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転生箱道中 ~ダンジョン異世界で僕はミミックでした~  作者: 和尚
最終章 この異世界というエリアで
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第113話 最終決戦



現在進行中ではあるが、間違いなく……これまでで一番の死闘だ。


二面四手ならぬ、三面六手ならぬ……六面十五手の異形の『魔王』。

鑑定の結果、『ピエンドロラ』とかいう名前らしいそいつは、数値から見てもとんでもないレベルの戦闘能力を持っていて……実際今、僕らはそれを痛感していた。


現在、僕らの周囲は、瓦礫の山になっていた。

さっきまで『城』と呼べる場所だった面影は、視界の端にちょこちょこっと残っている程度の、城壁とか塔とかの残骸くらいにしか見られない。


これまでの戦闘で、その流れ弾や余波で、全て粉々に砕けてなくなってしまっていた。


「やべ、またでかいのが来る! 2人とも僕の後ろに!」


僕らの目の前で、ピエンドロラがまるで祈るように手を合わせ――しかも、顔の前、胸の前、頭の上の3か所で、計6本の腕を使って――その体から膨大な魔力が立ち上る。

さっきからもう何度も目にしている、こいつの魔法発動の前兆だ。


直後、ピエンドロラの頭上に巨大な魔法陣が現れ、そこから暗い青色をした衝撃波が全方位に向けて吐き出され、こっちに向かってくる。逃げ場がない。


僕はそれを、目の前に城壁を出現させる『城壁フォートシールド』で、フォルテとリィラをかばいながら防御するが……


――ズゥ……ン!


「あっ……ぎぃ……!」


正直、きつい……!

こいつの魔法力は8000オーバー……僕の魔法力の倍以上だ。いくら城壁自体に厚みがあっても、この威力の攻撃を受け止めるのは正直厳しい。


防御力の分を多少は加味できるとしても……それだって3000以上上を行かれてるのだ。


それでも耐えられてるのは、レーネやレガート、アルベルトといったメンバーが、各自持っているスキルをフル活用して支援バフをかけてくれるからだ。その場その場で必要な能力に絞って……例えば今の場合は、魔法防御系の能力強化を重点的にやってくれている。


さらに、出現させる城壁は僕の一部であり、カスタムが可能だ。僕はその素材として、『カレアデラ鉱山』での採掘で大量にストックのある、魔法に強い抵抗力を発揮する金属を練り込んで強化し、どうにか倍以上の能力差をだましている。


それでも、まともに受ければ大概一発か二発でシールドにした城壁にガタが来るので、即座に収納して修復、を繰り返している。下手な戦争よりハイペースで資材消費してるな……けど、もったいないなんて思っているひまはない。少しでも躊躇ったり、打つ手を間違ったらマジで死ぬ。


そして今、外に出てこいつと戦っているのは、さっき言った通り、僕とフォルテ、そしてリィラだけだ。他のメンバーでは、ちょっとどころじゃなくきついので。


特に生身メンバーがやばい。冗談抜きに、余波だけで死にかねない。

ほぼ全員、能力3桁のところを……攻撃力、魔法力共に4桁後半のこいつの相手は無理だ。


なので、レーネ、ビーチェ、レガート、アルベルトの4人は、全員僕の中に入ってもらい、そこから支援系の魔法やスキルを使って援護してもらっている。


で、残る2人……フェルとピュアーノについては、外には出ているが、サポートに徹している。


具体的に言うと、今現在、剣になったピュアーノをリィラが装備し、フェルは鎧として僕が装備している。こうするのが一番効率がいい。


主にタンカーを買って出ている僕は、敵の攻撃を受ける機会が多いので、フェルを装備することで硬さを上げている。こうすると、フェルのすさまじいまでの防御系スキルを僕も使えるので、より一層守りが堅牢になるのだ。

