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第41話 いざ、攻略開始



「じゃあ……くれぐれも気を付けてね、レーネ。何かあったら迷わず……」


「わかってるって。そっちこそ気を付けて帰りなよ、ビーチェ」


「レガート様……どうか、レーネ様を頼みます。見知って間もないとはいえ、彼女もまたロニッシュ伯の実子……我々にも、他人とは言えません」


「無論だ……この身に変えてもお守りしよう」


そんな会話を交わし、僕らはビーチェ達と別れた。


結局、交渉の末に、ダンジョンに挑戦するのは、僕ら2人と2体、ということになった。

まあ、妥当なところだろうな。ビーチェ達にしてみれば、これ以上無理する理由も特にない。


むしろ、彼らは明日も仕事(日雇い)があるんだから、このダンジョン攻略ツアーに行くにはそもそも無理ってもんだろう。


僕らとしても、いきなり本格的に攻略してみるつもりはない。最初は様子見だ。

とはいえ、夜明け近くまで潜っている可能性も高いし、もし難易度が低そうならそのまま攻略してしまうことも考えてるけど。


それについてこれない以上、ビーチェ達とはここで別れることになった。

まあ、僕らもちょっと調べたらあの教会に戻るつもりでいるし、先に帰っててね、ってことで、送り出して別れたわけだ。帰ったらご飯食べるから、作っといて。お土産によさそうなものがあったら持ち帰る、と、軽口を交わして。


男衆が、予想外に大量で大荷物になったスケルトンの剣数十本を、何本かずつに分けて担いで、ビーチェと一緒に帰っていくのをしばらく見送った後で……さて、じゃあ、始めますか。


「始めますか、って言ったって……どうすんのこれから?」


と、レーネ。


「? どうすんの、って……そりゃ、ダンジョン攻略するでしょ。地下に進んで」


「その地下の入り口は、まだ見つけてない気がするんだけど?」


ああまあ、確かにね。今までビーチェ達はここを探索し続けてたけど、地下に通じる入り口なんてもんは知らないって言ってたし……その場所は謎のままだ。

まずはそこを、探すところから始めなきゃいけない。レーネはそれが不安なわけだ。


直径1kmの範囲……決して広くはないが、狭くもない。

市街地で入り組んでるし、屋内・屋外色々ある。探すのは大変だろう。


……と、思うじゃん?


「大丈夫……そのへんは、ある程度予想つくから」


「ああ。事前にビーチェ達から聞いてた話もあるしな」


「……?」




で、およそ30分後。


「ホントにあった……」


驚いている様子のレーネの眼前には……地下に続く階段がでん、と存在していた。


そして、その彼女の足元には……今しがた倒したばかりの、このダンジョンの『ボスモンスター』である、『スケルトンナイト』が転がっている。


大剣モードの僕を使って、袈裟懸けに一撃でたたき切られたそいつは、体の3分の1ぐらいが粉々に粉砕されていて、完全に魔物として死に、最早動くことはなくなっている。


さて、無事にこうして地下への入り口を見つけたわけだけど……ちょっと前に言った通り、僕たちはここの場所を知らなかった。

それなのに、なぜこうも簡単にここまでたどり着けたのか。というか、見つけられたのか。


その理由は簡単。今まで、ビーチェ達が行ったことがなかった地区を重点的に探しただけだ。


ビーチェ達は、主にスケルトンの装備を鹵獲して換金するためにここに来ていた。

今の僕らみたいなダンジョン攻略目的でも、戦闘目的でもない。だから、必要最低限のバトルしかしないために、あまり魔物たちが多い危険な区域には行かなかったのだ。


それを僕たちは、ダンジョンとしての『奥』に進むため、あえて魔物の多い危険な区域を目指して進んでいった。

そしたら、案外早くここを見つけることができた。


そしてここを見つけたもう1つの理由。

こっちは僕としてもラッキーだった部分だけど……『ボス』の存在だ。


ダンジョンには、強力な『ボスモンスター』が存在し、そいつを倒さないと次の階層に進めない、っていうパターンが多い。まあ、いない場合もあるけど。


そして、そういう『ボス』が待ち構えてる部屋とかエリアっていうのは、なぜだか親切なことに、わかりやすく豪華かつ重厚な扉なんかで区切られてることが多い。

幸運なことに、この『栄都の残骸』もそうだった。


危険な方へ、危険な方へ進んでいったら……ほぼ廃屋同然の建物しかないような街の中に、やたら重厚な感じの扉があった。それがくっついてる建物には不釣り合いすぎるそれが。

ああ、コレが例のボス部屋か、と、僕ら一同、同時に思ったね、あの時は。


で、入ってみたら、ご丁寧にボスモンスターの『スケルトンナイト』が、部屋の真ん中で待ち構えていた、というわけだ。

それを倒したら、床に階段が出現した、というわけ。


名前でわかると思うけど、『スケルトンナイト』は、スケルトンの強化版である。

単純な能力だけでなく、装備の質、戦闘の技量も通常のスケルトンより高い。それなりの錬度の兵士と同じ程度の動きができる、とも言われている。アンデッドらしく、疲れも痛覚もない体で。


まあ、レーネ(と僕)に一撃で倒されたわけだけど。


その討伐と同時に地下の穴が開いたので……さて、それじゃあ……


「行きますか、いよいよ」


「……そうね。いよいよね」


「あまり気負うな、レーネ。いざとなれば私や、シャープ達もいる。そうそうまずいことにはならんし、苦戦するようならすっぱり諦めればいい」


「ええ……できればそうしたくはないけど」


「ああ、それは……私もだな」


多分だけど……それぞれ、このダンジョンに挑む理由になったものを胸の内に思い描きながら、エルフの美女&美少女は、決意を新たにした笑みを浮かべていた。


その手元と、すぐ後ろにいる僕ら無機物コンビは、やれやれ、って感じで見つつも……実のところ、さして変わらない感じで、負けじとワクワクしてたりする。


ここからは……ビーチェ達からの情報も全くない、未知の領域だ。

剣と魔法のファンタジー世界の、魔物ひしめくダンジョン。かつて、僕やフォルテがいたあの洞窟とは、また別な趣になっているであろう魔境に……少しの不安と、それ以上の期待を胸に、僕ら2人と2体は歩みを進めるのだった。





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