第45話 リィラの頭脳と記憶と性格
★名 前:シャープ
種 族:変幻罠魔
レベル:36
攻撃力:379 防御力:454
敏捷性:390 魔法力:378
能 力:希少能力『共鳴』
希少能力『悪魔特効』
固有能力『財宝創造』
固有能力『変身』
特殊能力『換装』
特殊能力『変形』
特殊能力『悪魔のびっくり箱』
派生:『無限宝箱』『絡繰細工』
『奇術道具』『箱庭』
★名 前:フォルテ
種 族:銀悪魔像
レベル:33
攻撃力:366 防御力:400
敏捷性:356 魔法力:499
能 力:通常能力『擬態』
通常能力『上級魔法適正』
希少能力『神聖魔法適正』
希少能力『共鳴』
希少能力『悪魔特効』
希少能力『自己修復』
★名 前:レーネ・セライア
種 族:ハーフエルフ
レベル:54
攻撃力:100 防御力:298
敏捷性:149 魔法力:209
能 力:希少能力『使役術』
使役:シャープ、フォルテ
希少能力『共鳴』
希少能力『悪魔特効』
★名 前:レガート・ディミニー
種 族:エルフ
レベル:56
攻撃力: 70 防御力: 42
敏捷性:130 魔法力:181
能 力:希少能力『精霊魔法適正』
希少能力『悪魔特効』
★名 前:ベアトリーチェ・ドラミューザ
種 族:半吸血鬼
レベル:22
攻撃力:164 防御力:127
敏捷性:100 魔法力:109
能 力:通常能力『吸血』
希少能力『希少種』
希少能力『超再生』
希少能力『中級魔法適正』
特殊能力『契約』
契約:バート、ナーディア、ライラ、リィラ
★名 前:リィラ
種 族:絡繰傀儡
レベル:25
攻撃力:169 防御力:98
敏捷性: 89 魔法力:49
能 力:希少能力『射撃適正』
希少能力『狙撃』
特殊能力『格納庫』
特殊能力『自動装填』
特殊能力『変形』
昨日、一昨日と、僕ら6人――正確には3人と3体――のチームがレベリングにいそしんだ結果である。これなら、今後かなりいいペースでレベル上げができるだろう。
ビーチェも、地道に続けていた訓練・鍛錬が形になってきたのか、ぐんぐん能力が伸びていっている。技術も、レガートが指導しているおかげで、さらに研ぎ澄まされてきている。
しかし、それ以上に成長著しいのは……何といってもリィラだ。
何だ、この能力値……元の何倍だ?
他の面々が、数値にして三桁とかざらだから見劣りがちだけど……異常な伸び幅である。確か、攻撃力とか……1レベルの時、30とかそこらだったはずだ。
一番高い能力……確か防御力だったと思うけど、それも50を超えていなかった。
それが……これだ。
魔法力はそれほどでもないけど、攻撃力169って……レベル1の時の4倍以上か。
あっという間にレーネやビーチェを超えて……しかもコレ、ここにさらにスキル補正加わるんだよね? 射撃……特に狙撃系の攻撃なら、オークだって一撃で倒せそうだ。
絡繰傀儡って、こんなでたらめな成長する魔物なのかと思ってフォルテに聞いてみたけど、そんな話聞いたことないっていうし……何なんだろう、この成長速度?
