第115話 新しい時代へ
か、風邪ひきました……クライマックス目前で……根性で書き上げましたが。
最近朝晩涼しくなりましたよね。季節の変わり目のようで……皆さんもお気を付けください。
なお、上記の理由で一部パソコンでなく、寝ながらスマホで入力したので、誤字とか変になってたらすいません。
では、第115話、どうぞ。
とりあえず、後日談的な感じにはなってしまうものの、あの後どうなったか、簡潔にまとめておこうと思う。
まず、攻城戦の末に制圧するはずだった王都が既に滅んでいて、王族も全滅していた。
加えて、その後の『魔王ピエンドロラ』との戦いのせいで、宮殿……というか、王都のほとんどががれきの山になって、跡形もなくなってしまった。
そこに住んでいた民達は、多くの犠牲を出したものの、王宮から悪魔やら何やらがあふれ出した段階で散り散りに逃げたらしい。
逃げきれずに殺された者も多いだろう。逃げ出して他の町に流れ着いた者もいるかもしれない。外縁部ギリギリのスラムでしぶとく暮らして生き延びていた、たくましい者達もいた。
そこで、帝国軍、というかアルベルトが真っ先に推し進めたのは、戦後処理の一環として、それらの、国内で『難民』と化してしまった人たちを救済することだった。
王都の治安維持その他のために用意していたプランや兵力、物資その他がまるっと無駄になって余ってしまったので、その分のリソースをこっちに回して、急ピッチでプランを再構築して指示を出し、推し進めていった。
こういう荒れた状態の場所を放っておくと、食い詰めた平民が賊になったりするパターンが多いので、戦後処理としては決しておろそかにしてはいけない部分なのである。
ちなみに王国は思い切りおろそかにしていたので、僕らドラミューザが介入して仕切りだすまで、町にもよるけど治安とかその他諸々は最悪でした。
とはいえ、王城も王都も瓦礫の山と化し、超大規模戦闘の余波で破壊されつくして、何も残っていない。金も、食料も、資材も……人も、だ。
これを、王国に残った少ない資源を集めてやりくりし、さらに帝国側から自腹を切ってでも
最低限の補填を行って、政策を進めていかなければならない。
敵国の領地を切り取ったところで、そこが魔物はびこる危険地域だったり、作物も実らない不毛の荒野だったりすれば、それは勝って得たものでもむしろ損である。
そんな事実を、つらい現実を、帝国はつきつけられていた。
帝国はもともと、外部の資源を目当てに戦争を進めていた。にもかかわらず、さらに資源を消費しなければならない事態に巻き込まれたのである。
『ドラミューザファミリー』の介入である程度国内に余裕はできたとはいえ、これはあまりにも大きい負担だ。
それでも、戦争に勝って占領した以上は、きちんと責任もって納めなければならないのだ。
これからの、王国と帝国の歩む未来は、疑いようもないいばらの道のりになって行くだろう。
………………普通なら、ね。
しかし、である。
今回、この場においては、そんな心配はズバリ、全くの不要である。
どういう意味かって? まあ、まずはこれを見てくれたまえ。
ちょっと長いよ?
