表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/118

第49話 検証と最下層


とりあえず……こんな、何ていうか、タイムリーな感じで変化せんでも。


マジで『杯を交わして云々』な感じの能力が開花しちゃったよ。それも、そういう自由業的な雰囲気とはかけ離れた感じの美少女2人に。


レーネとビーチェの新しいスキル……その名も『絆の杯』。


どうやら、『契約』と『使役術』を合わせて、さらに上位互換にした能力のようで……関係性を指定できる上、受けられる恩寵がより強力で、より『幅広い』ようだ。


何せ……レーネとビーチェのみならず、その子会社的に『契約』を交わしている――いや、以後は『杯』を交わしている、というべきか?――僕らまで、相互に恩恵にあずかっている。


わかりやすい例を言えば……僕が、リィラのスキルである『人化』の恩恵を受ける形で、『擬人化』を習得した。

恩恵のルートが、リィラ→ビーチェ→レーネ→僕って感じで、遠くても生きる。


加えて、強化された分の恩恵の分、ステータスも上がってたので、スキルや能力の検証を兼ねて……もうちょっと地下4階を回ることにした。


そのまま、結局半日を費やして検証を進めた結果……色々分かったことがある。

全部並べようとするとけっこうな手間と量になるので、ざっと説明でも。


まずは、僕。


レベルと能力値については置いておく。

さして変化なかったしね。レベルアップによるもの以外は。


まず、これ以降の全部の仲間に言えることではあるんだけども……特殊能力『杯』。これが、今回僕が新たにスキルだ。

多分、レーネ達にプラスされた特殊能力『杯の絆』の対になる能力だ。


共鳴ハーモニクス』を含め、他にもいくつかの能力が消えている……けど、それが失われた感じがしないことを考えると、テイム関係の能力の一切合切はここに統合されたんだろう。おそらくは……より強化された形で。


しかしながら、他の新しい能力……てっきり僕も人型になれると思った『擬人化』や、一番気になってた『合体』は……何の音沙汰もなし。

能力としてそこにあるのに、使えない。何も起こらない。


……僕がまだ未熟……ってことなのかね? まあいいや。


続いて、フォルテは……『杯』以外はほぼ変化なし。


レーネとビーチェは、さっき言った通り新しいスキル『絆の杯』を手に入れている。効果についてもさっき説明した通りだ。

なお、実はその説明は……ちょっとした実験に基づいた検証結果を含んでいた。


何のことかというと……こんな感じ。


★名 前:レガート・ディミニー

 種 族:エルフ

 レベル:60

 攻撃力:121  防御力:117

 敏捷性:189  魔法力:233

 能 力:希少能力『精霊魔法適正』

     希少能力『悪魔特効デビルスレイヤー

     特殊能力『杯』


なんか、仲間外れ的な空気になってるレガートがアレだったので……こっちから提案して『契約』してみました。契約相手は、付き合いの長さでレーネに。


その結果、『杯』の補正による強化が……すごいことになったな。

軒並み大幅に上がってるよおい。特に、敏捷と魔法がけっこうなもんだ。


しかも、今後の数値上昇にも補正がかかるとなると……むしろこれからが本番だ。


何気に今まで触れてこなかった気がするけど、僕らモンスターも、レーネ達みたいな『ヒト』に分類できる種族も、ある程度のレベルで『成長限界』に達する。

そしてそのレベルは、実は、個人の資質によって異なるそうだ。


僕やフォルテは、普通に10とか30とかのきりのいいレベル――進化可能なレベル――まで進んで進化してたけど、個体によってはそれより前……7とか、27とかで止まることもあるんだ。

……そういや、だいぶ前に、何かのクエストの報酬で『成長限界上昇』とかが出た気がした……アレは、この限界レベルを底上げするものだったのか。


で、そのレベルに達し……かつ、十分な潜在能力がある者のみが次の『位階』に進めるわけだけども……人間や亜人種族も大体同じだそうだ。

種族的に、進化することがそもそもない者もいるそうだけど。


人間は、進化しない。

エルフは、進化する。

吸血鬼は、進化する。

その他、獣人とか、亜人は大体進化するらしい。


つまり、レガート……は、もちろんのこと、レーネやビーチェもこの先があるってことだ。

純粋に楽しみである。果たして彼女たちは、どういう『進化』をするのかね?


まあもっとも……『亜人』が進化できるレベルは、モンスターが進化するより高い場合がほとんどらしいし、種族によっては決まっていない場合もあるらしい。

もちろん、潜在能力的に進化できない人もいるそうだけど……何となく、このメンツは大丈夫だと思える。根拠はないけど。


さて……話を戻そう。


そんなわけで、レガートやレーネ、ビーチェは強くなった。もちろん、スキルだけでなく、能力値も。


で、最後に残ったのは……リィラだ。

彼女もまた、スキルのは変化はなかったものの……


★名 前:リィラ

 種 族:武装アーマード傀儡パペット

 レベル:28

 攻撃力:329  防御力:230

 敏捷性:222  魔法力: 88

 能 力:希少能力『連携強化・中』

     固有能力『臨戦・射撃』

      派生:『格納庫』『狙撃』『連射』

         『矢弾製造』『自動装填』

     特殊能力『変形トランスフォーム

     特殊能力『人化』


魔法力こそ大きく劣るものの――いや、コレでも一般基準から見れば十分すぎるくらい高いんだけど――残り3つの能力は、レベル上げの効果もあってがっつりと上がっている。

僕やフォルテには及ばないものの、十分に一戦で戦えるレベルだ。


よくよく見れば、僕やフォルテが同じくらいのレベルだった頃と比べて、能力が低い。

もしかしたら、成長が早い種族の弊害とか、かな?

