第101話 戦争終結への道筋
「さーて諸君! 知っての通り、とうとう王国に目を付けられました。まあ予定よりはちょっと早かったかなー、と思わなくもないけど、十分対応可能です。けどいくらか計画に調整・変更は必要なので、会議ですり合わせを行います。よろしい?」
場所は、ドラミューザファミリーの新たな拠点である城――すなわち僕の中。
その大会議室、こないだの戦いを観戦していたあの部屋にて、ファミリーの幹部格以上の全員を緊急に集め、会議が始まろうとしていた。
今の、ビーチェの気合の入った開会のあいさつと共に。
具体的に会議室に集まっているのは、ボスのビーチェと、その右腕レーネ。
補佐、ないしは参謀的な立ち位置にいる、レガート、フェル、ピュアーノの3人。
最高幹部であり、有事の際の最大戦力という位置づけの、僕、フォルテ、リィラ。
それより下は、バートやナーディアといった、各部門の責任者である。
このへん、事業規模の拡大に伴って、各地でスカウトした、あるいは下から実績を積み重ねてのし上がってきた、信頼できる現地の人材も混じってきている。
今まで、古参メンバー……つまりは身内だけで固められていたところに、徐々に『部下』と呼べる立場の人間(あるいは人間以外も)が混じり始めたわけだが、『杯』の効果で裏切りは起こらないようにしてあるし、問題はない。
大きな組織を運営していく以上、人手は必要になる。そのくらいの器量は持たないとだ。
それに、正真正銘、それだけの能力を持っている人材がそろってるわけだから、末端の各事業を任せる上では、掛け値なしに頼もしい連中なのは確かだ。
既に今、僕ら『ドラミューザファミリー』が直轄、ないしは傘下に加えて営業している事業者の総売り上げは、小国の国家予算に匹敵、あるいは上回るレベルにまでなっている。
まあ、枯れた鉱山を復活させてその採掘益を独占したり、各国にペーパーカンパニーを含めた支店を置いて流通の一部を牛耳ったりしてるわけだから、そりゃ相応の額にはなるだろうとは思ってたが……短い期間で、収益の桁がえぐいほど増えたもんだ。
そんな各部門を安心して任せられる……戦闘力はないけど、頼もしい部下たちである。
そして最後、ゲスト的な立ち位置で参加してもらっているのは、他ならぬアルベルトである。
まあ、別に……部外者ではあるものの、不思議じゃない。
今回の議題は、内部情報飛び交う運営方針の会議とかじゃなく、王国と帝国、双方を巻き込んだ戦争に関する話だ。そこで、僕らが今後どう動くか、っていう話だ。
それについては、アルベルトも協力者である。なので、細かい調整をこれからするなら……いい機会だし、参加してもらった方がいいだろうと思ったわけだ。
ちなみに、折角だからアルベルトにも、近々この『ファミリー』の役職――ただし、実質的な権限は持たない名誉職みたいなのを――プレゼントしてはどうか、っていう話にもなっている。
『顧問』とかそういうあたりになるかもしれない。
「まず、現状を全員で的確に把握することから始めます。フェル、説明を」
「はい、了解しました」
ビーチェの指示で、フェルがその場で立ち上がり……こないだも戦場の観察に使っていた『ホログラム』を起動し、会議室の全員に見えるように投影する。そしてその画面に、必要な情報を次々に映し出し、説明を始める。
フェルがコレを使えるのは、僕がこの『ホログラム』機能の操作権限をあたかじめ与えているからだ。本来、この城の中で使える機能の全ては僕だけが持っているんだけど、ある程度なら他人に与えることもできるのである。
現在こういうことができるのは、古参メンバーだけだけどね。
で、フェルの説明に戻ろうか。
「現在、王国と帝国の戦線は膠着状態にありますが、あともう間もなくで季節は冬に入ります。そうなると、国境付近に山脈が通っている両国のどちらにとっても、行軍するのは難しくなりますので、今のうちにできるだけ優位な状況を作り出したい、と、両国共に考えている状態です」
ちなみに現在、ホログラムで浮かび上がっているのは、両国を含め、この周辺国の大雑把な位置関係が描かれた地図である。
大雑把、とはいうものの……出典元は僕らが持っている『黙示録』なので、多分正確度は高い。
『金』になってから、マップとは別に特典として見れるようになったものだし。
