻撃力……それらももちろん脅威だけど、一番はやはり防御力だろう。


金剛石――ダイヤモンドは、硬度10、最も硬い物質として前世で知られていた。

しかし、硬くはあっても、衝撃に弱い。結構簡単に割れる……という性質も持っている。


だが、目の前のこの蛇は、そんなもん知ったことかとばかりに、素の防御力と、『金剛防御』なる固有スキルの力で、全てを防ぎきっている。


僕のガトリング砲やパイルバンカーも、リィラのライフルも、レーネやビーチェの打撃斬撃も、レガートの魔法も、フォルテのキャノン砲やレーザーブレスすらも効かなかった。


全く効いてない、ってわけじゃないんだけど、ちまちまとしたダメージしか見込めていない。

しかも、相手が『自動修復』持ってるから、何か回復されてるっぽいし……このままじゃ、いつになったら倒せることか。


普段、僕らの戦いは、ステータス頼みで力押ししてる部分が大きい。

だからこそ、それが通用しなくなる……つまりは、普通に硬くて強い敵が相手になるときつい、ってのを突き付けられたみたいに思える。


反省は後でするとして……このまま長期戦になると、先に疲労が蓄積したこっちが動きが悪くなり、悪手を打ってしまう可能性が高い。


と、なれば……早期決着しかない。

そのためには……手段は、1つだろう。


お披露目と行こうか……『進化』してから初の『アレ』をやる。


普段の状態では……練習しようにも、できない。スキルが発動しない。


しかし今は……強敵を前にしているからだろうか? 発動のための『条件』も、満たされている……って、本能的にわかる。『今ならできる』と。


あの時……『グレーターデーモン』と『勇者』を前にしたほど危機的状況じゃないけど……そこは多分、僕らの成長した分、っていう感じじゃないかな。ハードル下がってるっぽい。


ともあれ……行きますか。


「フォルテ! リィラ!」


「おぅ!」


「はいっ!」



『『『無機物合体!!!』』』





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