【挑戦可能クエスト一覧】(抜粋)
・閉ざされた魔都の門を開け! CLEAR
・指定エリア内の悪魔を15体以上討伐せよ! CLEAR
・ダンジョン『魔都エイルヴェル』を攻略せよ! CLEAR
・エリアボス『魔将・グラシャラボラス』を討伐せよ! CLEAR
・エリアボス『ダークナイトブレイバー』を討伐せよ! CLEAR
・エリアボス『ロイヤルエルダーリッチ』を討伐せよ! CLEAR
・復讐を成し遂げよ! CLEAR
・ダンジョンボス『勇者ミカ・フナイ』を討伐せよ! LOST
・隠しボス『魔王ピエンドロラ』を討伐せよ! CLEAR
・反逆の皇子と逆襲の少女たち CLEAR
『シャープ達は『金貨500万枚』を手に入れた!』
『シャープ達は『エンブレム・オブ・トリエッタ』を手に入れた!』
『シャープ達は『聖剣ブレイブレード』を手に入れた!』
『シャープ達は『死貴王の呪骨杖』を手に入れた!』
『シャープ達は『魔剣グラシャラボラス』を手に入れた!』
『シャープ達は『魔剣アヴェンジャー』を手に入れた!』
『シャープ達は『魔王剣ペンドラヴェノム』を手に入れた!』
(一部省略)
『攻略者チームが『金の黙示録』を所持していたため、報酬が追加されます』
『シャープ達は『トリエッタの宝物庫』を手に入れた! トリエッタ王宮の宝物庫の中身が復活した!』(※過去1年間で最善のタイミングの状態で復活します)
『シャープ達は『トリエッタの武器庫』を手に入れた! トリエッタ王宮の武器庫の中身が復活した!』(※過去1年間で最善のタイミングの状態で復活します)
『シャープ達は『トリエッタの食糧庫』を手に入れた! トリエッタ王宮の食料庫の中身が復活した!』(※過去1年間で最善のタイミングの状態で復活します)
『シャープ達は『トリエッタ王国の機密文書一式』を手に入れた!』
『シャープ達は『金貨2000万枚』を手に入れた!』
『シャープ達は『キー・オブ・エイルヴェル』を手に入れた!』
『シャープ達は『ダンジョンコア』を手に入れた!』
『シャープ達は『聖王剣・千手観音』を手に入れた!』
『シャープ達は『勇紋・アイテムユーザー』を手に入れた!』
『シャープ達は『トリエッタ王国の統治権・神賜』を手に入れた!』
(一部省略)
とまあ、こういうわけだ。
今回のも『ダンジョンアタック』であることには違いない。攻略した報酬は出るし、『黙示録』によってさらにボーナス報酬が出た。
さらにさらに、僕のとアルベルトの2冊分で二重にドン!
結果として、とんでもない額の金貨を始め、金銀財宝、秘宝級の武器防具、マジックアイテム、そして何より使いきれないほどの物資が『攻略報酬』として手に入った。
しかも、それら物資というか、トリエッタ王国の、過去1年間で最善の状態だった時の国庫の中身が復活して僕らのものになって……さらにその枠が『黙示録』枠の報酬だったもんだから、これまた2倍になってるんだ。僕とアルベルトで。
2倍にならなかったものもあるけど、それにしたってねえ?
うん、もらえたのは嬉しくないわけじゃないが……ぶっちゃけ多すぎる。
何万トン、何十万トンもの食料とか資材なんて、使い方思いつかん。さすがに手に余る。
ってことで、基本的にこれらの大部分はアルベルトに一任することにした。
アルベルトもぽっとこんなもん任せられて、いつもの笑顔が引きつってたけど……この局面では正直助かるものであるのも確かだ。ちょうど、王国と帝国の双方の情勢を安定させるために、資材その他を大量につぎ込まなきゃいけないところだったから。
戦後統治のための費用とか物資を捻出するのは、彼曰く、下手すれば戦争そのものよりも大変な作業だ、という話だったが……思わぬ形で一気に解決したわけだ。
あとは、アルベルトとその部下の人たちの手腕次第だろう。
そうして、アルベルトは『攻略報酬』として手に入った資材を使って戦後復興のプランを練り直している。
現在は、とりあえず応急処置的な対処として、炊き出しや生活必需品の支給を始めたり、仮設住宅を用意してそこに一時的に入ってもらったり、という感じで、王国・帝国問わずまとめて面倒見る形で復興に着手している。
それらのうち、物資の作成・提供や、仮設住宅の建設に関しては僕が一枚かんでいる。
