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第11話 謎の戦利品



やはりというか、エリアが違うと出て来る魔物も違うようで。


洞窟エリアでは、蝙蝠やトカゲ、蛇といった魔物が主に表れていたけども……この森エリア(正式名称知らんのでこう呼ぶことにする)では、また別な趣の連中がそろっていた。


有名どころで、額から30㎝くらいの一本の角を生やしたウサギ『角兎ホーンラビット』。


毛皮が緑色である以外は普通の野犬と変わらない感じの犬の魔物『草原犬グラスドッグ』。


空から強襲して鋭い爪と嘴で攻撃を加え、知能も高い『強盗烏ギャングクロウ』。


雑食で、草のみならず、先に述べた種類のも含めた肉も食べる鹿の魔物『狩鹿ハンターディア』。


とまあ、洞窟にいそうな感じの魔物から、田舎の野山にいそうな感じのラインナップに変わったわけだ。特徴や生態は全然ちゃうけども。


しかしながら、強さに関しては……むしろ洞窟の連中の方が強かった。気がする。


だいたいの魔物は、急所かその近くをがぶりとやるだけで倒せるのは変わんないんだけど……この森エリアの連中は、洞窟の連中に輪をかけて、脆いような気がするのだ。


まあ、よくよく考えればそう思うのもしかたない……かもしれない。

蝙蝠はともかく、トカゲやら蛇やら、皮も鱗もめっちゃ硬い連中ばっかだったから。かみついてから食いちぎるまでに、歯を食い込ませて顎に力を入れて、ばつんとやる手順があったし。


でも外のは……基本、毛皮なので、さっくり行く。多少、肉に筋があるけど。


ゲームとかでも、フィールドのモンスターよりダンジョンのそれの方が強かったりするけど、そういうのあるんだろうか?


とはいえ、森のモンスターたちが全くのザコばかり、というわけでもない。


今戦ってる魔物なんかは……この森に出てくる連中の中でも、かなり強い部類だ。



★種族名:森林狼フォレストウルフ

 レベル:15

 攻撃力:71  防御力:33

 敏捷性:104  魔法力:17

 能 力:通常能力『緑隠れ』

 備 考:『草原犬グラスドッグ』の進化形



こないだようやくできるようになった、鑑定技。

それを使って閲覧した情報が、これだ。


目の前にいるのは……熊ぐらいの大きさがありそうな、深緑色の狼の魔物。

しかも、それ単体ではなく……何匹もの『グラスドッグ』を従え、群れを形成している。


運悪く、獲物をしとめて食事中だったこいつらに見つかってしまったのである。

そのまま続けてりゃいいのに……わざわざこっちも仕留めんとかかってきたのだ。


備考欄に書いてある情報を見るに、こいつらの進化形……つまりは上の存在ということらしいので、そういうこともあるんだろう。


そして、能力はかなり高い。

防御面がやや脆い印象を受けはするものの、それを補って余りある敏捷性が脅威だ。わずかな差ではあるが、僕も負けている。


それに加え、周りにいる7匹もの『グラスドッグ』と連携して攻めてきたこともあり、かなり手こずらされることとなってしまった。


『フォレストウルフ』はもちろん、『グラスドッグ』もまた、素早さに重点を置いた能力値を持っている種族だった。そのせいで、全方位から素早く繰り返されるヒットアンドアウェイの攻撃に、幾度もさらされることとなってしまったのである。


けどまあ、僕にはそれらの直撃を何度食らってもへっちゃらなレベルの防御力があったので、さほど危機感を覚えることはなかった。


少なくとも、僕の防御力を超えるだけの攻撃力を持つ相手の一撃でなければ、この身に傷をつけるどころか、きしませることすら不可能である……というのは、洞窟で体験済みだ。