うーん……わからん。
仕方ない、ほっとこう。
これはもう、こういうもんだと思っておくしかない。幸い、悪いことじゃないし……後からでも、わかったらもうけものだ、っていう程度で。
……それよりも、とまでは言わないけど……同じくらい気になる点も、他にあるしね、一応。
――ガチャ
「ここにいらしたですか、探したのです、シャープさん」
「ありゃ……リィラ」
と、ドアを開けて部屋に入ってきたのは、今まさに考えていたリィラだった。
ああ、ちなみに今、僕教会の地下室にいます。ちょっと、考え事しながら作業中。
「ちょっとお話があるのですが……こんなところで何をしてるですか?」
「ちょっと作業。クロスボウの矢作ったりとか、武器の改造とか、色々」
「……その割には何もないようですが?」
そう言ってくるリィラの目には、僕が暗い、何もない部屋で、宝箱1個が部屋の真ん中に鎮座している様子が映っていると思う。
ここがダンジョンの中の小部屋とかなら、まんま仕事中のミミックだ。
今言ったような、クロスボウの矢とか武器とかは、確かに部屋のどこにもない……が。
「スキルで、収納したまま加工して作ってるから、出す必要ないんだよ」
言ってる間にも、僕は頭の中でスキル選択と実行を行い……また1つ、スケルトンの剣が『クロスボウの矢』と『金属ごみ』にわかれた。
「そうでしたか……相変わらず多芸なのですね」
言いながら、部屋に入って扉を閉め、ちょこんと目の前に座るリィラ。
「ところで、何か用?」
「はい。昨日のダンジョン探索で、結構矢を使ってしまいまして、補充したいのです」
「ああ、僕に作ってほしいと」
どうも彼女、攻撃には矢を使うのに、自分で作ることはできないらしい。
スキル『格納庫』と『自動装填』のおかげで、アイテムボックス的に矢を大量に収納し、それを装填の手間なしで使えるのはすごいけど……供給は自分ではできないわけだ。
昨日一昨日の探索でも、矢はこっちで作ったものをおすそ分けしていた。
「もちろん……さすがに、以前からもらいっぱなしはどうかと思っていたですし、私にできることであれば、対価として何でも……」
「いやいや、いいっていいって。必要経費だよこんくらい」
軍隊とかだって、矢とか弾丸をわざわざ使う分買わせるなんてことしないでしょ。
僕ら、主つながりで一応今、仲間なんだから。遠慮しなさんな。
「はあ……ではその、お言葉に甘えさせていただいて……感謝するです」
ぺこり、と一礼。いいのいいの、お兄さんに任せなさい。
さっき作ったばっかりのクロスボウの矢を……えーと、100本ずつ束にして、ひもで縛って、とりあえず10束でいいか。目の前に出す。
それにリィラが手を触れ、自分の『格納庫』へ収納する。はい、受け渡し終わり。
「えーと、コレ……せ、1000本……いいのですか、こんなに?」
「大丈夫、まだまだあるから」
一昨日、昨日とダンジョンを探索して……特に昨日は、リィラ達が強くなったのを見計らって、一緒に地下2階まで探索していったからね。
そこでは、剣以外の武器を持ってるスケルトンも出てきたから、素材はまだまだある。
ちなみに、地下への入り口のところで『スケルトンナイト』と、地下2階の入り口で『グール』と、それぞれ再び戦闘になったけど――ちなみに、ボスは一度倒すと、通過の際に戦闘するかどうかは選べるらしい。あえて戦った――問題なく勝利している。
しかも、リィラたちがだ。僕とフォルテ、レガートは手を出していない。
スケルトンナイトは、リィラの狙撃で両腕が吹き飛んだところを、ビーチェとレーネの剣が一閃、三分割した。
グールは、女子勢が接近戦を嫌がったので、リィラが遠距離からの連射で爆散させた。
最初に足を、床に縫い付けるようにして止めて、そのまま削り殺すようにドスドスと……容赦ないな、と思った。
その先の地下2階でも同じように戦い……ボスにもすでに勝利している。出てきたのは、ゴースト系の魔物で……『レイス』という、半透明の亡霊だった。
普通の『ゴースト』よりも断然強力で、魔法とかも使う、やっかいな敵なんだけど……相手が悪かった。
レイスの攻撃魔法を、僕がランチャーとクロスボウで迎撃して撃ち落としてる間に、フォルテが鋭く踏み込んで懐に入り、拳を一発。それで消し飛んでしまった。
さすが聖なる銀ボディ、こうかはばつぐんだったようだ。
……っと、それで思い出した。
そういえば、ちょっと今試しに作ってみてる矢があったんだっけ。
「リィラ、これもあげる。試作品なんだけどさ、使ってみて」
言いつつ、僕はリィラに、別な種類の矢を10本渡す。
それを、ちょっと不思議に思いつつも収納するリィラ。収納してから『格納庫』の中身を確かめて、そこで気づいたらしく、
「クロスボウ用の……『銀の矢』、ですか? これは一体……?」
「それ、銀は銀でも……フォルテの体の素材と同じ銀でできてる矢なんだよ。多分だけど、アンデッド系に効果抜群だと思うから、今度試してみて」
「……はい?」
さかのぼることいくらか。
僕が、フォルテに頼まれて整形手術を施してあげたあの時……実は、フォルテの体の素材が、加工の段階で若干余ったんだよね。それを、今まで保管してた。
それを使って作ったのが、この『銀の矢』だ。
多分、アンデッドにめっちゃ効く。と思う。
今度ダンジョンに潜った時にでも実験してみて、よさそうなら量産するつもりだ。
「量産、って……聞いた限りだと、量に限りがある素材なのでは?」
「大丈夫、そこはフォルテに協力取り付けてあるから」
「フォルテさんに……? ど、どういうことです?」
簡単なことだ。ほら、あいつ『自己修復』持ってるじゃん?
