第112話 魔王
『ダークナイトブレイバー』こと、元勇者・石原要一郎から事情を聴いたあと、僕らはさっきまでにもましてハイペースで攻略を進めていた。
城の中の捜索自体は楽だった。
なんか、アルベルトがあらかじめ王国にスパイ飛ばしてたらしく、そいつから王城の地図を入手していたため、それを元に、攻略本見てる感覚で、無駄を省いて一気にまっすぐ奥の方まで進んでいくことができたのである。
それでも、ダンジョン化の影響でか、いくつか間取りその他が変わっているところもあり、モンスターハウス的な部屋に出たり、途中にエリアボスが待ち構えている部屋があったりして、苦労させられたが。
主に悪魔系とアンデッド系の魔物が多かったな……おそらく、その女勇者が、『悪魔召喚の宝珠』を使って、王城の騎獣や兵士を魔物に変えたか、あるいは悪魔を召喚したかだろう。
しかし、途中で偶然宝物庫に出たり、戦った分の多くの経験値が入ったので、苦労に見合ったリターンはあったんじゃないかと思う今日この頃。
なお、もちろん宝物庫の中身は全て『無限宝箱』に接収しました。
で、進んでる途中でね……このようなことになりまして。
★名 前:フェルミアーテ・ミュート
種 族:霊将・王護装
レベル:1
攻撃力:1564 防御力:3397
敏捷性:1005 魔法力:1769
能 力:希少能力『状態異常無効化』
希少能力『物理攻撃耐性・極』
希少能力『魔法耐性・極』
固有能力『守護の盾・漆黒』
固有能力『魔装戦形・鎧』
固有能力『付喪神の将』
特殊能力『杯』
★名 前:ピュアーノ・セライア
種 族:霊将・天騎剣
レベル:1
攻撃力:2863 防御力:2272
敏捷性:2973 魔法力:2425
能 力:希少能力『最上級魔法適正』
希少能力『障壁破壊』
固有能力『刀剣精製』
固有能力『天霊剣・翠風』
固有能力『魔装戦形・剣』
固有能力『付喪神の将』
特殊能力『杯』
とうとう、残る2人も『第五位階』に歩みを進めることができた。
城内に入ってからというもの、ダンジョンボス級かそれ以上の敵がやたらめったらでてきたおかげで、あの『ダークナイトブレイバー』と『グラシャラボラス』をスルーしても、レベル上げの機会には困らなかったのだ。
そうして2人は進化。例によって能力も爆上がりした。
僕らトップ3に比べると、少々見劣りする部分がなくはないものの、大概の敵を危なげなく瞬殺できる程度には文句なく強いし、フェルもピュアーノも、それぞれの得意分野に伸びた攻撃力と防御力は目を見張るものがある。
加えて、それを補って余りあるレベルでスキルが凶悪だ。
ピュアーノは、『障壁突破』で敵の魔物の防御とかないも同然に切り裂くし。途中で出て来たあの『リッチ』の障壁もスパッと一撃で中身ごと両断していた。
『刀剣精製』で魔力を糧に剣を何本も作り出しては、手裏剣みたいに投擲して魔物を串刺しにして仕留めていく。もちろん、自分で(偽装体で)振るうこともあるし、盾代わりに防御に使ったりもしてたし……時には、上空に何百本も、切っ先を下にした状態で出現させて降り注がせて魔物を皆殺しに……なんていう範囲攻撃にまで使っていた。
単純に剣を振るう(彼女自身が剣だが)戦い方でも強い。『天霊剣・翠風』とかいうスキルのおかげで強化され、剣自体の威力がやばいのはもちろん、剣を振るうたびにカマイタチは出るわ稲妻は迸るわ……さらに『最上級魔法適正』で魔法まで組み合わせて使ってくるんだからすごい。
一方、フェルは防御重視のステータス及びスキル構成だが、それでも十分火力は足りているし……こっちはこっちで防御面の鉄壁さ加減がぶっ飛んでいる。
状態異常は無効だし、物理攻撃も魔法攻撃も大きく威力を削られる。その上『守護の盾・漆黒』の効果の一つにより、自動修復が常にかかっているので、ちょっと傷ついても即座に治る。
相当な火力で攻撃を直撃させても痛打にならないという鬼畜仕様。味方だから頼もしいが、コレが敵に回ったら、さぞ効果的に戦意を喪失させることだろう。
実際、『壁役』としてレーネ達を守りながら戦っていたんだけども、悪魔やゾンビたちの攻撃の雨あられにさらされながらも……盾をうまく使っていたとはいえ、てんで応えていなかったし。
弱い魔法とかは、彼女まで届かずに減衰して消えちゃってたし、『無効化』される毒とか呪いとかも同じ感じで力なく打ち消されていた。
なんとかそれを突破して届く攻撃も、たいして効いていない上に、さっきも言ったようにすぐ治ってしまう。見ていて敵が気の毒になるほどだった。
そんな2人が共通して持っているスキルに『付喪神の将』ってのがあるんだが……これは、僕らがもっている『機動生命体』などと同じく、複数の効果を併せ持つ複合スキルだった。
