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第17話 黒煙の下には…



ゴブリンとエルフ娘の一件から数日。


僕は今……フォルテと一緒に、ふわふわと森の上空を飛んでいる。

より正確に言えば……フォルテが空を飛んでいて、僕はそのフォルテに抱えられている。


アレ以降、なんとなくというか流れで、こいつとは一緒に行動するようになったのだ。


いーかげん1人でいるのも飽きてたしね。旅の相棒、ってほどじゃないけど、話し相手兼ケンカ相手みたいな感じで、今一緒にいる。お互い、暇つぶしメイン、って感じかな。


加えて、僕らトラップコンビのこの組み合わせは、狩りの時とかに結構使えるのだ。


ゴブリンとかがいた場合、先回りして適当なところで待ち伏せる。

具体的には……洞窟とか、岩陰とか、『宝箱があってもまあおかしくなさそうな場所』で。


そこに僕が『擬態』して待機。

その近くにフォルテが、こちらも『擬態』して待機。


で、そこにやってきたゴブリンとかが、宝箱に飛びつこうとしたところを……フォルテが奇襲。


それで戸惑い、フォルテを敵に認定したところで……あるいは、宝箱の隣の石像フォルテが罠、ガーゴイルだってことを見破って戦いを挑んて来たところで……2段トラップとして待機していた宝箱そのもの=僕が奇襲。


だいたい、この組み合わせで……よくて半壊、悪くて壊滅となる。


とはいえ、この手は宝箱=僕に興味を示し、気を取られるような相手でないと通じない。

すなわち、ゴブリンとか、ある程度の知能がある連中限定なのだ。


それ以外の魔物……例えば、草犬グラスドッグとかの場合は……おっと、ちょうどいいのが。


「フォルテー。下、下」


「おう、見つけてる……おぉ、森狼フォレストウルフ混じってんじゃねーか、大物だな」


僕らの眼下には……8匹程度の群れを成して動いている、野犬たちの群れがいた。

リーダーは、あの2周りほど大きい深緑の狼……『フォレストウルフ』だろう。


はい、じゃ今回のターゲットはアレに決定。


「でしょ? んじゃ、よろしく」


「おう、いくぜ……」


そして、フォルテは今まで両手で抱えていた僕を、片手で持ち、大きく後ろに振りかぶって……リーダーの森狼フォレストウルフめがけて、思いっきりぶん投げた。


轟、と空を切って飛んでいく……というか落ちていくというか。

まあいいや。落下中に、ちょっと角度を調整……角の部分が当たるように。


で、飛来した僕は、フォレストウルフの脳天に見事にドカッと直撃。

無防備にそれを食らったフォレストウルフは、頭をR15な状態にして……即死した。


その周囲で、突然のことに戸惑っている子分たち。

そこに上空から降り注ぐ、魔力の弾。


こないだ知ったんだけど、フォルテはただのガーゴイルじゃなく、その亜種『魔導悪魔像ウィザードリィガーゴイル』らしいので、魔法が使えるのだ。多少。


それによる攻撃に加えて、大音量で咆哮をかまし……この時点で完全に、犬たちの意識が上空のフォルテに向く。自分たちの親分を殺した、憎っくき敵に。


……地上に転がっている僕を、完全に放っておいて。


まあ、ただの凶器、って認識だろうしね。硬くて、重くて、投げつけでもしたらそりゃ大変なことになるけど……もう使用済みで転がってるだけだから、意識なんてしないよね。

今フォルテ、僕も巻き込んで魔力弾丸で撃ってたし、余計に気にしないよね。


……全部計算済みで、わざとだけど。

あ、こっからはさっきの奇襲パターンとおんなじです。後ろから襲います。


……ほどなくして、野犬たちは全滅した。

いつものように、その死体は回収して素材に変え……たところで、


『レベルが上がりました』

狩喰箱ハンターボックスが成長限界に達しました。条件を満たしているため、進化が解禁されました』

『進化先の候補が複数あります。希望の進化先を選択してください』


おぉっと、レベルカンスト&2回目の進化キタコレ!