毎度おなじみ『箱』デザインのそれを、『眷属』を使って大量生産して一気に増やしているため、1週間以内に、把握できている分の難民たちに関しては収容できる見込みだそうだ。
それ以外にも、最早『跡地』となってしまった王都の後始末や、各種インフラの整備、統治網の構築等、やることは山積みである。比較的楽になったとはいえ、しばらくアルベルト達帝国首脳陣は、忙しい日々が続くだろう。
もっとも、僕らだってそれは同じだけどね。今回の戦いでボロボロになった王国を、裏から支えていかなきゃいけないし、今後は帝国にも網を伸ばすことになる。そのためにやることは、やはり多いのだ。
それでも、この戦いの規模から考えれば、信じられないほどのスピード、そして順調さで復興は進んでいる。王国がかつての賑わいを――レガートの思い出の中にあるような『まともな』賑わいを、という意味で――取り戻すのも、そう遠い未来じゃないだろう。
☆☆☆
そして、終戦から1ヶ月が過ぎた頃。
王国は、順調に復興が進んでいる、という事実を……そこらへんをちょっと見渡すだけで、部外者だろうと簡単に悟ることができるまでになっている。
家を、故郷を失い、難民になってしまった者達も、家や故郷は無事でも、戦争のしわ寄せで苦しい生活を続けていた者達も、皆、最低限の衣食住は保証された暮らしを続けていられている。
『衣』は、粗末ではあるが清潔な衣服を配って行きわたらせた。
『食』は、炊き出しに加え、軍とか国庫で用意されていた品を、腐るともったいないから払い下げする形で方々に流出させ、国内に行きわたらせた。直接配ったりもしたけど。
『住』は、さっきも言ったように『箱ハウス』をあちこちに作っている。『眷属小箱』で作った僕の眷属に、『悪魔のびっくり箱』の能力の一部を持たせて、信頼できる人や部下に限って持たせることで、各地で急ピッチで設置を進めることができた。
素人が建てるようなあばら家よりもずっと頑丈で、隙間風もなく、熱も冷気もある程度とはいえ遮断する箱ハウスは、思いのほか好評で、『ずっと住んでいたい!』とまで言う人が続出だった。
……まあ、今までがひどすぎたからっていう理由が大半を占めてんだろうけど。
そうやって市井の復興を進めつつ、アルベルトは、この短期間で王国の統治システムを見直し、再構築して、すでに仮にではあるが、新システムで始動させている。
現状既に、従来の王国の統治よりもよっぽどうまく回っているそうだ。
もちろん、その途中で色々と問題が起こったりもした。
配給物資の横流しを考えるバカとか、無政府状態に乗じて火事場泥棒や震災便乗犯罪的な行為に走ろうとするアホは、どこにでもいるもんだ。
もちろん、その中には生活する糧を得るためにそうしている、あるいはするつもりの奴もいるのかもしれないが、だからって見逃したり仏心をかけるわけには行かないので、きちんとひっ捕らえている。
そもそも、そういう人たちも、求めれば必要な分は物資はきちんと提供されるんだから。
で、そういう裏社会サイドを取り仕切っている我々『ドラミューザファミリー』も、主にそういう場面で多忙を極めているわけで。
元から僕らの手が入っていた地域ではほぼ大丈夫だったものの、王都やその周辺といった、王族、貴族のお膝元だったがために腐っていた地域に、急ピッチで裏の影響網を築き上げ、それを表にも引っ張り上げて、牛耳ることで管理している。
ブラックマーケットも見張って、悪質な横流しその他がないように目を光らせてる。
アルベルトら、正規軍や表のお役所の目や手が届かないところは、特に重点的にだ。
この1ヶ月それを続けて、表を帝国政府が、裏を『ドラミューザファミリー』が牛耳るという、当初から予定していた構図は、すでに一定の区切りを迎えるまでに……おっと、違った。
『帝国政府』じゃないんだっけね……もう。
さて、話があっちこっちに飛んでしまうんだけども……今日、戦後復興の区切りであり、新しい時代の到来のシンボルともなるであろう、あるイベントが行われている。
それは……アルベルトの『戴冠式』だ。
つまりは、国の元首として正式に即位する際に行われるイベントなわけだが……戦時中ということもあって、アルベルトが即位当時に行った式典は、簡易的なものだった。
復興も進み、王国・帝国領土双方に余裕も出て来たので、ここらで『もう戦争は終わったのだ』『これからは平和な時代になる』っていうアピールもかねて、この式典を行うことになった。
