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第13話 エロゲー展開を阻止せよ



問題です。


ゴブリンの集団が巣に若くてきれいな女の子を生け捕りにして連れ帰ってきました。

さて、この後何が起こるでしょう?


『家族が増えるよ、やったねゴブちゃん!』


『おいやめろ』


冷静なフォルテの念話ツッコミ。体は動かさずに。


『間違っちゃいねーけど、んな喜ばしい表現が似合う展開じゃねーからなコレ?』


うん、どう見ても鬱系のエロゲー展開まっしぐらですねわかります。


「んー! んんー!」


頭をぶんぶんと横に振り、体をよじらせるエルフ(多分)の娘。


しかし、それでどうにかなるはずもない。

それを見ていて、ゴブリンたちが嘲笑うように口々に……


「ギャギャ! ギャギャギャ!」


「ギャギャギギギャ!」


「ギャギャ? ギャギギャギャ?」


口々に……何言ってるかわかんね。ゴブリン語?


『フォルテ、通訳できたりしない?』


『できるわけねーだろバカ。俺だってゴブリンの言語なんぞ知らんわ』


『えー、無理? 顔面は似たようなもんじゃん』


『うるせーよ!!』


ちっ、使えん。


まあでも、大体予想はできる。あの、下卑た表情からして。

人間とはだいぶ顔の作りは違うけど、表情はなんとなくわかる。


そこに、僕が今までに培った知識を合わせて考えるに……多分だけど『へっへっへ、生きのいい女だぜ』『かわいがってやるから大人しく待ってろよ!』『どうする? 誰からやる?』ってとこか。


腰布のあたりが不自然に盛り上がってることから考えても……そんな感じだろう。


『多分そんなとこだろうが……それを予測できるに至る、お前が培った知識ってのは何なんだ?』


『……ノーコメントで』


前世の18禁ゲームです。言えんけど。


それはさておき、どうしたもんかね。

このままだと、あのエロフ……じゃなくてエルフ、抵抗もできないままにアレなことになっちゃうと思うんだけど……助けた方がいいのかな?


前世が人間だったからだろう。姿かたちが近い方にやや同情の天秤が傾く。


もしここで放置すれば、液晶画面の向こうにしかなかった『エルフ×ゴブリンの集団』っていう反道徳的エロイベントがまさかの生ライブで始まるわけだけど……さすがにねぇ?


それを指をくわえて見てるってのも……あ、僕今指ないわ。


なんてアホなことを考えてたら、ふとした拍子に、ゴブリンの一匹の目がこっちに向いた。


「ギャギ? ギャギャギャギャ?(あれ、あんなところに宝箱あったか?)」


「ギャギャ? ギャ、ギャギャギャギャ(宝箱? ホントだ、誰か拾ってきたのか?)」


「ギギ、ギャギャギャ? ギャギャギギ?(つか、横の石像もなかったよな? 誰が持ってきたんだ?)」


あ、訳は適当です。


するとゴブリンの一匹が、すたすたとこっちに近寄ってきた。にやにや笑って。


「ギャギャ、ギャギャ?(中身は何だ? 食料かな?)」


「ギャギャ、ギャギャ(武器とか、宝かもな)」


どうやら、連中は宝箱=僕を開けるつもりらしい。

マジか、どう見ても怪しすぎるだろうに。こんな、いきなり現れた宝箱。


いや、でも……フォルテ曰く、ゴブリンって基本、バカらしいからな。

得体のしれないものがそこにあるという不信さよりも、宝箱がそこにあるという好奇心が勝ったのかもしれない。


そしてしつこいようだが、字幕というか訳は想像です。


寄ってくるついでに、鑑定。さて、こいつらのステータスってどんなもんかね?



★種 族:ゴブリン

 レベル:7

 攻撃力:18  防御力:12

 敏捷性:13  魔法力:6

 能 力:通常能力『繁殖力』



……よ、弱ぇえ……マジかコレ。いや、一応一般人とかよりは上なのか。


しかし、これなら……十分、殺れるな。


近づいてきたゴブリンの一匹の手が、箱のふたにかかり、ゆっくりとそれがひらかれ…………ずらりと並んだ牙と、長い舌があらわになる。


「ギャ?(え?)」


きょとんとした顔のゴブリンは、その顔のまま……抵抗すらできずに、死を迎えた。

ばくん、と……僕に、頭からかみつかれ、首から上をかじりとられて。


だらん、と脱力するゴブリンの首から下。

それを見て唖然とする、仲間のゴブリンたち。理解が追いついてない。


まあ、エルフ美少女でのお楽しみタイムまで秒読みという浮かれた状況から、こんな想定外の状況に叩き落されたんだから、その心の内は察せなくもない。


が、察してやる義理もない。


さっさとゴブリンの頭部を飲み下し=収納し、残りの体の回収は後にして、そのすぐ後ろにいた奴の首根っこめがけて飛びかかる。


反射的にだろう、そのゴブリンはのけぞってよけようとしたが……それを察した僕は、攻撃手段を噛みつきから体当たりに変更。口を閉じたまま、真正面から突っ込んで激突。

そのまま倒れこんで、上から落下の衝撃で追撃。ヒップドロップの要領で。


……あれ、何か体の下でぼきぼき言って……え、死んだ?

