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第54話 嫌な予感



「と、いうわけで会議です。皆さん、忌憚のない意見をガチでお願いします。ホントに。マジで」


「何をまたおかしなことを……って言える状況じゃねーんだな、コレ見ると」


僕が『インベントリ』から取り出し、目の前に広げて見せた『黙示録』。

そこに記されている内容は……ホントにやばい『予定』。


放っておくと……ほぼ間違いなくこの町が、少なくとも、『スラム街』が戦火に包まれる。



≪挑戦可能クエスト一覧≫


(一部略)

・『帝国軍の夜襲』  Count ≪16:33:09≫

・『王都エイルヴェルを防衛せよ!』

・『スラムの民達を助け出せ!』

・『帝国軍を撃退せよ!』

・『スラムを脱出せよ!』

・『帝国軍主力・魔物部隊を倒せ!』

・『帝国軍の襲撃部隊を殲滅せよ!』

・『王都エイルヴェルへ進撃せよ!』

・『王都エイルヴェルを制圧せよ!』



「……ここに浮かんでて、しかも数が徐々に減っていっている、いかにも不吉な数字は……カウントダウンと見て間違いねーだろうな」


「うん……この時間からすると、0になるのは……」


「本日深夜……日付が変わるくらいなのです」


時間ないな、おい!? 今日中にここに並んでる事態に備えなきゃいけないのか!?


最悪だ……物資も何もかもろくにないところに、この凶報……どうしろってんだ?

いや、まずホントにそこ考えないとな……。


ぶっちゃけた話、このままここにいれば、まず間違いなくこの事態……『帝国軍』とやらがこの王都まで攻めてくるのに巻き込まれるわけだ。

そうなれば、生まれるのは……普通に考えて、地獄絵図。


当然ながら、廃教会も巻き込まれるだろう。


この世界では、戦争で相手国の村や町に攻め込むとなれば、ほとんどイコールで略奪が起こる。

国際法なんてものは整備されていないため、昔ながらの原始的なやり取りが普通に行われる。財は奪う、女はさらう、敵と男は殺す……って感じで。


見た目通り……って言ったら失礼だけど、財宝も何もない建物だ。襲撃に乗じた略奪みたいなことをするうまみはないんだけど……だからって安全ってわけじゃないよなあ……。

年齢にばらつきはあるけど、女性もいるし……。


かといって、男手の皆さんで、帝国軍とやらを撃退、ないしココを防衛できるかと言えば……ちょっとそれは難しいだろう。

軍、っていうくらいだから、いっぱい来るんだろうし……なんか『魔物部隊』とかいう不穏な単語もあるし……あの人たちで、あの教会を守り切るのは、多分無理だ。


もと私兵だけあって、1人1人の実力は、一般人以上はあれど……同格であろう、帝国の兵士たちを相手取って戦えるかと問われれば、否だろう。

せいぜい、同数を相手取って辛勝するのが精いっぱいだと思う。


レベルやステータスを見ても、普通の兵士の域を出ない人たちばかりだったしなあ……。


となれば、ここで戦って抵抗するっていう選択肢は取れないだろう。

例え、僕らが加勢したとしても……相手の規模がわからないから確かなことは言えないにしても、被害ゼロで守ることはできないはずだ。


そもそも、仮に教会を守りきれたところで、終わったころにはその他全部が滅茶苦茶になってるだろうし……今まで通り住み続けるのは不可能になるんじゃないかな?


今まで、各自の努力と、不定期で開かれる闇市に頼って物資とかを調達してたけど、今後はそれもほぼ不可能になるだろう。加えて、治安はより悪化する。

もっと表立って、略奪なんかが横行するようなことにもなりかねない。


それこそ、町に入られて戦闘が起きる前に、帝国軍とやらを撃退するようなことでもできなきゃ……とか考えていたところで、


「あの……ちょっといいでしょうか?」


と、リィラが手を挙げた。うん、どうした?

見ると……少し、不思議そうな顔をして、こっちを見てきている。


「その……帝国軍、でしたか? 話の、というか、この本の通りであれば、攻めてくるという話でしたが……本当に来るのでしょうか?」


「そりゃまあ、そう書いてあるし……」


いやまあ、気持ちはわかるけどね? こんな、なんていうか……胡散臭い感じに見えなくもない『予言』じみたもんを信じなきゃいけないってのは、普通に考えればちょっとアレだ。


しかし、実際これに書かれたことは、今までことごとく当たっている。

いわゆる『奇跡』って奴なんだろう。この本の未来予知機能は本物であって……


「ああ、いえそうではなくてですね……聞く限り、現在行われているこの戦争とやらは、この国……『王国』の方が優勢なのですよね? 特に、内側に攻め込まれたなどということもない」


「……そうみたいだけど……それが?」


と、レーネが聞きかじりの知識を肯定したところで……ビーチェと、それに一瞬遅れてレガートが、何かに気づいたように目を細めた。

心なしか、表情が怪訝そうな感じになっている風にも見える。


それに気づいているかどうかはわからないけど、リィラは続ける。


「……なのに、こんな……王国の中枢部と呼んでいいような場所に、敵の軍勢がやってくるというのは……ちょっとおかしくないですか? 逆に、攻めている側である王国の軍が、帝国の中枢に攻め込むのならまだしも……帝国軍は、自国の領内に攻め込まれている有様と聞いたです」


……そういやそうだな?

たしかに、ここ『王都』は……王国の中枢も中枢。ここまで攻め込まれたなんて状況があればそれは、ほぼ負けに等しい。


地球の戦争でも、『首狩り作戦』なんてもんが時と場合によっては執行されるくらいに、中枢部を叩かれるというのは、1つの軍として、国として致命的な事態である。

頭をつぶされれば、手足として動く軍隊も脆いものになってしまうのだ。


生前、軍記・戦記物のネット小説もよく読んでいた僕には、よくわかる。

なのに、今リィラに指摘されるまで……このことに気づけなかった。


……中途半端に、この『神代の遺産』とやらに慣れてきてしまっている弊害だろうか。『黙示録だから』で考えることをやめてしまっている。ちと反省だなこりゃ。


「……2つ、おかしいわね」


と、ビーチェ。


「1つは……帝国の軍がこんなところにどうして来れるのか。もう1つは……」


そこで、窓の外……大通りの方を見るビーチェ。

視線の先では、朝と同じように、兵隊さんたちが『志願兵募集』の掛け声を響かせている。


「王国軍の対応。コレを踏まえて考えると……どうにも胡散臭い」


「同感だ、ビーチェ」


「……胡散……臭い?」


「志願兵の追加募集。戦時下においては珍しいことではないが……このタイミング、募集内容……まさか……!」


どんどん険しくなる、レガートとビーチェの顔。


そして、ビーチェがぼそっと一言。


「盾、いや……餌、か」


「? どういうこと?」


それに対する答えよりも先に、


「お、お姉ちゃん、お姉ちゃんっ!」


どんどんどん! と音を立てて、部屋の扉がノック……どころでなく叩かれる。


なんかすごい慌ててる感じの声だ。聞き覚えがあるような……?

慌てて急ぎつつも、いきなり扉を開けて入ってこなかったことは評価点かもしれないけど……ビーチェが『誰?』って問いかけるなり、我慢しかねたように入ってきた。


……ああ、思い出した。

一番最初に……僕らに『薬を分けてほしい』って言ってきた、あの子だ。


その子が、さっきも言ったが何かすごく慌てた様子で、


「どうしたの? そんなに慌てて……」


「え、えっとね……裏に、物影に……血だらけで倒れてる女の子がいて……でもまだ生きてて、助けてって……どうしよう!」





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