逆にコレがなかったら、あんなでたらめな魔法攻撃何発も耐えられなかったし。


一方、ピュアーノを装備しているリィラは、高速で飛び回りながら撃ったり斬ったりして攻撃している。ピュアーノの分の攻撃力が上乗せされて強化されているので、そこらのモンスターなんぞ問題にもならない威力の魔力弾を連発しているはずだ。


が、それでもなかなかピエンドロラに対しての有効打にはなっていない。

当たり前だけどね……なにせ防御力も5000超えてるし、魔法力はさっき言った通りだ。魔法関係の防御性能は、この2つの複合で決まるから、こっちの攻撃がろくに通らない。


主に、実体のある質量弾を使うことで対処しているものの、焼け石に何とやらだ。


おまけにこいつ、障壁までまとってるから、さらに威力削られてるし……まあ、これはその都度、リィラが手に持っているピュアーノの障壁破壊能力でぶっ壊してるから、対応できてないわけじゃないんだけど。


残るフォルテは遊撃役だ。機動力はあるし飛べるから、上手くリィラと連携して攻撃に加わってるものの……体の大きさの関係で、フェルやピュアーノを『装備』できないため、彼の身単独て戦う形になっている。


ただ、僕が召喚した眷属――しかも、進化してから作れるようになった、僕の前の種族である『王宝牙棺キングギフト』――を変形させて巨大な盾にして持たせているので、いざって時に身を守ることはできている。大体2、3発も防ぐと、耐えきれなくなって消滅しちゃうけど……。


そうこうしている間に、放たれていた衝撃波は止んだ。


一応念のために安全を、というか、フェイントで追撃が飛んでこないかとかを確認した上で僕は城壁を消し、即座にスキルで修復する。同時に、僕の中にいるレーネ達が回復系の魔法やスキルで掩護してくれているのを感じた。


さらに、僕が城壁を消した瞬間、音を置き去りにするかのような勢いで、フォルテとリィラがそれぞれ逆方向に飛んで、ピエンドロラを左右から挟み込む形になる。


そのまま始まる集中砲火。


フォルテは全身からミサイル発射、口からはレーザーブレスまで放っている。拡散構造で放っているので、その攻撃範囲はピエンドロラの全身を飲み込むほどだ。


リィラはメイン武器のガンブレードから、最大威力まで強化した弾丸を雨あられと連射。

それに加えて、背中に生えていたあの機械仕掛けの翼が分離し、さらに6つのパーツに分かれて周囲を旋回。独立した動きで飛び、移動砲台よろしくビームを放っている。


無論、僕も休んでるわけじゃない。城壁を、今度は左右に広く展開し、そこにありったけの砲台やバリスタ、ランチャーミサイルやガトリング、投石器やアンチマテリアルライフルまで、もうホントにあるだけを並べて撃ちまくっている。


ほぼ絨毯爆撃、あるいは大空襲レベルの酷い火力が打ちまくられている。

周囲への被害何か考えてないので、わずかに残った王城の名残も無残に巻き込まれて砕け散っていく。まあ、それ以前に向こうの魔法であらかた壊れてんだけど。


にも関わらず、ピエンドロラには大して痛打になっていないと来た。


ちなみに、さっきまでは僕らがさらにスキルで、戦車型や歩兵型の『眷属』を召喚して作り出して、戦車大隊みたいにして砲撃に参加させてたりしたんだけど……例によってこいつの範囲攻撃であっさり全部消し飛ばされるので、繰り返すだけ無駄だとしてもうやめている。


『やんなるな全くもう……どうやってもろくにダメージ通らない。しかもすぐ回復しちゃうと来た……こんなもんどうやって相手すればいいんだよ』


『ありえない程硬い上にすぐ回復する、か……なるほど、今まで俺やシャープを相手取った連中はこんな風な心境だったんだろうな。勉強になる』


『できればしたくない経験だったのですよ……時にシャープ? その『どうやって相手』云々に関してですが、その手段としての筆頭候補は……まだ使えそうにないのです?』


『……感覚だけど、まだっぽい。ちっくしょう……誤算だったわ。まさか……『合体』が使えなくなるなんて』


……そう、今さらっと言った点が、この場面において最大の問題になっている点である。


能力値からして勝負にならなそうな……それこそ、あの『グレーターデーモン』を相手取った時以上の絶望的な現状、打破するにはもう『合体』しかない、と、すぐに僕らは思った。


