第47話 リィラ、第2進化
さて、今回の『エリートスケルトンナイト』撃破、およびそれまでの地下3階での戦いにより、皆けっこうレベルが上がったわけだけど……やはり一番の目玉は、コレだろう。
★名 前:リィラ
種 族:絡繰傀儡
レベル:30
攻撃力:180 防御力:110
敏捷性:100 魔法力: 60
能 力:希少能力『射撃適正』
希少能力『狙撃』
特殊能力『格納庫』
特殊能力『自動装填』
特殊能力『変形』
備 考:進化可能(保留中)
候補① 殺戮傀儡
候補② 魔法傀儡
候補③ 武装傀儡
レベル30に達したリィラの、2回目の進化。
すでに皆で(無論、リィラ本人を含む)で協議の上……進化先は決めてある。
候補の3番目、武装傀儡。コレに決めた。
①と②は、前に没にした2つとかぶってたのだ。接近戦特化と魔法特化で。
今のリィラの持ち味――物理攻撃主体で、近距離から遠距離まで対応可能――を生かそうとすると、必然的に③が一番いい。
今の種族である絡繰傀儡の、いわば上位互換なので。
ただし懸念としては……あんまり名前を聞かない魔物なので、ほとんど情報がないことか。
唯一コレについて知っていたフォルテも、上位互換云々と、武器を使って戦う物理主体の魔物だ、ってことくらいしか知らなかったし。
ともあれ、消去法で決めるにしてもどの道こうなるので……不安がるのもほどほどにして、進化開始。
リィラが青い光に包まれ、その輪郭を急激に変化させていき……
その光が収まると、そこには……
「……終わったようですね。さて、どのような……皆さん、どうしたですか?」
……ゴスロリ服に身を包んだ美少女が立っていた。
僕ら一同。唖然。
……え、何だコレ? 誰? ……リィラ、だよね?
あ、ありのまま起こったことを話すぜ?
僕の目の前にいた、マネキンとフィギュアの中間かな、ってくらいの見た目の絡繰傀儡が、光に包まれたと思ったら美少女になっていた。
何を言っているのかわからないと思うg「皆さーん? 戻ってきてくださいです」……はっ!?
……取り乱していたようだ、落ち着こう。
落ち着いて、目の前の現実をきちんと認識しよう……どれどれ。
さっきも言ったとおり、そこに立っているのは……美少女だ。ゴスロリの。
ただ、よく見ると……関節部分なんかに、無機物的な見た目のジョイントが見られる。コレは……ラブコメとかで出てくる、ロボット娘みたいな感じに近い……か?
いや、もうそれそのものかもしれない。ロボ耳とかはないけど、ガイノイド、って奴だ。
なるほど。これが、『人形』とか『傀儡』の要素なのか?
……それにしたって、首から上は……完全に人間の美少女にしか見えないぞ?
それに、手足だって、ジョイントは見えるけど……質感とか、完全にではないにせよ、人間の肌にかなり近い気がする。見た目じゃあ、ぱっと見わからないくらいだ。
『不気味の谷』なんてものを軽々飛び越え、きちんと『かわいい』と認識できる姿になっているリィラは――っとと、そうだ、ステータス確認しなきゃ。
ひょっとしたら、この違和感の正体がわかるかもだし……鑑定。
★名 前:リィラ
種 族:武装傀儡
レベル:1
攻撃力:252 防御力:200
敏捷性:196 魔法力: 78
能 力:希少能力『連携強化・中』
固有能力『臨戦・射撃』
派生:『格納庫』『狙撃』『連射』
『矢弾製造』『自動装填』
特殊能力『変形』
特殊能力『人化』
……どこからツッコめばいいんだ?
まずステータス……またすげー上がったな。
でもまあ、コレはいいとしよう。よくはない気がするけど……モンスターの進化に伴って、能力が爆発的に強化されるのは珍しくない。僕やフォルテもそうだったし。
問題はスキルだ。
最早別物と言ってもいい内容になってる。見覚えあるの『変形』だけだ。
見る限り……新しく出てきた、『臨戦・射撃』とやらに、射撃系スキルが全部統合された……ってことでいいのかな? 僕の『悪魔のびっくり箱』みたいな、派生ありの特殊スキルか。
『派生』のところを見ると、それっぽい。加えて、初見のスキルもいくつかあるし……。
つか、『矢弾製造』……矢とか弾丸を自前で作れるようになった、ってことでいいのかね?