で、それを見ると確かに……『トリエッタ王国』と『ゲルゼリア帝国』の間には、それなりに険しい山脈が縦に入っていて、両国の行き来が簡単にはできないようになっているとわかる。
まして冬の山……慣れている専門家でも時に命を落とすような環境だ。行軍は無謀だろう。
「ですが、この所の王国は、表面上は発表してはいないものの、泥沼の財政難に陥っています。理由はもちろん、帝国相手の戦費、軍事・国防関連の予算が主で……またそれと同様に、現状を理解していない貴族達の贅沢のために使われている額も、呆れるほどの額になっています」
「……予想してはいたけど、この状況下でまだ張りぼて金メッキの優雅(笑)な生活にしがみついてるのか……ちなみに参考までに、どんな感じ?」
「調べられた限りで、ではありますが……社交界や舞踏会等の催事による支出、高価な調度品・骨董品等の売買、自宅及び別邸の増築や改装工事費用、それに伴う、人員を含む生活必需品の購入費用、行軍および王族・貴族の往来に使う街道の整備、さらには……『戦勝の前祝』と称して、建国記念式典で配られた記念品の……」
「もういい。聞いてるだけでこっちが頭痛くなってくるわ……」
「仮にも今……戦争中よね? そんな中、何やってんのホントに……」
「……連中、マジで今の状況ってもんがわかってねーらしいな。金があれば使うのが当然、自分達は贅沢をするのが当然のステータスだとでも思ってんのかね」
「……ひょっとして、国内に雇用を生み出したり、経済を循環させるためにわざと散財して色んな所に仕事を作ってる、なんてことは……」
「んなわけねーだろ。連中にそんな殊勝な心掛けも未来への見通しもあるかよ」
「だよねー」
……フェルの情報に皆、不意打ち気味に脱力させられてしまったものの、まあ、敵が無能でいてくれる分にはありがたいので、スルーしておく。
それがこの中で一番当てはまるアルベルトも、いつもの笑みを浮かべつつも、口元が引きつっていた。敵として情けなくなっているのかもしれない。
「それで……このような信じられない散財っぷりで、当然のごとく財政難に陥っている王国ですが、それをカバーするため……要は、他国まで出張しての人殺しと、自分達の贅沢のための資金を調達するために、我々の居城に襲い掛かってきたというわけです」
「略奪目的でね~……やってること山賊と同じじゃないの」
相変わらずこの国は……と、呆れているピュアーノと、眉間にしわを寄せて、険しい表情を作っているレガート。
敬愛していた主君は、こんな国の犠牲になったのか、とか考えているのかもしれない。
「ですが、皆さまご存じの通り、此度の征伐軍はものの見事に惨敗。物資も何もかも捨てて、総数の7割以上を喪失して敗走することとなりました。またその際、王国が全部で4人、保有しているという『勇者』の1人を討伐することにも成功しています」
「ああ、あのバカの一つ覚えみたいにドラゴンを召喚して突撃させてきた、あの優男か」
と、フォルテが、どうでもよさそうに言う。
こいつからすれば、手ごたえがある敵かと思って出ていったら、図体がでかいだけのでくの坊だった、っていう印象らしいし、本気で気にもかけてないんだろうな。
あるいは、あの勇者――名前思い出せない――も、自分で戦っても強かったのかもしれない。
しれないけど、結局何かする前に死んだからなあ……まあ、いいか。
「以上を踏まえると、今回の敗戦は、王国にとっても決して軽く見ることはできないダメージです。上層部は必死になって隠そうとするでしょうが、それもいつまでもつか……何より、一騎当千の戦力である『勇者』の喪失は、与える動揺も大きいでしょう。そもそも、元々の問題だった財政難が解決するどころかさらに悪化することとなりますので、王国は今、言わば、屋台骨から徐々に腐り始めている、とまで言える状況です」
「遠からず自滅する、ってわけか……でもそれについては、前にアルベルトも言ってたよね?」
「ああ。初めての面々もいるし、今一度説明させてもらっても?」
「ええ、お願い」
と、今度はアルベルトが立ち上がって説明していく。
曰く、王国はもう詰んでいる。
何なら、このまま何もしなくても、耐えてさえいれば勝手に自滅して滅びる。
今の王国は、食料その他物資の調達の大半を、諸外国からの買い付けに頼っている。しかし、当然ながらそのための取引には、金銭が必要だ。今まさに、王国からなくなろうとしている、金が。