例としては、眷属召喚やその眷属の能力強化、配下の統率・強化、マジックアイテムを使用する際の効果の上昇補正など色々。『長く使っている武器ほど効果が上昇する』なんていう変わり種的な能力まであった。
しかし、何と言っても一番のトンデモスキルは……フェルの『魔装戦形・鎧』と、ピュアーノの『魔装戦形・剣』だろう。
どんなスキルかというと……これ、フェルやピュアーノを『装備』するスキルなのだ。
試しにビーチェとフェルがコレを使ってみたところ……突如、フェルの『偽装体』が解除されたかと思うと、その体がバラバラになる。
そして、ビーチェの体に、腕、足、胴体、マント、頭の順番に装着されていった。まるで、特撮ヒーローか何かの変身シーンのように。
そして最後に……なぜか、西洋甲冑だった鎧が、ビーチェにお似合いの、動きやすさと機能性を兼ね備えた感じのドレスアーマーに変化した。わざわざ。
……装備者のファッション性にまで気を使ってくれるとは、また親切なスキルである。
しかし、そうして茶々を入れはしたが、このスキルは中々どころじゃなくすさまじい。
コレ、単純な足し算じゃないにせよ、装備者の素の能力に装備の能力が加算されるので、とんでもないのが出来上がるのだ。
★名 前:ベアトリーチェ・ドラミューザ
種 族:真祖の吸血鬼
レベル:129
攻撃力:823 防御力: 623
敏捷性:701 魔法力:1595
(以下省略)
これが、
★名 前:ベアトリーチェ・ドラミューザ
種 族:真祖の吸血鬼
レベル:129
攻撃力:2034 防御力:3650
敏捷性:1310 魔法力:2298
(一部省略)
備 考:魔装戦形・フェル(装備中)
こうなる。いやホント何だコレ。
そして当然、スキルはビーチェとフェル、両方のそれを使える。
コレのおかげで、ビーチェも危なげなく前線に立って戦えるようになった。経験値効率爆上がりである。
おまけにコレ、召喚した『眷属』にも同じことができたので……残るレーネ、レガート、そしてアルベルトにも、フェルが作り出したリビングアーマー系の眷属を『装備』させ、各能力値に補正をかけて安全度を大幅アップさせて攻略を進めることができた。
なお、ピュアーノの『魔装戦形・剣』についてだが、こちらも内容は同じである。
ただ、これについては、スキルとして発現する前から、普通に僕とかピュアーノが剣に変身、または変形し、それをレーネとかが使う形でやってたけども。
今回スキルとして実装されたことで、より攻撃力その他の上昇効率が上がったようだった。
それらを活用して、主に生身メンバーを前線に出してメインで戦い、能力的に危険そうなのや厄介そうなのが出て来たら僕ら無機物組が対処、みたいな感じで進んできた。
そして、たどり着いた『玉座の間』で待ち受けていた『ロイヤルエルダーリッチ』……おそらくは、この国の王が魔物に変えられたそいつを、特に同情する気もないので普通に消し飛ばして始末した頃には……だいぶ僕らもレベルが上がって強くなっていた。
★名 前:シャープ
種 族:禁宝魔城
レベル:23
攻撃力:4044 防御力:4891
敏捷性:1210 魔法力:3100
(以下省略)
★名 前:フォルテ
種 族:戦機龍王
レベル:19
攻撃力:4538 防御力:4151
敏捷性:2958 魔法力:4023
(以下省略)
★名 前:リィラ
種 族:機攻戦乙女
レベル:27
攻撃力:3248 防御力:1024
敏捷性:4688 魔法力:2525
(以下省略)
★名 前:レーネ・セライア
種 族:修羅森妖
レベル:134
攻撃力:888 防御力:921
敏捷性:659 魔法力:847
(以下省略)
★名 前:ベアトリーチェ・ドラミューザ
種 族:真祖の吸血鬼
レベル:129
攻撃力:823 防御力: 623
敏捷性:701 魔法力:1595
(以下省略)
★名 前:レガート・ディミニー
種 族:森妖聖騎士
レベル:143
攻撃力:726 防御力: 439
敏捷性:754 魔法力:1144
(以下省略)
★名 前:フェルミアーテ・ミュート
種 族:霊将・王護装
レベル:9
攻撃力:1621 防御力:3642
敏捷性:1100 魔法力:1811
(以下省略)
★名 前:ピュアーノ・セライア
種 族:霊将・天騎剣
レベル:11
攻撃力:3102 防御力:2412
敏捷性:3213 魔法力:2510
(以下省略)
★名 前:アルベルト・ジョワユーズ
種 族:獣人・月兎
レベル:143
攻撃力: 704 防御力:407
敏捷性:1149 魔法力:990
(以下省略)
