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第18話 とりあえず救出


「レーネ、よせ、やめろ……これでは、逃げることなど、無理だ……私を……」


「いやよ! そんなことできない! 大丈夫、必ず……必ず、助けるから!」


もうそろそろ夕暮れ時になろうかという、森の中。

そこを……2人は、懸命に走っていた。


いや、この言い方は適切ではない。走っているのは、1人だけだからだ。

もう1人は……その1人に抱えられ、引きずられるような形でいる。


今、レーネは……戦いで傷を負ったレガートを、後ろからわきの下に手を回して抱え、引きずるようにしながら、必死で逃げている。

何からか。言わずもがな……里を襲ってきたオークたちからだ。


襲撃は、突然だった。


昼の、まだ日も高い時間のうちに、突如としてオークの大群が攻めてきたのである。

しかも、狙ったのか、はたまた偶然か……自警団の兵たちが半分以上出払ってしまっているという、最悪のタイミングでだ。


森から現れて、雄叫びを上げながら襲い掛かってきたオークの軍勢に対し、エルフ達は得意の弓矢や魔法を駆使して必死に応戦したものの……数が違いすぎた。


エルフ達の数が、老人や女子供まで動員しても100に届かなかったのに対し……オークは300を超えていたのだ。それも、当然ながら全員が兵士として屈強な体を持っていた。


途中、出払っていた自警団の者達のうち、近くにいた一部が戻ってきて応戦したものの……それでも圧倒的に数が、武器が、物資が足りなかった。

結局、数時間と持たずに防壁は破られ、里の中にオークたちが殺到。蹂躙を始めた。


人数にして半分以下になってしまったエルフ達は、命からがら、散り散りになって逃亡を始めたが……その最中、避難誘導と応戦の両方を行っていたレガートは、あらかた里からエルフ達を逃がしたタイミングで……ただ1人、この集落のはずれに住んでいるレーネのもとに走った。

危機を知らせ、彼女を助け、逃がすために。


しかし、到着と同時にオークたちもそこをかぎつけてしまい、やむをえず交戦。

レーネをかばいながら、どうにかそこに襲ってきたオークたちは倒したものの、浅くない傷を負うことになってしまった。それも……よりによって、足を。


そのレガートを見捨てまいと、今度はレーネが奮起している。

逃げる支度をごく簡単に整えた後、今こうして、2人で逃げているわけだ。


しかし、いかに自分なりに鍛えているとはいえ、体格で劣るレーネが、騎士としてしっかり鍛えていて身長も高いレガートを運びながら逃げるのは、困難。


引きずるようにして運んでいるので、1人で逃げる場合の2割も移動速度は出せていない。

鎧を捨てればまだ加速できるのかもしれないが、今はその時間も惜しい。


幸いにして、オークたちは、逃げているレーネ達には気づいていない。

気づいていないからこそ、この亀の歩みのような遅さでも、逃げ続けることができている。


しかし、気づかれればあっという間に追いつかれてしまうだろう。

だからこそ、レガートは自分を捨てていくよう言ったのだが……レーネにそんな選択肢は存在しなかった。意地でも助けると、歯を食いしばり、少々女の子が出すにはアレなうなり声まで上げて気合を入れ、恩人の命を救うべく、休まず足を動かす。


しかし……それも、長くは続かなかった。


「プギー!」

「ブヒー! ブギギー!」


(っ……! 見つかったか……!?)


木立の向こうから聞こえる、オークの鳴き声。うっすらと、その体の影も見える。

それを聞いたレガートは顔をしかめ、レーネは顔色を青くする。そして、一層足腰と腕に力を込めて、一刻も早くこの場を離れんと歩みを速めた。


ただ鳴いただけ、というのは甘い観測だろう。オークたちの影が増えてきている。

集まってきているのだ。逃げ遅れた愚かな獲物を、狩るために。


オークは、他の森の魔物に比べれば、俊敏とはいいがたい魔物だ。しかし、それでも今の自分たちよりは早く動いて……あっという間に追いついて、自分たちをとらえるだろう。


「レーネ、お願いだ、私を捨てていってくれ! このままでは……」


「嫌、嫌よそんなの! レガートさんを置いていけるわけないじゃない!」


「聞いただろう、今の声を! もう、2人で逃げるのは無理だ! このままでは2人とも捕まる……私が注意を引いて、時間を稼ぐから、その間に……」


「嫌ですよ! 私……私が今生きていられるのは、レガートさんのおかげなんです。あなたがいなかったら、私……絶対、今の境遇に絶望して、耐えられなくて、死んでた……! あなたに何もかも助けてもらったんです! そんな恩人を、おいていくなんてできません!」


