表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/118

第38話 ひまつぶしと『キークエスト』



「……今日1日で、私たちは一体何回驚かされればよいのだろうな……」


「言うな……この場にいる全員の共通認識だから」


壁際に腰かけて、はぁ、とため息をついている、レガートとフォルテ。

その視線の先には……1体の小さな人形を挟んで、きゃいきゃいとはしゃいでいる、レーネとビーチェがいる。

しかし、当然人形遊びやおままごとをしているわけではなく……


「うわー、ホントに自分で動いてしゃべれるのね……記憶もあるの?」


『う、んー』


「そうなんだ……えっと、さっきはごめんね? 投げ飛ばして……びっくりしちゃって」


『いい、よー』


2人の間にいる……この旅『魔物化』した、2人にとって共通の思い出の人形『リィラ』と、色々興味津々で話しているところなのだ。


それを今しがた、レガートたちに説明したところ。

本日何度目かの驚愕の事実に、さすがのレガートも精神的に疲れているのがよくわかる。


「まあ、いいじゃない。所有者本人達が気にしてないようだし……仲はよさそうだし」


あんな風に語り合ってるくらいだ、危険はないだろう。


仮に何か危険なことがあっても……ステータスが違いすぎだ。何もできまい。


しかしちょっと、端から見ててシュールな光景だ。見た目10代も後半くらいの女の子2人が、西洋人形と大真面目に語らってるっていう、この光景は。

何も知らない他人が見れば、100%誤解を招くと思われる。


真ん中のリィラが、特に目とか口とか動かないタイプの人形だから……余計に微妙。

腹話術人形みたいに、口だけでも動けばまだ違……いや、それはそれでキモイか。


「でもびっくりしたなー……ただの人形が魔物化するなんて。こういうのってよくあるの?」


「あってたまるかバカ。超激レアケースだよ」


と、フォルテ。

結構な腕前の魔法使いに生み出されただけあって、見た目によらずそっち関係に知識・造詣の深い彼の話を聞いてみよう。


「一応、聞きかじりだが……ごくごく稀にこういうことも起こる、って聞いたことがある。よっぽど古い宝物とか、何らかの強い思いのこもった品物が……何かをきっかけに、突然魔物になるらしい。斬った相手の怨念がこもった剣が『リビングソード』になったりとかだな」


「へー。なら今回の場合は……レーネ達に懐いてるところから推測するに、レーネとビーチェ、それにピュアーノさんとやらに、長いこと大事にされてきたから、かな?」


「多分な。確かめようもねーんだ、そーいうことにしとけ……つか、どうすんだアレ?」


「アレって……人形リィラ?」


「他に何があるよ? 魔物になっちまったわけだけどよ……持ってくのか? それとも……いや、捨てるって選択肢はないとは思うがよ、見た感じ」


だろうね……アレ見るからに『大事にしてます!』って感じだもんね。

魔物化しても普通に話してるし……捨てるってことはまずないだろう。


そうなると、持ってくのかな? それとも、元の持ち主であるビーチェに返す、とか?


というか、そこ考えた結果思い出したんだけど……それ以前に僕ら、これからどうするか決めてなくない?

ビーチェ達にあってから、何かもう勢いのままここまで来ちゃったけどさ。


当初の目的……この国で物資・路銀の補充&『ロニッシュ家』への挨拶、っていうそれらは、まずもう果たせそうにないから普通に置いとくとして……


ビーチェ達とこうして出会って、王都滞在中はこの廃教会にいさせてもらうことになって、レーネ達とも仲良くなれたわけだけど……結局この後どうするのかは、決めてない。


いや、話す以前に、ある程度方向は決まってるようなもんだけどね?


各種補充ができなくなったんだし、ここに長くいる意味はない。

となれば、さっさと次の目的地――ここ以外で補給ができそうな場所――へ向かう。


まあ、こうして古い知り合いに会えたんだし、多少はここで羽を伸ばしたり、交流を深めたり……みたいなことをしてもいいかもだけど。


何にせよ今は……


――ぴこーん!