弱っ、ゴブリン弱っ。何、体当たり1発とのしかかり1発で死ぬの?


肋骨コレ全部砕けてるんじゃ……とか考えたあたりで、残りのゴブリンが状況を正確に把握し、パニック状態に陥っていた。


「ギャギャギャギャギャ!」


「ギャギャギ!?  ギギャ、ギギャギャギギャ!!」


「ギャギギギ――」


「あーもう、うるさい!!」


洞窟の壁に音が反響して、予想外に騒音が不快だった。

なので、こないだ開発した新技を披露。


フィギュアスケートのスピンジャンプのように、回転をかけながら跳躍。そのまま、ちょうど箱の底辺の角の部分が当たるように調整して、回りながら突撃。

角の部分を足に見立てての、飛び回し蹴り風タックルである。


一番近くにいたゴブリンの側頭部をとらえ、したたかに陥没させる。

そのまま動かなくなるゴブリン。よし、これで3匹。


「ギャギギャギギャ、ギャギャギャギャギャギャ!!」


「ゴブリンが長文しゃべるな! うるさいしめんどくさい! 訳する側の身にもなれ!」


「訳って何だ訳って」


言いながら、ようやく動き出したフォルテが、手近にいたゴブリンを2体まとめて殴り倒す。


僕に視線を向けているところに、横合いから突如動き出した石像の一撃だったからか、完全にゴブリンたちの警戒範囲外だったようで……クリーンヒット。


1体はその場で死んだっぽいけど、もう1体は息があったので、頭を踏みつぶしてはじけさせてとどめを刺していた。


さらにその直後、尻尾を振るって少し離れたところにいたゴブリンを薙ぎ倒す。

しなやかでありながら。岩石でできているために硬さと重量のある尾の一撃は、さっきの僕の体当たり以上の威力があるだろう。


くらったゴブリンはふっとんで壁に激突したが、それより前に即死していた。


これで5匹。残り3匹はというと……あ、エルフ娘連れて逃げようとしとる。


でも、ここぞとばかりにエルフ娘が抵抗して、うまくいかなくて……あ、ゴブリン殴った。

その勢いで、石の床に倒れ、そのまま気絶したらしいエルフ娘。頭からは、たらりと血。


おい貴様、何僕の目の前で美少女に暴力振るってんだコラ。そんな婦女暴行犯にもはや同情の余地なし、この手で裁きの鉄槌を下してくれよう。覚悟しろこの悪党。


「さっきまで救済と鑑賞の間で揺れてたやつのセリフとは思えねーな」


「何それ忘れました」


エルフ娘を再び袋詰めにしようとしているゴブリンたちを追いかけて、跳躍。

しかし、跳んだ先にあるのは、ゴブリンの背中ではなく……洞窟の石壁。


僕はそこをさらに蹴って(足ないけど)、軌道を修正しつつ跳躍。戦闘を走るゴブリンに突撃し……その足の、膝から下を食いちぎった。


激痛に、絶叫と共に倒れこむゴブリン。


頭食いちぎるつもりだったんだけど、足は止まったしまあいいか。

そのままそのゴブリンにとどめを刺……さずに、再び僕は跳び上がる。そして今度は、別なゴブリンのところに向けて襲い掛かり……しかし、わざと外してまた跳躍。


それを繰り返し、床を、壁を、天井を次々に蹴って、洞窟内を縦横無尽に跳びまわる。

気分はピンボール系ゲームのボール。動くと当たるよー。死ぬよー。


まあ、動かなくても死ぬけど。


下手に動けないこの状況に恐怖し、防御と回避に専念するため、動くことをやめてしまったゴブリンたちを……死角から襲い掛かったフォルテの尻尾が襲う。


さっき足を失った1匹を含む、2匹のゴブリンがこれで死亡。

そして残る1匹は……抱えていた女の子を捨てて逃げ出した。


……が、待ってましたって感じで上から降ってきた僕の一撃(体当たり)で、首の骨が粉砕されて逝った。


ゴブリン8匹、あえなく全滅。

さて、こいつらは後で一応、アイテムボックスにでも回収するとして……


「どうしよっか、この娘?」


「さあな」


洞窟には、僕とフォルテ以外に……体の半分を袋の中に押し込まれた状態の、エルフの女の子だけが残されたのだった。





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