ただ、当初予定されていた、『ゲルゼリア帝国』の戴冠式ではなくなっている。
というのも、今回帝国は王国を併合したんだけど、それを機に国全体の名前が変わることになったのだ。
王国も帝国も、元は今よりもっと小さい国だった。それが、ここ十数年の間に戦争を繰り返し、領土を広げていき……大陸有数の大国になった。さらにその2つが、今回1つになった。
全体を統治するなら、その中の1つだった国の名前を使うより、統一のシンボルとして全く新しい名前をつけるのもありじゃないか、って話になったのだ。
それに、これからアルベルトは、今までの王国とも帝国とも一線を画する方法で統治を行って行くことになる。そりゃ、基本的なところは色々と踏襲するだろうけど、この広大な国土をまとめていくために、どんどん革新的で効率的なやり方を取り入れていくつもりなのだ。
だから、いろんな面で今までと変わるこの機会に……名前も変わるらしい。
わからなくもないけど、随分と簡単に決めるもんだ……まあ、地球でも似たようなことは今までいろんな国であったと思うし、そこまで気にすることでもないか。
名前負けならぬ『政策負け』『目標負け』しないように、これからがんばって行けばいいんだし。
そういうわけで、今まさに『戴冠式』が行われている。
場所は、今後この国全体を管理していく中心地となる、帝都だ。
そこに、宮殿を一部改装する形で用意された会場で……式は進んでいった。
細かいところは省くが、思いのほか厳かで静謐な雰囲気の中で、滞りなく式典は終了。
これにてアルベルトは、正式にこの国の頂点に立ったことになり……就任のあいさつ的な感じで、スピーチが始まった。
魔法で声が大きくなっていて、広場の隅々まで届―――いや、違う。これアルベルトの『戦略魔法・智』と同じ感じだ。どこにいても大きすぎず小さすぎず、適正な音量で聞こえてくる。
『この場に集ってくれた諸君ら全員と共に、まずは、今日という日を迎えることができたことを喜びたいと思う! 今日から、我々は新たな歴史を歩み出すことになるのだ!』
全校集会の校長スピーチみたいなことになるのかな、とか思ってたけど、思いの他引き込まれる内容だったので聞き入ってしまった。アルベルト、相変わらずスピーチ上手いな。
さすがに全部説明しようとすると足りないけど、簡単にまとめれば、これから先、新たな時代を作り上げるために皆で協力していこうとか、かつての因縁を忘れろとは言わないが、自分の子供や孫たちのために乗り越える強さを持とうとか、そんな感じのことだ。
奇麗事である旨を否定することなく、しかしこの先の未来を皆で作っていくには必要であることとして、自分に協力してほしい、という形にすらして、アルベルトは聞いている者達に呼び掛けていった。
その様子を……僕ら『ドラミューザファミリー』関係者は、会場の外、というか後方に区切ってスペースを設けられた特別観覧席にて、見守っていた。
一緒に戦って、苦難を乗り越えた……付き合いは短いけど、信頼できる『仲間』と言っていい関係にまでなった男の、晴れの日を。
『最後に、今日ここから始まる新国家……大陸最大の超大国『ドラウィントリア帝王国』の前途が、その未来を共に歩んでいく者達全てにとって明るいものであることを祈って! この私……帝王国初代『帝王』アルベルトの言葉とする!』
☆☆☆
「やれやれ……予定してたこととはいえすごいとこまで来たもんね、『帝王』陛下?」
『戴冠式』の数時間後。
帝都は宮殿の一室。防音その他、セキュリティを完璧に整えたその部屋で、僕らは雑談なんかしながら、まったりとした時間を過ごしていた。
さほど大きくはない部屋。中央に置いてあるテーブルは、僕ら全員――無機物5体、生身4人でついてちょうどいいサイズだ。
けど、部屋も卓も、そのくらいの大きさの方が、無駄に堅苦しい感じがなくていい。
今は、言ってみれば公私の私。皆でゆったりまったりリラックスして過ごそう、って感じの時間なんだし。……お誕生日席にすわってる、さっきまで演説してたアルベルトも含めて。
「呼び名もさ。『国王』+『皇帝』って感じでいかにも強そうっていうか……盛りすぎてちょっとダサく見えなくもないけど」
「自覚はなくはないが、権威というものはなるたけわかりやすい方がいいのさ。それに、自分で言うようなことでもないかもしれんが……それに見合った働きはしただろう?」