でもまあ、決して不足があるわけじゃない。十分強いと言える。


今後、戦い方をさらに洗練させていけば、もっとすごいことになっていくだろう……しかし彼女、何気にまだ生後1週間たってないんだよね。すごい話だ。


成長しやすい種族+地球仕込みのパワーレベリング+『黙示録』で経験値UP……の結果か。

それにしたってコレは……本人の潜在能力の高さもあるんだろうけど。


……潜在能力、ね……レーネやビーチェも高かったな。

ひょっとしてパペット系の魔物って、潜在能力が高い主人の元に生まれると、強くなりやすいとかそういう因果関係が……いや、よそう。想像しても、確認のしようがない。


☆☆☆


十分にならしも終わったところで……いよいよもって地下五階……最下層だ。


一応もう一回、地下4階のボスであるあの骸骨をきちんと倒してから、出現した地下への入口へ入った……その直後から現れ出す、アンデッドの軍団。

しかも、まだ降り切ってないうちから……足場の狭い階段で襲って来とる。


何コレ、マジで殺しに来てるってこと?


ちょっとびっくりしつつも、僕らは迎撃に移った。階段を下りながら。

勝手が違う分ちょっと戸惑いはあったけど、まあ、どうにかなる範囲だった。


そこそこ大変だったけど、やってることは変わらない。なので、特筆する点はあんましない。

魔物の種類も、地下4階とほぼ同じだったし。


そうして戦っているうちに……わかったことが1つ。


僕らが降りていた階段は、どうやら巨大な円筒状の空間の外周に沿って設置されている『螺旋階段』のようで……そこを、下に進もうとすればするほどに、魔物が出てくるのだ。


しかも、暗闇に強いビーチェに頼んで、階段の手すりから下を覗き込んでもらったところ……不自然に、先が見えない空間が広がっているらしい。


恐らくは……この螺旋階段そのものが、最下層、あるいはその代わりなんだろう。

一番下が、『吸血鬼』であるビーチェでさえ見えないのは、降りきるとそこにボスがいるから。


このダンジョン全体のボス――そのまんま『ダンジョンボス』が、だ。


幸いにして、階段を3分の2ほど降りたところで、魔物はもうでなくなり……その階段の最後は、広い踊り場になっていた。

最後の戦いが目前だから休め、とかいう意図なんだろう、と勝手に解釈する。


ご厚意に甘える形で適度に休み、矢を補充し、全員の準備が整ったところで、進む。


一番下まで行くと……全員が降り切ったところで、階段が途中から崩れ落ちた。


突然のことに驚く僕たちの目の前で、高さにして10m分くらいの階段が崩れて……そのまま細かく砕けて、砂になって消え去った。

そしてさらにその直後、頭上に霧がかかって、その無事な階段部分が見えなくなった。


まるで、濃霧の天井ができたみたいだ……いや、実際天井なんだろうな。

この濃霧が、今までのボス部屋にあった扉の代わりってわけだ。多分、後戻りはできないんだろう……空を飛べても、突破できないものだと思う。


まあ、もともとそんなつもりはなかったわけなので、別に不都合もないんだけど……


そして……気を取り直して、部屋の中央へ向き直ると……そこに、いた。

一目でわかる『ダンジョンボス』が、そこに鎮座していた。


「……ドラ、ゴン……?」


「よく見ろ、骨だけだ」


ファンタジー世界において……あまりにも有名な魔物。翼の生えた、炎を吐く巨大トカゲ。

しかし、本来重厚な鱗や筋肉に覆われているその体は……目の前で、飾り気のない白骨をさらしていた。死んでいるわけではなく、動いているが。


自分の縄張りに侵入した僕らの存在を鋭敏に察知し、ゆっくりとその体を起こす。

その全長は、ゆうに数mはあるであろう。骨だけだというのに、その手足の強靭さはいささかもか弱さ頼りなさを感じさせず……ただの空洞だった眼窩の奥に、ぎゅんっ、と光がともる。



★種族名:スケルトンドラゴン

 レベル:45

 攻撃力:433  防御力:386

 敏捷性:213  魔法力:354

 能 力:通常能力『打撃耐性』

希少能力『神聖属性耐性』

     希少能力『呪怨魔法適正』

     固有能力『龍牙兵精製』

     特殊能力『ダンジョンボス』



これまで戦った敵の中で、間違いなく最強といっていいステータス。

アークデーモンすら上回るであろうそれは……まともな神経の持ち主なら、戦うこと自体が自殺行為だと言うかもしれない。


しかし、逃げ場なんてものは、こいつが動き出し、『ボス戦』が始まってる以上どこにもないので、考えるだけ無駄である。


骨しかなく、声帯も当然ながらないはずの『スケルトンドラゴン』。

そいつが、どういう原理か『オォォォオオオォォォ―――ッ!!』と、底冷えするような雄たけびを上げたのを合図に……僕らの決戦は始まった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