『キークエストが発生しました』


……久々に来たな。


『黙示録』由来の、脳内アナウンスによるクエスト告知。

前は確か、レーネとレガートの里が壊滅したときだったっけ。


2人を助けたらクリアになって……『黙示録』が手に入って、ああ、その前にあの変な精神世界?で変な……ああ、そうだ。


丁度いい、ちょっくら聞いてみよう……色々と。

えっと、念話と同じように、頭の中で話す感じで……


『もしもーし、ミューズさんやーい、聞こえるー?』


『おぉっと、久々にキタコレ! はいはーい、聞こえてますよー! ミューズちゃんでっす! どーかしましたかー?』


いつもながら意味不明に高いテンションである。いいけど別に。


『ちょっと質問いいかなー、って。ミューズってさ、『黙示録』とやらの説明書ポジだよね?』


『あーまあ、そんな感じの認識で間違ってないですねー。と、そういう質問から入ってくるってことは、『黙示録コレ』の機能がらみのお問い合わせですかね? つい今しがた、キークエ出ましたし』


お、知ってたんだ。


『うん、そんな感じ。でさ、何か基本的なところ聞くんだけど……『キークエスト』ってどんなもんなの? 単なるクエストとは違うんだよね?』


『ええ、それはもちろん。まあ、しいて言うなら……』


言うなら?


『すごいクエスト……じゃあんまりですよね……うん、『運命の分かれ道』ですかね』


ボケみたいな答えの後に、割かし真面目な感じの答えが来た。

ほう、これはまた大層な。運命、と来たか……そのこころは?


『特にひねった意味はないですよ? そのクエストをやるかやらないかで、この先の所有者……あー、この場合はシャープさんですけどもね、あなたの人生が大きく変わるようなクエストを指してそう言います。その判定は黙示録がオートなので、明確な基準はありません』


『人生が変わるってか……まるで予言書みたいだね』


その言い方だと、クエストをやるかやらないかで、全く異なる人生――僕今人じゃないけど――を歩んでいくことがわかっているみたいに聞こえる。


言い換えると、クエストをやってもやらなくても、そんなに人生変わりない……という可能性を排除しているようだ。ホントにまるで予言の書だな。


『レプリカとはいえ、神様の作った書物ですからねー、そのへんは色々仕様は不明ですが、人の身では計り知れぬことも多いんですよ、きっと』


てけとーな説明であるが、言ってることは決して的外れじゃない。

少なくとも……前回の『キークエスト』を思い返せば、やるかやらないかで大きく僕の未来は違ったと思う。レーネやレガートと一緒に旅をすることもなかっただろう。


……つか、あの時は結局僕、偶然、結果的にクリアしたんだけどね……意図せず。


『そういうことです。まあ、こっちにマイナス要素はあるわけでもないですし、気楽にどうぞ』


『とりあえずそうするか……んじゃ、今回のキークエとやらの確認でもしようかな』


『どうぞどうぞ。ってか、キークエ以外にもいろいろ出てますね……』


ほう、どれどれ?



≪挑戦可能クエスト一覧≫


・『運命の子供たちと契約せよ!』≪キークエスト≫

・『路地裏のならず者たちを倒せ!』

・『孤児院の子供たちに救いの手を』……CLEAR!

  報酬:銀貨9枚 パン27個

・『ダンジョン『栄都の残骸』を攻略せよ!』

・『ロニッシュ家の隠し財宝の謎を解け!』

・『●●●●●』



なんかすでに1つクリアしてるし……アレかな、子供たちにご飯あげたからかな?


気になる単語もいくつか出てきてる。『隠し財宝』だの、『運命の子供』……あれ、コレ前もあったな? 確か、レーネがそう呼ばれてたはず……しかし、『たち』とはいかに?


そしてまた出た『●●●●●』……また唐突に何かのタイミングで解禁されるんだろうなー。


で、個人的に一番気になってんのは……『ダンジョン』とやらだ。

文面から察するに、『栄都の残骸』とかいう、けったいな名前のダンジョンが、おそらくはこの近くにあって――世界そのものがそもそもダンジョンなんだけどね、この世界。置いとくけど――そこを攻略すると、何かいいことがあるようだ。


……あ、そうだ。

今更だけど、クエストをクリアすれば、不思議現象で『報酬』が現れるはず。路銀とか物資の足しになるかもしれないな。


あと……できれば『隠し財宝』とやらも狙ってみたい。

さすがに、思いっきり『ロニッシュ家の』って書いてあるし、ネコババする気は……あんまりないけど……ちょっとくらい分けてもらえるかもしれないし。合法的に。


とりあえず、『救いの手を』の報酬はもらっとくか。

頭の中で、コレの『報酬』を選択。何もない空中から現れる、銀貨とパン。


……うん、相変わらず、物理法則とか完全無視だな。いっそすがすがしい。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