思ったのだが……できなかったのだ。


理由は単純なもので……前にもそうだったけど、アレ、スキルとしての『合体』を使うには、条件を満たす必要があった。

それが……進化したことで、よりハードルが上がってしまったのである。


前までは、熟練度みたいなものも影響してただろうけど、任意に合体することすら可能だったにも関わらず、今はもう不可能になっている。

感覚でわかるのだ。やろうとしても失敗する……って。


なので、早く条件満たしてくれ、と祈りつつ、このまま3人で戦っている。


すると、撃たれるがままだったピエンドロラが、再び手を合わせて魔法陣を形成し……今度は範囲型じゃなく、もっと狭い範囲に、しかし強力な一撃を放つタイプの攻撃をしてきた。


直径にして3mはあろうかという大きさの火炎弾、


空間をゆがませるほどのエネルギーが凝縮された魔力の刃、


凝縮し、槍の形をとらせた電撃の投擲、


地面から尖った岩塊を隆起させる奇襲攻撃、


その他色々……当たれば1発でも致命傷になりかねないレベルの攻撃も含まれていたが……僕らにしてみれば、かわすのはさほど苦労するようなことじゃない。

そのくらいの機動力も反応速度もある。この中で一番その辺で劣っている僕でもだ。


むしろ、かわしながらその間を縫って接近し、攻撃することもできる。


今も、魔法陣から発射される火炎弾をかわしながら接近したリィラが、手に持っていたピュアーノの剣を振るって障壁を破壊。剝き出しになったピエンドロラに向けて、もう片方の手に持っている機械銃剣から弾丸を連射。


さらにそこを狙ってフォルテも攻撃する。ミサイルとブレス、時々尻尾や、腕のブレード。


その2人を、ピエンドロラが光の刃(巨大)で振り払って遠ざけたところで……今度は僕が接近して、至近距離から顔面に『タワーパンチ』を叩き込む。6つある内の1つにだけど。


最初は右で、今度は左で、また右、左……と繰り返し、ピエンドロラが反撃に転じる兆候が見られたら素早く退く。


こんなことを繰り返してるんだけど……一向にこいつが弱る気配がないんだよな……。


というか、気のせいであってほしいんだけど……


(何かこいつ、だんだん強くなってきてるような……?)


魔法の威力、攻撃範囲、魔法発動の速度……気のせいじゃなければ、徐々に上がってきているように思える。精神的に僕らが疲労して、対応するのが難しくなってきているだけ、とかならまだいいんだけど……いや、よくはないけど。


それに……周囲に比較対象がないからこれもわかりにくいけど、サイズも気のせいか……


……あんまりやりたくなかったけど、再度こいつを『鑑定』してみると、



★名 前:魔王・ピエンドロラ

 種 族:根源悪魔ジェネシスデビル蠢蠱ワーム

 レベル:100

 攻撃力:6674  防御力:5564

 敏捷性:3035  魔法力:8431

 能 力:???(鑑定できません)

     希少能力『最上級魔法適正』

     ???(鑑定できません)

     ???(鑑定できません)

     ???(鑑定できません)

     ???(鑑定できません)

     特殊能力『封印』

 備 考:能力限定(59%)



やっぱり……能力が上がってる。どういうことだコレ?

レベルこそ変わってないが、全部の能力が少しずつ……さっきの正確な数値を覚えてるわけじゃないけど、敏捷性は2000台だったはずだし。


さっきまで全部『???』だったスキルも、一部鑑定可能になってて……しかもその最後に、見覚えのあるスキルが……

そして、最後の備考欄。『能力限定』って何だ……? 59%?

