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転生箱道中 ~ダンジョン異世界で僕はミミックでした~  作者: 和尚
第1章 はじまりの洞窟のエリア
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第3話 ステータスと『蓄財』

ブックマーク、評価ありがとうございます。身の引き締まる思いです。

『魔拳』共々頑張って書きます!


――がりがりがり……ごりごりごり……


問題。この音、何の音?


答え……僕が、この部屋の壁や床の石材をかじって食べまくってる音。


きっかけは……いつか、部屋の外に出ていく時のために、ってことで……動く練習をしていた時のことだった。


手も足も、筋肉もそもそもないのに、床をピョンピョンはねて移動できるっていうこの箱ボディの謎機能にある意味感心していたら……床の一部が微妙に段差っぽくなってて、そこに躓いてこけた。


その時、思わず口開けちゃって……床に歯を立てた。


人間が同じようなこと……石の床に顔面からダイブなんてことになれば、歯が折れてもおかしくないと思うんだけど……どうやらこの体の牙と歯茎は、予想以上に頑強らしい。


突っ込んだ結果、かみついて削るような形になって……石の床が砕け、僕の口の中に納まった。

そして次の瞬間……


『???は『石ころ』を手に入れた』


聞こえた瞬間……何じゃ今の謎音声は、と思ってしまった。


なんていうか、こう……まるで、アレだ。ゲームとかで、アイテムを拾った時に流れるアナウンス的な……そんな印象を受ける説明文が、唐突に僕の頭の中に流れた。


外部から聞こえた、って感じじゃなかったから、多分、頭の中に直接響いたんだと思う。


……ダンジョンといい、魔物転生といい、今のアナウンスといい……いよいよネットでよく見た転生ファンタジーっぽくなってきたな。もう、本格的に。


それはそうと、この世界がゲームだか何だかみたいな法則にのっとって回ってるみたいだと思う傍ら……もう1つ気になることがあった。


今のアナウンスの内容にもあったように、僕こと『???』は――名前そーいやなかったな。当たり前だけど。魔物だし――『石ころ』なるアイテムを手に入れた、とのことだ。


そしてその事実が……なんか、意識すると頭の中に浮かぶんだな、これが。


いわゆる……『ステータス』って奴であろう、色んな情報と共に。



★名 前:???(未設定)

 種 族:ミミック

 レベル:1

 攻撃力:45  防御力:50

 敏捷性:8  魔法力:10

 能 力:固有能力ユニークスキル蓄財バンク



マジでゲームみたいだな……。攻撃力とか、防御とか、数値化されるのかこの世界。


この数値がどのくらいの高さなのか、とかもちょっと気になるけど……今はこっち。


この画面?の下の方に、所有アイテムの一覧みたいなのを選択できる部分があって……その中に、さっき食べた『石ころ×2』って内容があったのだ。

『×2』になってるのは……かけらが2つあったんだろう。多分。


いわゆる『アイテムボックス』まで完備なのか? とか思ったけど……その後、ステータスの中の『固有能力:蓄財』ってやつの説明を見て、その認識を改めた。


どうやら『蓄財』という力は、食べたものを自分の体内に保存しておける能力、ということらしい。食べた石ころがアイテム化して保存スペースに収まったのは、この効果ってわけか。


ミミックが宝箱の魔物であることからくる能力……なのかな?


その辺は考えてもわからず、説明になるような項目もステータスの中にはなかったけど……とりあえず僕は、目下の暇つぶしの内容を、動く練習以外にももう1つ決定した。




……で、冒頭に戻る。


――がりがりがり……ごりごりごり……


かじる。

ひたすらかじる。


壁をかじる。

床をかじる。

柱……は崩落が怖いからやめとくか。

天井……は、届かない。


とにかくかじる。

その結果、僕の頭の中には……さっき聞こえたのと同じアナウンスがひっきりなしに鳴っている。


『???は『石ころ』を手に入れた』

『???は『石ころ』を手に入れた』

『???は『石ころ』を手に入れた』

『???は『石ころ』を手に入れた』

『???は『石ころ』を手に入れた』

『???は『石ころ』を手に入れた』(エンドレス)


アイテムボックスの中には、とっくの昔に3桁に届く数となった『石ころ』が。

コレ、無限に入るのかな? ちょっと試してみてもいいかもしれない。


そしてどうやら、ミミックに味覚はないようだ。食べまくってるけど、味……みたいなものは感じない。


いや、単に石材に味なんてもんが存在しないだけかもしれないけど……食事の必要がそもそもなさそうだってことを考えれば、別におかしくもないな。


そして、そんだけの数の石ころを削り出す勢いで壁や床をかじってるわけだから……ちょっとずつだけど、部屋が広くなってきている。

なんて強引なリフォームだろうか。


……でも、同じ景色に飽き飽きしてたから、ちょっと楽しい気がしてきた……とか思った、その時。


――がりがりが……ぼこん。


(ん?)


牙の先から、今までとは違う歯ごたえが返ってきた。


削ってる途中で、何もなくなったというか……空を噛んだというか……

ひょっとして、これは……


(……やっぱりだ! うわぁ、壁貫通した!)


そうなのだ。かじりまくった結果……石壁の向こう側までトンネルが開通してしまったらしい。

さっきの感触は、向こうの空間にまで僕の牙が届いたことによるものだったのか。


その事実にテンションが上がった僕は、かなり小さ目にだけど、確かに向こう側へと続く穴が開いている部分に牙を突き立てた。穴を中心に、突き崩していくように。


何時間、何十時間もひたすら動いては噛み、動いては噛み、って繰り返してきただけあって、もうこの体の動かし方も手慣れたもんだ。手、ないけど。


――がりがりっ、ぼこん。がり、ぼこん。


どんどん大きくなっていく穴。

広がっていく、僕の明日への希望。未来への道しるべ。新世界への扉。

……何わけのわからんことを言ってんだ僕は。


いかん、なんかテンション変になってる。

不眠不休で延々単純作業繰り返してたからかなー、徹夜明けみたいな感じになってるっぽい。


まあともかく……とかやってる間に、ついに穴が、僕が通れるくらいの大きさにまで広がった。


そして僕は、苦労した末ゆえにひとしおな感動とともに、この狭い部屋から外へと飛び出すための第一歩を……踏み出した!



『ほぅ……こんなところに客人とは珍しいのう。しかも、随分と珍妙な客であるようだ』



踏み出した先に……でっかい、馬みたいな鹿みたいな魔物が鎮座していた。


……えっと、あの……リターンしてもいいですか?


え、ちょっと、え、何この展開!? 何このいかにも強そうなモンスター!?

聞いてないよ!? 一歩踏み出した途端にこんなのと遭遇するとか!


いや、っていうか冷静に考えてみれば、ダンジョンなんだから動き回ったらそりゃ魔物にもでくわしそうなもんだわ! 何でそれに気づかなかったよ僕!?

あれか、徹夜テンションの弊害か!? 仕方ないじゃん眠くならないんだから!


誰だ、明日への希望とか、未来への道しるべとか、調子のいい能天気なこと言ってたバカは!

僕だ!


つか、マジでどーすんのコレ!? 僕まだレベル1よ!? 死んだんじゃね!?





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