なお、生身メンバーにはここにさらに『魔装戦形』補正がかかる。
これにより、ダンジョンボス級ですら苦にならずに戦える力を手に入れた僕らだったが……ちょうど、元・王のアンデッドがチリになって消えていく光景を前にしていた……その時だった。
突如として、玉座の間の後ろの方……言うなれば、城の奥の奥、とでも言うべき場所で、すさまじい魔力が膨れ上がり……
何事かと僕らが困惑していたところに、さらに、
『シャープさん! シャープさーん! 聞こえますか!? 返事、返事プリーズっ!』
頭の中に、聞き覚えのある声が響いた。
ついこないだも、『幻想空間』の中で色々と相談させてもらった、某本の妖精?の声が。
なぜか、その声の主―――ミューズはひどく焦っている様子で、まくしたてるように言う。
僕が、突然のこと×2に困惑しつつも返事を返すと、
『シャープさんすいません、一度しか言わないんでよく聞いてください! 何が起こったのかは分かんないですけど……今一瞬、世界の『壁』が崩れました!』
『? どゆこと?』
『この世界が、世界そのものが『ダンジョン』になってるっていうのは前に話しましたよね? 世界を守るために、神様が悪魔ごと、世界そのものをダンジョンに封じ込めたって。その、封じ込めたはずの、世界という名のダンジョンの外壁が、一瞬だけ壊れて……その一瞬の間に、外の世界からとんでもないものが召喚されてその世界に入り込みました! 原因は不明、ただ、そちらの世界で何かあった、誰かが何かした、ってことしかわからないですが……と、とにかく気をつけてください! ホントに何が起こるかわかんないですよ!』
これまでに聞いたことのないような、悲鳴のようなミューズの声。
切羽詰まった感じでなされる警告を聞き終えたところで……おそらくは、そのミューズが言っていた『とんでもないもの』が、僕らの前に姿を現した。
というか、玉座の間の後ろの壁がぶち破られて、こっちに飛び出て来た。
何が起こったのかを確かめに行くまでもなく、その根源を、僕らは目にすることとなった…………………………のだが。
(何だ、こいつ……!?)
目にはしたが……何なのかはさっぱりわからなかった。
何せ、今目にしているコレは……僕が知っている、ファンタジー世界のモンスターの中に、それと該当しそうなカテゴリーがない。
SFとかアドベンチャー系に範囲を広げても同様だろう。目にしても、何なのかわからん。
しいて言うなら……ホラー映画とかに出てきそうかも……しれない、か?
そんでもって、無理やりどういう魔物かを表現しようとする、なら……
(せ、千手観音? いや、阿修羅像か……でも腕多いし……キモイし……つか、頭も多い……?)
巨大な、人間っぽい裸の上半身。胸はなく、男体か女体かはわからない。どっちでもいいけど。
細身というか痩身で、肋骨がちょと浮いて見えるくらいの体。
その頭の部分……本来なら、1つだけ人の頭が乗っかっているはずの部分に、6つの頭がくっついていた。それぞれ違う方向を向いており、首の長さが全部違う。短いものでは人間と同程度(ただし比率的に、という意味)、長いものだと、ろくろ首かってくらいにうねってる。
目はどれも半開きで、白目むいている。唇は紫色。口は耳元まで裂けていて、それら全部の口元から、サメのように奥行きのある鋭い牙がのぞいている。髪は黒くて長く、女性のようだが、振り乱している感じや、長すぎて顔が隠れ気味なあたりが余計に怖い。ホラー映画だやっぱり。
さらに、その体に生えている腕の数……なんと15本。
多い、てか2桁ある、ってだけでも怖いんだが……奇数である。
左右の、普通に腕がある位置に1本ずつ。
それに加え、肩甲骨の下から一対。肩のあたりから一対。胸のあたりから一対。わきの下から一対。そのさらに少し下から一対。わき腹から一対。
そして最後に、背中の真ん中……背骨の中心くらいから、他の手より長くて太い、関節が三節棍みたいに3つある手が一本生えている。合計15本。
下半身はなく……その、裸の人型の上半身の異形の魔物が、城の奥から姿を現したのである。ぶっちゃけ……怖い。そしてキモイ。
しかし、それ以上に何よりもヤバそうな感じがしたため、その正体を確かめるべく、いつもの『鑑定』を試みた結果が…………!!!?
★名 前:魔王・ピエンドロラ
種 族:根源悪魔・蠢蠱
レベル:100
攻撃力:6558 防御力:5420
敏捷性:2935 魔法力:8003
能 力:???(鑑定できません)
???(鑑定できません)
???(鑑定できません)
???(鑑定できません)
???(鑑定できません)
???(鑑定できません)
???(鑑定できません)
……おい、マジか……マジか!!!?