名前からして、あんまりいい予感はしないものではあるが。主にこれからの見通しに。


『……これはあくまで、私としても聞きかじりの知識でしかないのだがな、シャープ』


と、僕の中にいるアルベルトが、不意に声を届けてきた。


『まだ兄上たちが存命だった時代、強力な悪魔を召喚する時に稀にあったらしい事例なのだが……強力な悪魔は、この世界に召喚されてから馴染むまでに時間が必要なのだそうだ。個体差はあるが、数時間から数日かけて体がなじむことで、本来の力を発揮できるようになるらしい』


『……つまり何か? あいつはさっきまで、というか今も、その『馴染む』作業が残ってたから全力を出し切れていない状態で、ここからさらに徐々に強くなっていく可能性があると?』


『恐らくな』


……最悪だ。

仮に、あの『59%』っていう数字がその『馴染む』の度合いだとしたら……あとおよそ1.5倍ちょっと強くなるのか、アレ。

今でも結構ギリギリなのに、これ以上はちょっと考えたくないレベルなんだけど……


……しかし、そんなことを考えていた僕の目の前で、それすら考えられなくなりそうな、考えることを許してもくれないのかって感じの展開が訪れる。


三度みたびピエンドロラが手を合わせ、今度は……今までで一番やばい量と密度で魔力を練り上げ始めた。一拍遅れて頭上に魔法陣も現れる。


この感じは……初めての魔法だけど、大体の傾向は感じ取れる。

範囲系。それも……込められてる魔力量からして、威力自体もさっきまでの単体あるいは狭い範囲が対象のそれと同等、あるいはそれ以上の威力だ。


ついに恐れていたものが来た……よけることも出来ず、防いでもほぼ間違いなく致命傷になりかねないレベルの魔法。


食らえば恐らく、ありったけのバフをかけていても、持たないだろう。この中で防御力最強の僕が、フェルを装備しているこの状況であっても。


まさに、絶体絶命。


こうまで確定的な、避けられない『死』というものが目の前にあると……逆に落ち着いてくるから不思議だ。逃れようのない現実を前に、本能がそれを覚悟しているような感じ。

どうあがいても避けられない。ならいっそ、あきらめて納得してしまえ、と。


実際、刻一刻と迫ってくるその瞬間を前に……僕は盾を構えることもできないでいる。


リィラもフォルテも、僕の影に隠れることはできず、僕の中にいるレーネ達からも、バフの1つもかかってこない。

多分……皆、同じことを考えてるんだろう。


この、圧倒的な力の前に、無駄な抵抗はやめて、運命を受け入れて……


……受け入れて……


…………受け入れ、て?




(ふっざけんな! 受け入れてたまるかそんなもん!)




はいここまでワンセット。

諦めたと思った? 運命を受け入れたと思った?


受け入れられるわけないだろんなもん!

嫌に決まってるだろ死ぬなんてそんなの! まだこちとら生後1年とかそこらだっつーの! まだまだ全然生き足りないっつーの!


僕はあのダンジョンから出て、気のいい仲間たちと出会って、色々困難も乗り越えて、進化して、色々好きなようにできるようになってきたところで!


フォルテも、いけすかない口だけのご主人様から解放されて! 支配されずに自分で自由に、好きなように生きるようになって、僕らとバカやりながらここまで来て!


リィラは、大切にされてた人形から魔物になって! レーネやビーチェと一緒に生きられるようになって、彼女達と過ごす時間がすごく大切だってこの前言ってたし!


レーネは、つらい差別されてきた生活から抜け出して、自分の足で歩み始めた上に、死に別れたお母さんと再会して一緒に歩み始めたところだし! 復讐もやり遂げたばっかりだし!


ビーチェも同じく復讐やり遂げて過去にけじめをつけたところで! スラムの苦しい暮らしから抜け出して今の地位と居場所を手に入れて、人生リスタートしたところで!