そして一番注目したいのは……何といっても一番下のコレ! 『人化』!
これもしかしてアレか!? 人間モードに変身できる奴か?
そのなんかこう……肌の質感とか雰囲気とかが人間っぽいのはコレのせいか!?
「やーん、何コレめっちゃかわいいんだけど!?」
「えーちょっと、えー!? うそうそ、リィラだよね!?」
「わぶっ!? ちょ、え……れ、レーネ!? ビーチェ!? ど、どうしたですか!?」
あんな風に、女の子2人がテンション上がって抱き着くのも仕方ないレベル。
身長小さ目、顔幼めで、いいとこJCって感じの見た目だから……萌え的、マスコット的なかわいさがあり……それがツボったか。
そんななりして、ステータスは今や、レーネ達超えてんだけどね。がっつりと。
手加減し損ねて壊しちゃわないかはらはらしつつ見てた頃が懐かしい。数日前だけど。
今度はリィラの方が、スキンシップするなら力加減に気を遣わなきゃいけなくなったか。
☆☆☆
その後、色々と検証を重ねてみて、さらにいくつかわかったことがある。
まず『臨戦・射撃』についてだが、これには『射撃適正』とかの効果もやはり含まれているようで……射撃の威力や、狙いの正確さ、そういった武器の扱い方が上手くなっていた。
普通のクロスボウを使わせても、自分の体を変形させたクロスボウを使わせても、僕が変形したクロスボウを使わせても、同じように補正で強化され……一定距離までなら、ほぼ百発百中といっていい命中率と、鋼鉄の鎧も軽々貫通する攻撃力を発揮した。
加えて、自分の体を変形させられる『武器』のレパートリー。これが増えていた。
以前までは、片腕がクロスボウになるだけだったけど……今は両腕が変形。
どちらもクロスボウになるんだけど……なんとその変形形態が1つじゃない。
普通のクロスボウはもちろん、長距離狙撃用の強力なタイプや、連射重視で一度に何発も撃てるタイプ、そして巨大弓なみに威力があるが、両手でないと扱えないタイプの計4タイプがあり……しかもそれらは、最後の1つ以外は両腕どちらも変形できる。
バリスタだけは、右腕が変形して左腕で調整しつつ撃つ、って感じの使い方しかできないようだけど……それでもじゅうぶんだろう。
そして、この腕変形の他にもいろいろあるんだけど……今は省略。多いから。
おまけに、僕が作った外付けの武器まで使えるっぽいので、戦術の幅が広がる広がる……。
加えて、こちらも新しく加わった『連携強化・中』だけど……名前通り、味方とうまく連携して戦うと、色々補正が入るようだ。攻撃力とか、意思疎通とか。
そして、注目の『人化』だけど……これは、色々な効果があった。
まず、やはり人に近い見た目になってるのはコレが原因らしく、リィラが意識してコレをOFFにすると、以前までのそれに近い見た目に戻った。
人間にあんまり似せていないアンドロイドが、ゴスロリ来てる感じ。違和感が酷い。
発動するかしないかで、別に戦闘能力に差はないし……そのほかにデメリットもないので、せっかくだから使っておくことになった。
今後、リィラの基本フォルムは、ガイノイドってことで。
そしてこのスキル……デメリットはないけど、もう1つすごいメリットがあった。
なんと、コレを使うとリィラは……『味覚』や『嗅覚』といった、生物らしい感覚を持てるようになるらしく……ものを食べれば味がするし、匂いもわかるそうだ。
何それ、めっちゃうらやましい。
最近、皆が料理とか美味しそうに食べるから、だんだんと人間だった頃が懐かしくなって、その方面の欲求が高まってた僕からしたら……すごく欲しい能力だ。
しかしながら……そう思ってすぐに、ミューズに相談して『『人化』ってスキル手に入らない!?』と聞いてみた僕だけども……無情なことに、『無理です』という返事が返ってきた。
どうも、ミューズが時々やってくれる、僕への報酬の融通を利かせるアレは、多少報酬の方向性を変えたり、豪華さそのものをする感じで行うのが限度らしく……全く方向性の違う能力とかを引っ張り出してつけたりすることは無理だそうだ。
少なくとも、今は。
がーん、である。ちくしょー。おいしいご飯ー!
世の厳しさを噛みしめながら、人知れず涙をこらえていた僕――目、ないけど――だけども……その時、僕はまだ知らなかった。
それから数日とたたない内に、それも含めて、事態が急展開していくことを……。