思ったより早かったな……やっぱし、フォルテと組んで移動速度UP&討伐速度UPしたのがよかったのかも。


とりあえずステータス確認。



★名 前:シャープ

 種 族:狩喰箱ハンターボックス

 レベル:30

 攻撃力:200  防御力:245

 敏捷性:158  魔法力:140

 能 力:通常能力コモンスキル『擬態』

     固有能力ユニークスキル財宝創造トレジャーメーカー

     特殊能力スペシャルスキル悪魔のびっくり箱パンドラボックス

      派生:『無限宝箱インベントリ



全体的にがっつり上がってるな、うん。

今のままでも、このへんの魔物なら普通に倒せそうだけど……やっぱ進化してさらに強くなっといた方が、後々色々安全だよね。


気のせいか最近、魔物たちが気が立ってるような気もするし……なれる分は強くなっとこう。


さて、それじゃあ進化先のチェックといこうか。かもん、選択肢。


『選択肢① 銀人喰箱シルバーミミック

『選択肢② 殺喰箱キラーボックス

『選択肢③ 魔導罠箱マギウストラップ


今度は3つかい……まあいいや。考察しつつ選ぼう。

幸い、このへんまではまだ……麒麟おじいちゃんに聞いた範囲だ。


まず1つ目、銀人喰箱シルバーミミック。これはないな。

僕の最初の姿『人喰箱ミミック』の強化版。攻撃力・防御力共に優秀そうだけど……スピードと魔法分野が死ぬ。却下。


次、殺喰箱キラーボックス。物騒な名前だなおい。

位置的には、狩喰箱ハンターボックスの上位互換だったはず。能力も似たような感じだったはずだ……こっちの方が俄然上がるはずだけど。

現時点では、コレが一番候補としては上かな?


で、最後の『魔導罠箱マギウストラップ』。コレちと曲者だな。

どうやら、魔法関係の能力が上がるらしい。魔法とかガンガン使って攻撃できるようになる、ってわけだ。

ただし、攻撃力と防御力がやや低くなるんだとか。

まあ、それでも今の狩喰箱ハンターボックスよりは上だけど。


うーん、物理型か、魔法型か……悩むな。


ここはひとつ……フォルテに意見を聞いてみるか?

こいつ、種族的にも魔法使えるし……仮に魔法使って戦うなら、何が大事かとか、何に注意して何を考えて……とか、その辺聞けるかもしんない。


お願いできないもんかね……と思っていたら、


――ぴこーん!


『キークエストが発生しました』


…………うん?


え、何? 何つった今?

きーくえすと? キークエスト? 何じゃそら?


何だ今の天の声? 初めてのパターンだったぞ? おじいちゃんからも聞いたことない。


と、僕が混乱していると……


「「……ん?」」


視界の端に、別な気になるものが映って……僕とフォルテの意識は、そっちに持ってかれた。


そろそろ夕方になろう時間帯。しかしまだまだ明るく、晴れ渡った空。

そこに浮かんできたのは……


(煙? しかも……黒い?)


まるで、火災現場みたいな……黒い煙。

しかも、結構太い=規模が大きい。

何が燃えてるのかはわからんけど……あの大きさだと、前世では普通に火災だな。消防車と救急車がドップラー効果をお共に出動するレベルだ。


しかし、何だって森の中で火が……まさか、森林火災とか?


するとフォルテが、


「あ? ありゃあまさか……」


「? どうかしたの、フォルテ?」


「ああ……いや、あっちの方角はたしか……エルフどもの隠れ里がある方角だな、と思ってよ」


「え、マジで? じゃ、もしかして火元はエルフの村?」


「かもしれねーな……ん?」


と、そんな会話を僕らがしているうちに……さらに光景が変わった。


……煙、増えた?

単に太くなったようにも見えるけど……よくよく見ると、幾筋か分かれて上っていて……って、どちらにせよ、あの燃え方だと火元は相当な規模じゃ……?


横を見ると……フォルテの目が、その煙にくぎ付けになっていた。


……あ、そういえば、フォルテ元・主人って……この近くのエルフの里に住んでたって……じゃあもしかして、今視線の先にあるのが……?


「……気になる?」


「……まあな」


「心配?」


「いや、それはねえ」


あれ、そこ違うんだ?