ピュアーノは生き返って(厳密には違うけど)、レーネ達と2度目の人生を楽しく歩み始めたところだし、同僚のレガートとフェルも一緒に色々話したりしながら、彼女達を見守るのが楽しそうだし!


アルベルトだってようやく帝国の天下取って、これからさあ頑張って王国も帝国もよくしていくぞって、部下の人たち共々意気込んでたところで!


そんな、皆にとって道半ばもいいところで! こんなところで! 終わってたまるか!

納得なんかできるわけないだろうが!


確信できる。この時……僕らの気持ちは1つになったと。




『お前なんかに! 僕(私)(俺)の命……くれてやってたまるかあぁああぁああっ!!!』




――――そして、その時が来た。


なんとお約束的、ご都合主義的な展開だろうか。

最大のピンチと同時に……最大のチャンスもまた、訪れた。


待ちに待っていた……こんなアナウンスと共に。




『特殊能力『合体コンヴァイン』の使用条件『契約関係』『種族適正』『合体メンバーのレベル差一定値以内』『合体メンバーの位階同一』『絶体絶命』『心からの絆』『最終決戦』『巨大戦』『ラスボス級の敵』を満たしました』

『能力発動により『???』に合体進化が可能です』




やっと来たぁ! 待ってました!


久しぶりだ、頭の中からガンガン響いてくるこの感じ! あ、いや頭痛とかじゃなくて。


さっきまでは無かった『確信』が!

上手くいくという『確信』が! 今、僕の中に満ちている!


しかも、何だろうこの感じ……今までと違うぞ?

何だろう、今までと同じじゃ物足りないような……ああ、もしかして。


そうか、そういうことか……なるほどね。

そりゃ確かに、折角……仲間が『増えた』んだもんね。参加させなきゃもったいないよね。


そんなことを考えている間に、どんどんピエンドロラは魔力を練り上げていく。

よく見ると、さっきより多い、腕10本を使って手を合わせている。その分なのかどうかは知らないが、発動すれば、間違いなく防ぎきれず、僕ら全員消し飛ばされるだけの魔法攻撃が……そうだな、10秒もしないうちに放たれるだろう。


が、それに対する恐れはもうない。

見ると、レーネやフォルテも同じのようだ。感じ取ったんだろう……さっきの僕と同じ感覚を。この戦いを終わらせることができる切り札が、僕らの手の中に納まったのを。


……いや、訂正。

どうやら……感じ取ったのは、レーネとフォルテだけじゃないようだ。


残りの2人も、感じ取ったようだ。

初めてのことだから、困惑しているのがわかるが……何をすればいいかは、スキルを通じて大体把握できているらしい。話が楽でいいや。


さて……もう時間もない。というわけで……それでは皆さんご唱和ください。


いっせーの、




『『『『『超・無機物合体!』』』』』




直後、とうとう放たれたピエンドロラの攻撃……さっきの衝撃波が笑えるくらいの威力の光の奔流は……僕ら5人(5体)の体からほとばしったエネルギーにかき消され、届くことはなかった。