「確かにな。王国と帝国……2国間で起こっていた戦争を終結させ、さらにその両方で、驚異的な速さで復興政策を推し進め、すでに半ばという所まで来ている。さらに、それら2つを合わせた、これだけの規模の超大国を立ち上げ、それを現時点とはいえ完璧に運用をこなしている。名実ともに、稀代の名君と言って差し支えない功績だ。後の世の歴史家もそう評するだろう」
と、レガート。
「と、いいつつ……大部分は、お前達の協力があって成し遂げられたことだがな。それは重々承知している。残念ながら、それを全て公にするわけには行かないが……」
「わかってるって。元々そのつもりで一緒に戦ったんだし」
と、ビーチェは言う。
「それに、表の身分や権力は、持ってれば確かに便利だけど……その分しがらみも増えるしねぇ。ロニッシュ伯も、その辺の細かい調整とかやり取りとか、だいぶ苦労してたっけ」
ピュアーノも昔を懐かしむように言う。続けて、ビーチェとレーネも、
「お父様のやり方や立場を悪く言うつもりはないけど……でも、だからこそ私たちはこれでいいのよ。無位無官の方が、余計なしがらみや事情、義務なんかに縛られなくて済むし。要するに、国家とかにわざわざ保証されなくてもいいくらいの力があればいいわけでしょ?」
「だったらそりゃ、私らにそんなもんいらないわよね。これも予定通りのことだけど……今もう、王国全体と、帝国の3分の1くらいの裏社会は、私達で仕切ってるようなもんだし」
そのまましばらく雑談が続いて……ふと、静かになる。
何か理由があってってわけじゃないけど、単に会話に間が空いて……そこで、何か皆して、色々と考えてしまったためらしい。
沈黙の中で、最初に言葉を発したのは、レーネだった。
「何か……この1年ちょっとくらい、かな? すっごい駆け足でここまで来たわよね」
「確かに……そうだな。あの時……エルフの里を出て、旅を始めてから……まだそのくらいしか経っていないのか」
そう言うレガートも、レーネと同じように、今までのことを思い出しているのかもしれない。
そして、彼女達のセリフを聞いて、僕も、フォルテも多分、思い出していた。ここまで……そりゃもう、勢いよく走り抜けてきたもんだな、って感じの日々を。
僕の場合は……前世の死から、『箱』の体に転生して……あれが全ての始まり、だな。
罠モンスターとしての職務を放棄して、ダンジョンを勝手に探検しだして……そこで出会った麒麟おじいちゃんから、色々なことを教わって。その死を看取った後は、旅に出て。
フォルテと出会って、戦いだか漫才だかわからないやり取りをして、そのまま分かれたと思ったら、また外で出会って、
そのすぐ後、エロゲー展開一歩手前だったレーネを助けて、雑談してたらレガートがそれを連れ帰って、
偶然その後再会した2人を助けて、なりゆきで一緒に行くことになって、
そのまま、いけ好かない奴多数のエルフの軍団に加勢して、オークとかオークキングとかアークデーモンとかと戦って、ああ、その途中で進化もしたし、レーネにテイムもされたっけ。
生き残ったエルフ達と、王都『エイルヴェル』についたと思ったら、超廃れてて、
そこで、レガートの古い知り合いで……なんとレーネの腹違いの姉だったビーチェや、その仲間たちに出会って。
そしたら、遊んでるうちに、人形だったリィラが魔物化して。
そこで挑戦したダンジョン。初めてのダンジョンアタック、完全攻略……ああ、フェルの鎧もそこで手に入れたんだっけな。
その後、夜中に攻め込んできた帝国軍。逃げ出したけど、帝国の悪魔から追われるし、王国から勇者まで出てきて……絶体絶命のところで、『合体』してどっちも撃退。
そこから、ブチ切れたレーネとビーチェ主導で、裏組織として活動を始めて……ホントにマフィアかやくざみたいな感じで勢力を拡大。『ドラミューザファミリー』なんて名乗って、裏社会でのし上がっていった。
……っと、その前にアルベルトと知り合ったじゃんね。
あの時はびっくりしたなあ……僕以外に『黙示録』を持ってる奴、初めて見たし。
さらにその後、どんどん勢力を拡大していく中で、手に入れたアイテムでフェルとピュアーノが復活して……その後、帝国にも手を出し始めたところで、正式にアルベルトも仲間になって。
そこで、この9人がそろったんだっけな。