フォレストウルフすらそれに該当しない以上、向こうさんは僕にダメージを与える手段がない。


となれば、被弾は多少気にしないことにして、カウンター?できっちり一撃一殺決めていけばいいだけの話だ。


かみついてきたグラスドッグの牙を、箱の端っこで受け止め……素早くこちらも噛みつき返す。

前足の付け根から胴体にかけてばつんと食いちぎる。これだけで勝負はつく。


最終的には……もはや小細工は無用、とか言いたそうな勢いで突っ込んできたフォレストウルフを、こちらも真正面から受け止めた。


具体的には、ぐあっと正面からかみついてきたところを……こちらはさらに大口を開けて、開かれた上あごと下あごもろとも、頭を丸ごと食いちぎって仕留めた。


首から先を失い、びくびくと痙攣した後に動かなくなったフォレストウルフと、その子分のグラスドッグたち一同の死体は、全部食らって収納した。


『森狼の牙を手に入れた』

『森狼の爪を手に入れた』

『森狼の毛皮を手に入れた』

『森狼の肉を手に入れた』

『草原犬の牙を手に入れた』

『草原犬の爪を手に入れた』

『草原犬の毛皮を手に入れた』

『草原犬の肉を手に入れた』


謎のアナウンスでアイテム取得を確認しつつ……僕はふと、少し離れたところに転がっているあるものに視線をやる。

いや、目、ないんだけども。


そこにあったのは……3人分の、人間の死体である。

所々、というかあちこち食いちぎられて、原型ほぼなくなってるけど。


そう、さっきの犬ども……コレを囲んでランチタイムの真っ最中だったのだ。


よく見ると、体のあちこちに、明らかに犬たちの爪や牙によるものではない傷が何か所かある。刃物で切られたような傷があったり、矢が刺さってたり。もちろん、どれも生傷だ。


加えて、犬たちが手を出さなかった、この人間たちのものと思しき装備や武器、道具なんかが、周囲にいくつか転がっている。

そしてそれらはどう見ても、堅気の人間が持つようなものじゃないように見えて……


試しに、いくつかぱくっと食べて調べてみると……


『毒塗りのナイフを手に入れた』

『鍵開け用ギミックツールを手に入れた』

『毒塗りの投げナイフを手に入れた』

『瓶入り毒薬(致死毒)を手に入れた』

『瓶入り毒薬(麻痺毒・揮発性)を手に入れた』


ほらぁ……絶対堅気の持ち物じゃないよ。盗賊とか、裏家業の方々のそれだよ。


もしかしてこいつら、どこかから何かを盗んできて……その追っ手に、矢とか色々やられて弱ってたところに、運悪く狼たちの襲撃受けて……って感じでご臨終なすったのかね?


となると……怪しいのは、死体の1つが持っている、大きめのリュックサックだ。

血でどろっどろに汚れてるけど、素材はかなりよさそうに見えるし、作りもしっかりしてて頑丈そうだ。強度もある、なかなかの品物ではないかと見た。


それが、けっこうな大きさに膨らんでいる上に、死体がコレを抱えてかばうようにして息絶えているところを見ると……盗品はこの中じゃないかなー、とか思うわけだ。


そして僕は、魔物として生まれ変わったからか……人間を食べる(というか、収納する)ことに、あんまり忌避感がなくなり始めている。こないだ蛇を、飲み込んだ人間ごと平らげたりした時から……すでにそうだった。


あと、白骨と化した死体も、何体か平らげている。


……なんか、今更とはいえ……すっかり人間から逸脱した行動を、違和感もほぼなくやってるなあ、と、ふとした拍子に思ったりする。


さて、話が脱線したけど……そういうわけなので、僕は、人を獲物として食べることにも大きな忌避感はなくなっている。無差別に殺戮して食べたいわけじゃないけど。

となれば、死体からものをはぎ取るくらいもはやどうってことはない。


この世界で生き残るため。生き抜くため。

そう思えば……人間、色々と吹っ切って覚悟の1つや2つ、決められるもんだ。


というわけで、ナップザックごといただきましたところ……


『金貨17枚を手に入れた』

『銀貨23枚を手に入れた』

『エルフの薬を手に入れた』

『エルフの弓を手に入れた』

『ミスリルの剣 2本を手に入れた』

『ミスリルの矢じりの矢 43本を手に入れた』

   (以下省略)


このありさまよ。

普通に価値のありそうなものから、珍しい、貴重なアイテムっぽいものまで多数。


つか、このラインナップ……こいつら、エルフからでも盗んだのか?


ということは、この近くにいるのか、エルフが? あの、ファンタジーの代名詞的種族が?


……エルフって、よくある異世界ファンタジーとかだと、森の中に隠れ里を作って住んでるパターン、多いよな……?


そして、麒麟じいちゃんは、住みやすそうな環境のエリアには、人間やそれに類する種族が、集落なんかを作って住み着いてる場合もある、って言ってた。


だとすれば……あながち、的外れな予想、ってわけでもないのかもしれない。


この近くにひょっとしたら、エルフの集落か何かがあるのかも……っていう、僕の予想は。


……あと、それとは別にもう1つ。

盗品?と思しきリストの中に……すげー気になるアイテムが1つ。


いや、金貨だの薬だのミスリルだのも気にはなるんだけど……それらを差し置いて、あまりにも異質というか、興味を惹かれるものが……



★『黙示録の写本』

神が作ったとされる禁断の書物の、聖職者によってつくられた写本。

資格ある者に、神の啓示をもたらすとされる。写本であるが、れっきとした神代の力をもつ。

この書に記されし試練を成し遂げし者は、千金と栄光、そして神の祝福を手にするだろう。



…… な ん だ こ れ ?





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