その、単なる余波でありながら、天を突く竜巻のようになっているエネルギー渦の中で、結果的に攻撃から守られながら、僕らはその姿を変化させていく。

しかし、そのプロセスは、今までの『合体』とはだいぶ違うものだった。


僕の体が、『機人モード』から元の姿……禁宝魔城パレスオブパンドラとしての巨大な城に戻る。そしてその中に、格納されるように、皆が吸い込まれて行った。


剣の姿になっているピュアーノと、鎧の姿になっているフェルは、左右対称に建っている塔の窓の中に吸い込まれて消えた。


巨大な鋼のドラゴンであるフォルテは、城の中央に備え付けられている、ヘリポート的な高台……が、左右に開いてできたスペースに入り、そのまま入り口が閉じて格納された。


その奥にある、ひときわ高いところにある、展望台みたいな感じの塔の窓に、リィラが吸い込まれて行った。


そして、まるで口が閉じるような動きで、それらの入り口がすべて閉じる。

全員が僕の中に納まったのが感じ取れた、その瞬間……僕の体は変容していった。


堅牢で重厚な城壁が、やわらかく流れるようにうねり、背中の部分を根元にして束ねられ、まるでマントか羽のようになる。


左右対称に建設されていたいくつもの棟や塔は、集まって組み合わさり、腕と足になる。左右対称だったそれぞれが、右腕と右足、左腕と左足になった。


中心の建物は、上下に分かれたり、周囲の建物を装飾として取り込んだりして、胴体になる。

肩や腰の部分には、小さ目の塔などがまるで砲身か何かのように装着されていった。


いくつもの建造物が変形し、折りたたまれ、組み合わさり、纏まり……人の形に変わっていく。

しかし、そこからさらに変容は続く。


城壁の意匠を残していたマントは、等間隔で割れていき、機械の翼のような見た目になる。重厚ながら柔らかく、しなやかそうな印象は変わっていないが、同時にスラスターのような見た目にも見えるようになり、心持ち外側に大きく展開する。


左腕の質感が超合金のそれに変わり、さらに手の指先には、龍のそれを思わせる、鋭い鋼の爪がついた。肩口には、龍の頭を思わせる鎧か、あるいは飾りのようなものも見て取れた。

さらに腰からは、重厚さとしなやかさを併せ持った、鋼色の龍の尾が生えてきた。


対する右腕は、同じく質感は超合金だが、より鋭角で流線型を主とするフォルムに変容していく。手の部分はまるで甲冑の籠手のようで、手首からひじの部分にかけて鋭い刃がついていた。

肩鎧も同様に鋭角なフォルムで、刃と、剣の柄のようなものが覗いている。


胴体の部分がいくつかに分割され、その下から鋼の甲冑を思わせる胴体が現れれる。分割した部分は、そのまま中から出て来た胴体部分を補強するかのような外部装甲のように変わった。

いくつかは、腰や肩をさらに補強するためにも回っている。


城から人型に、さらにそこに、取りこまれた4つの魔物の力が反映されたようなパーツが各所に現れ……最後に、頭の部分にあった塔の屋根の部分が、スライドして左右に割れる。

甲冑の兜のようでもあり、ロボットの頭部にも見える顔に変わった。


禁宝魔城パレスオブパンドラ』の巨体を人の形にまとめたものをベースに、

戦機バスター龍王バハムート』の力を宿した左腕と尾、

機攻ヴァルキリー戦乙女フレーム』の力を宿した翼、

霊将ロード天騎剣ソージェンス』の力を宿した右腕、

霊将ロード王護装アーガード』の力を宿した胴体、


留めに、僕の中にできた『操縦席コクピット』に、『特級操縦士エースパイロット』のスキルを持つレーネ……だけじゃなく、ビーチェやレガート、それにアルベルトまでもが搭乗した感覚が、体の中で感じ取れた。


これで……完成だ。

僕ら9人の全てをその身に宿した、新しい最強形態が……ここに誕生した。



★名 前:超戦機合体カイザーシェイアーガー

 種 族:NO DATA

 レベル:ERROR

 攻撃力:9999+  防御力:9999+

 敏捷性:9999+  魔法力:9999+

 能 力:固有能力『特殊進化・合体』

     固有能力『天騎剣の右腕』

     固有能力『機龍王の左腕』

     固有能力『王護装の鎧』

     固有能力『戦乙女の鋼翼』

     固有能力『難攻不落の黒き牙城』

     固有能力『魔導操縦席コクピット

      搭乗者:レーネ、ビーチェ

          レガート、アルベルト



もう何も言うことなし!

最終決戦だ……これで決着つけてやるぞ、魔王ピエンドロラ!!





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