例えば、角とかちょっとぽきっと折れても、時間がたてば元に戻るんだよ。体積も。
こないだなんか、アークデーモンとの戦いでは、腕半ばまでちぎれそうになって、めっちゃ亀裂とか走ってた損傷すら、1分足らずで治ってたし。
だから、角の先っぽをちょっととか、牙1本とかを失っても、数秒から十数秒もあれば元通りになるのである……ここまで言えば、わかるな?
「……その性質を利用して、材料をフォルテさんから提供してもらうのですか」
「そ。対価は、その性質を利用した戦闘用のギミックを作って、フォルテに搭載してやること」
すでに履行済みである。今あいつの両腕には、仕込み銃みたいに、銀の弾丸を射出するギミックが搭載されていて、魔法よりも素早く発射が可能だ。腕を向けるだけだし。
そして、その銀の弾丸の射出は『損傷』と認識され、数秒後に修復=再装填される。
つか、コレに慣れるためにフォルテは昨日から訓練していて、その使用済みの弾を回収したので、実は結構素材はたっぷりあるのだ。
それを説明したら……表情がないはずのリィラが、呆れた感じになっている気がした。
「何というか……よくもまあそんなことを思いつくものですね。感心するです」
ため息交じりに、そんなことを。
「フォルテさんも非常に博識ですし……いえ、あちらはもう何年も高名な魔法使い様の元にいたと聞いていますが、シャープさんは人喰箱として生を受けて……聞いた話では、2か月足らずでしたか? とてもそうは思えない聡明さなのです」
「いや、そんなこと言ったら君こそ生後3、4日でしょうが」
そう、僕が気になってたのはここだ。
リィラが魔物として『生まれた』のは、ほんの数日前だ。
魔物――特に、魔法生物系とかアンデッド系の魔物は、生まれた瞬間からある程度の知能と知識を持って生まれてくるって、聞いたことがある。
多分、リィラもその類なんだろうけど……問題は、その成長の速さだ。
『生まれた』その当初、リィラは舌ったらずで、あんまりまともに話すこともできていなかったし、受け答えも単純なそれしかこなせていなかった。
まさに、まだ小さくて何も知らない子供、って感じだったのだ。
話に用いる単語も、子供でも知ってるような言葉遣いや単語だけだった。
それが、レベリングしている最中にどんどん賢くなっていき……舌ったらずな感じも、徐々に治ってきていた。話している最中につっかえることもほとんどなくなり、難しい言葉も使うようになってきていた。
そしてそれは、進化後にさらに加速し……今では、普通の人間と変わらない感じでしゃべる。ペースも、内容も、語彙も、1日で雲泥の差になった。
おまけに、何か独特な感じのキャラまでできてるような……ですます口調? 珍しいというか……やや色物チョイスだな。
「今何か失礼なことを考えませんでしたか?」
「いえ何も」
「……まあいいです。私も正直わからないのですよ……説明しようにも、口も気が付けばうまく動くようになっていましたし、性格?も、気づいたらこうなっていたです。ただまあ、私が生まれたばかりだった頃から、意識と記憶だけは特に変わらないままこうしてありますので……こういうもんだと思って特に気にしていなかったです」
「記憶……そういえば、リィラって、いつから記憶あるの? てか、意識いつからあったの?」
「意識は、数日前……それこそ『生まれた』瞬間からです。ビーチェ様のお手に抱かれていましたね。しかし記憶は……私がビーチェ様のところにいた15年以上前のものからあるのです」
とのこと。
魔物として、魔法生物として意識がはっきりする以前、物だった頃の記憶も持ってるのか……それで、レーネやビーチェの名前も知ってたし、彼女たちに懐いてたのかな?
ひょっとしたら、性格とか自我の形成にも、その部分が関わりあるのかも?
「何と言いましょうか……レーネやビーチェは、私にとって……友達でもあり、主君でもあり、家族でもあり……難しいですね。ですが間違いなく、大切な人なのです」
「そっか。その役に立ちたい、ってこと?」
「多分そうなのです……自分でもよくわかりませんが。まあ、シャープさんの言う通り、私など生後1週間と立っていない小娘ですし、好きなようにやるのですよ」
とのこと。それがいい、それがいい。
今のところ、誰もそれで迷惑してないし……そもそもうちの攻略チームに問題は発生してない。今のままで大丈夫だろう。
「とりあえず目下の目標は……2度目の進化なのです。明日にはできるでしょう」
「おぅ、ハイペースな……まあ、早く強くなるに越したことはないけどね。協力するよ……僕もフォルテも、次の進化楽しみだし」
「それは私の? それとも、ご自身のです?」
「両方」
さて、このところ進化で予想外の変化が起こることが多いけど……次はどうなるかね?
何事もなく、普通に強くなれればそれでもよし。それとも……?