まあ、無能な飼い主だったみたいだし……そのへんドライなのかもね。


「ねえけど……まあ、ちと寄り道してみるか。いいかシャープ?」


「いいよー。僕もちょっと気になるし」


とりあえず……野次馬根性、物見遊山、ってことで。

進化その他は……後からでもできるっぽいし、後回しだ。




……で、来てみた。フォルテに抱えてもらって、飛んで。

空からだと目立つので、村の近くの高台に上って、隠れてみてみる。


すると、そこには確かに、エルフ達が暮らす『隠れ里』が……あった。


いや、正確には、エルフの隠れ里『だったもの』が、あった。


過去形である。今は……二重の意味で、そうとは言えない。


理由、というか原因は、すごくわかりやすく、目の前に広がっている。

今のこの状況が、原因であり結果、と言っていいだろう。


ただ……説明が、ちょっと難しいなコレ。

いや、何が起こってるのかをただ単に説明するのは簡単なんだけど……ちょっとそのまま言葉にするのがためらわれる状況なのだ。


もし、コレを見たままに表現しようとすると……


(年齢制限がかかるな……確実に)


えっと、まず、結論の部分を言うと……攻め滅ぼされた、ってことなんだろうな。ここ。


麒麟おじいちゃんも言ってたし。人や亜人の集落がダンジョン内に作られていることもあるけど、そういった集落は、きちんと外敵の対策をしていないと、魔物の群れの襲撃なんかによって攻め滅ぼされる……って。

これは、まさにそういうことが起こった……ということなんだろう。


もっとも、村の周りに柵みたいなのあるし、戦闘の痕跡も随所に見られるから……対策を全然してなかった、というわけじゃないんだろうな。

ただ単に、それでも力及ばなかっただけ、ってとこか。


そして、肝心の攻めてきた魔物は……『豚鬼オーク』だな、アレは。


すごい数が、エルフの村の中のあちこちにいる。

そして、程度の差があれど、全員武装してる。ということは……野生とか、それに近い魔物じゃない、ってことだろうか? オークの群れというか、軍団? それが攻めて来たのか。


で……だ。

もしかしたら僕の偏見かもしれないが、オークってのは……スライム、ゴブリン、触手と並んで、18歳未満禁止の類のゲームにおいて活躍目覚ましい魔物だったはず。多分。

そしてそれは、この異世界でも……少なくとも、今目の前にいる連中は、同一のようだ。


そんな連中が、エルフの村を襲撃して落としてしまった結果が……これか。


ここで再び、結論に戻ろう。ただし今度は、より正確に。

エルフの村は、すでに攻め落とされ、滅びていた。オークの軍団によって、殺戮と、略奪と、凌辱の限りを尽くされている。


見える範囲には……死んでると思しきエルフもいれば、生きてる者もいる。ただしまあ、生きてはいるものの、現在進行形で地獄を味わってるようだが。

そして、男のエルフはどうやら、全員死んでいる。生きているのは女ばかりだ。

それがどういう意味かは……まあ、お察しください。


……こないだの洞窟、あの、レーネとかいう女の子のこと、見捨てなくてよかったな。

あの時、もしレーネを助けなかったら、って感じの光景を今まさに見てるけど……気分のいいもんじゃないわ。こーいうのはやっぱり、電子画面の中だけで十分だな。


確かにエロいけど……それ以上に、酷いし、惨いもん。これ見て興奮はできないわ。


ふと横を見ると、フォルテがあの光景を見て……ため息交じりに、


「弱肉強食……まあ、自然の営みの中にゃ、こういうこともあるんだろうな」


「そーだね。で、どうすんの? 助けようにも、正直もう終わってるけど、あそこの村」


「もともとそこまで義理はねーよ。……行くか」


「そだね」


ドライかもしれないが、あの村を助けるという選択肢はない。

こちらは2体しかいないんだ。戦力差がありすぎる。


そもそも、縁もゆかりもない村だ。ここは悪いけど、さっさと退散させてもらって……ん?


その瞬間、僕の目が、あるものをとらえた。


「……ねえ、フォルテ、あれ」


「あん? あれって何……お?」


僕らが2人して目を向けたのは、村の中ではなく、そのはずれのさらに先、森の入り口付近とでも言うような、少し開けた感じの状態になっている場所。


そこに……見覚えのある、2人のエルフの女性がいるのが見えた。


いや、正確には……エルフ1人と、ハーフエルフ1人、だっけな。





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