後は……いいか。ごく最近のことだし……一言でもう言ってしまえば、ダンジョンを攻略して、戦争に勝って、そして復興進めて、今ここだ。
そうして、雑談しつつ今までのことを思い返していたら、誰からともなく、皆笑っていた。可笑しそうに『そんなこともあったねー』『そんなことあったのか』と。
「……私達らは私達で、とんでもない道のり歩んできてるね、これ。元貴族令嬢とはいえ……スラムでの暮らしを体験した後に、ダンジョン攻略したり、悪魔だのドラゴンだの、正規軍だのと戦って……今じゃこんなマフィアのボスだの幹部だのってさ」
「それ言ったら私なんて、単なるエルフの隠れ里出身の田舎娘よ? お金の数え方だって最近まで知らなかったんだから」
「カート様―――ロニッシュ伯が、今のレーネとビーチェを見たら何を言うかしらね? こんなに立派になって……喜んでくれるかしら? よく育ててくれた、って」
「いやあ……確かに立派ですし、もう何なら、ご健在のころの伯爵様どころか、国王とかよりすごい権力やら何やら持ってますもんね。むしろ、驚きすぎて何も言えないんじゃないでしょうか?」
「だが、成し遂げたのは間違いなく偉業だ。これだけの規模の国家の『裏』の元締めとして、治安の維持や国家運営の下支えを担うまでになったのだからな……過程はだいぶアレなのは否定できんが」
姉妹に加え、ロニッシュ家家臣出身の3人も、そんな風に話す。
その様子を、僕ら無機物組トップ3とアルベルトは、ほほえましげに見ていた。
家族や、家族ぐるみで中のいい仲間たちが、こうして楽しく語り合えている。そういう時間を、平和な中で過ごすことができている。
きっと、エルフの里や、あのスラムにいた頃じゃあ……決して持つことができなかった時間だ。あそこから、皆で手を取り合って、未来を切り開くために皆で戦って、働いて、がむしゃらに頑張りまくってここまで来て。
間違いなく、この平和で穏やかな時間は、そうして僕らが勝ち取ったものなんだな。
……ま、レガートがちらっと言ってたように、話してる内容や、たどってきたプロセスは物騒だけど、もうそのへんは気にするまい。
僕らの視線に気づいたか、あるいはふと思い出したかはわからないけど……『さて!』と柏手1つ打って、ビーチェは話を切り、皆の視線を集めた。
「思い出話はまだまだあるけど、今日はまずこのへんにしましょ! 私達もアルベルトも、まだまだやることいっぱいあるし……暗くなる前に、私達も帰らなきゃ」
「せわしないもんだな……まあ、仕方ないか。『ドラミューザ』の拠点は旧王国領の中部、ここ帝都ではないわけだからな」
「そゆこと。今言ったように、やること多いからさ、1日1日、きちんと仕事片づけてかないと、後から苦しくなるでしょ? 私ら今、王国と帝国の半分を、裏から牛耳る立場なんだし」
「あらためて言葉にするとすごいよね、それ……最初、レーネとレガートが旅に出たのって、森の中じゃ学べなかった色々なことについて見分を深めて経験を積む、とかだったと思うんだけど……気が付いたら、大陸最大の超大国の裏の支配者でした、って……うん、意味わかんない」
「いいのよ、そんなもんは……ぶっ飛んでても意味わかんなくても、それが今の私達で、私達の『居場所』なんだから。色々失って、傷ついて、それでもあきらめずに皆で頑張って……1つ1つ積み上げて、築き上げて、勝ち取った居場所なんだから」
「そ。だから、裏社会だろうがマフィアだろうが、胸張って皆で平和に暮らしてやればいいの。貴族やってふんぞり返って何もしてないような連中よりよっぽど生産的で、社会の役にも立ってるんだから。そして……これからもその平和を維持するためにも、きちんとやることやらないとね?」
心の底からそう思って疑っていない様子で、レーネとビーチェはそう言い切った。
『ダンジョンマフィア』の女ボスと、その右腕であり妹である少女の、あまりにも年相応な笑顔に、僕ら一同、『今日まで頑張ってきてよかったな』という気にさせられた気がした。
いやもちろん、僕らもこれからも頑張るけどね? 引き続き。
せっかくここまで一緒に来たんだし、これからもとことん付き合おう。
『杯』を交わした仲間として、『ドラミューザファミリー』の最高幹部として……ああ、あと僕の場合は、引き続き、彼女達の『拠点』でもあるわけだけど。
次回、最終話になります(一応)。