「っ……ならば、なおのこと置いていってくれ!! 私だって……私だって、自分のせいで君が死ぬようなことになったら、ピュアーノに何と言えば……そんな……そんなことは考えたくもないんだ! 私のことを思ってくれるのなら……お願いだ、私を置いていっ……!?」


そこでレガートは、背後……見たくなかったものを見てしまった。


とうとう、後ろから追いかけてきているオークたちが、肉眼でその姿を確認可能なところまで迫ってきていたのだ。


これでは、レガートだけでなくレーネもきっちり見つかってしまっているだろう。


捨て身で、1人で残って時間稼ぎしようにも、足をやられたこの傷ではまともに戦えない。文字通り体を張ってオークを足止めしたとしても……レーネを逃がすことは不可能だろう。


これまでか……と、レガートの脳裏に、さすがに絶望とあきらめがよぎる。


そんな彼女たちの絶望をあざ笑うかのように、武器を手に走り寄ってくるオークの軍団。

瑞々しく、若い女が2人。1人はいくらか傷ついているようだが、気になるほどではない。


全部で11匹。その欲望を下卑た笑みに変え、ぶひぶひと鼻息荒く突進してくる。

2人の女を使って、もうすぐ味わうことができるであろう、快楽を渇望して。


1人は向こうを向いていてよく見えないが、こっちを見ているもう1人は、くやしさと怒り、そして……隠し切れない怯えを表情ににじませている。

それが一層、オークたちの嗜虐心を刺激する。あの整った顔を、自分たちでゆがませてやりたいと。悲鳴が聞きたいと。さんざんに嬲って、欲望のはけ口にしてくれようと。


そして、先頭を走ってきたオークの手が、レガートたちに伸ばされた……その時。


悲痛な少女の声にこたえるかのように……救いの手は、突然にもたらされた。


――どごぉっ!!


「ぶ、びぃっ!?」


突如、上から落下してきた、金属の大きな『箱』が、オークの頭を粉砕した。


☆☆☆


はい、今日も激しく鈍器やってます。シャープです。

現在フォルテと共に、こないだ知り合ったエルフ娘を助けに来てます。女騎士さんも一緒です。


で、後ろからはオークの群れ。里を襲ったやつらと、同じ連中だろうと思う。


このまま放っとくと、女騎士さんが『くっ、殺せ!』って言うような事態になると思うので、さっさと助ける。先方は、さっきと同じ。

僕ダイブ→フォルテ威嚇→僕奇襲→フルボッコ。以上。


ステータスをすばやく確認してみたけど……



★種 族:オーク

 レベル:16

 攻撃力:45  防御力:37

 敏捷性:18  魔法力:10

 能 力:通常能力『絶倫』



うん……なるほど。こりゃ強い。こないだのゴブリンとは大違いだ。

どうやら装備込みでの数値らしいけど……それを差し引いても、脳筋種族らしい、あからさまに接近戦偏重のステータス。普通の人間の兵士とかじゃ、単騎で対応するのは難しそうだ。


スキル欄に見られるツッコミどころはスルーして、と。


まあでもこのくらいなら……僕とフォルテの敵じゃない、かな。

というか、ここんとこ、ろくに苦戦する相手に出会えてない。ひょっとして、割と僕ら無双モード入ってない?


まあ、それで調子に乗るのはやめとくけども……余裕はある戦いになりそうで何よりだ。


お、フォルテ降りてきた。オーク襲い掛かった。

しかし返り討ち。フォルテのクロスカウンターがオークの顔面を粉砕。


今ので完全にオークたちの意識が、女2人から目の前のガーゴイルに移った模様。

女2人、唖然としてます。声も出ません。無理もない。


……んじゃそろそろ、僕も動くかね。


さくっと奇襲して片づけますか。





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