それがなければ食料も、鉱石も、鉄製品も、生活用品も買えない。
そして、自国内で必要になるそれらを自力で賄うだけの力は、もう王国にはない。
アルベルト曰く、今までに占領してきた元・他国を、冷遇して弾圧して、搾り取るだけの植民地的なものとしか見ておらず、その土地や産業を活かすことを全くしてこなかった結果だという。
まさにそうだよな……僕らが『ドラミューザファミリー』として活動を始めてから、そういうのをいくつも吸収して再生し、こっちが資金源にしてきてるんだから。
王国の無能ゆえに、こっちが儲かってる、とも言えるのか……なんて皮肉。
帝国はそういうことはないので、仮に他国から孤立しても、自給自足でしばらくはやっていける。国庫にも多少、取引に使うだけの余裕はある。なので、持久戦でも帝国は間違いなく勝つ。
「でも、それじゃダメなんでしょ?」
「ああ。王国が干上がるのを待っていれば、確かに比較的楽に勝てるが、その後に残るのは、限界まで疲弊しきった状態で無政府化することになる王国の広大な土地、そしてそこに暮らす民達だ。隣国としてそのような、食い詰めて賊になるような者が続出するであろう土地を放置しておくわけにはいかんし、そもそも誕生させたくない。だから、別案を提示させていただいていた」
「その案は、大体私達と同じものだったんだけどね」
と、ビーチェが合いの手を挟みつつ、アルベルトの説明は続く。
帝国では国政運営に携わっていたっていうこともあって、何かこういう会議の進行みたいなのも得意らしい。安定感あるので、こっちの思惑と大きく外れない限りは任せよう。楽でいい。
「参考までに、現在の帝国の状況についてもお話しさせていただこう。現在帝国は、王国ほど追い詰められてはいないものの、国や産業の規模的に、流通の状態的に考えて、かなり窮乏した状態にある」
「窮乏? さっき、余裕あるって言ってなかった?」
「ただ生活するだけならな。ただ、今後10年、20年、あるいはもっと先の未来を見据えた場合……将来に禍根を残す政権運営になってしまっているという意味だ。回復の見込みはあると言っても、現在は戦争特需でどうにか経済が回っている状態で、各地に残るダメージは小さくない。王国のように目先の破たんがどうこうではないが、そうでなければ万全、というつもりもないからな」
なるほど。今すぐにどうこうなるようなピンチじゃなくても、将来そうなるような、国民が苦しむようなことが予見されているならば、十分にピンチだと。執政に携わる者として、それを何とかするために尽力すべきだと。
志が高いというか、頼もしいと言うか……王国の王族や貴族共にも見習ってほしいわ。
「だが情けないことに、今の帝国は停滞している状態にあり、その解決策を戦争による外部からの資源入手に頼る他ない状態だ。ゆえに、帝国には決して少なくない数いる戦争反対派の者達も、これまでその意見を飲み込まざるを得ない状況だった……代案も、何もなかったからな」
「けど、今は状況が違う、と」
「ああ……外ならぬ、あなた方『ドラミューザファミリー』のおかげでな」
うちのファミリーは今や、王国の裏社会の大部分を掌握し、様々な分野で巨大な産業基盤を保有している。このノウハウを生かして、戦時中で少なからず荒れている帝国で同じようにやれば。
そしてそれに、公にしない範囲で、あるいはカモフラージュをつけて、帝国政府という国家からの全面的なバックアップが加われば、大国の産業そのものを裏から牛耳ることすら可能だろう。
それだけ聞くと、巨大企業一強の独裁、みたいになって聞こえが悪いが……そもそも流通その他が上手く機能していない、あるいはそうなるのが目に見える状態であれば、いっそ対症療法、経済を立て直すための潤滑剤としてでも、割り切ってしまえる。
今もこっちはあくまで、持続的な収入源としてそれらを扱っている。不当に値を釣り上げて消費者を困らせるなんて意図はない。
そもそも、そういうのと似たような状況で苦しめられてきた人々が、傘下の企業や村々にはいっぱいいる。そういう人たちを大切に考える上でも、売り上げだけを見るような選択肢はない。
そのような感じのことを説明したところで、進行はビーチェに戻った。
「さて、帝国の状況やこれからの展望もわかってもらえたところで……今後の私たちの、いいえ、王国と帝国のたどる道筋について説明します」
ホログラムを操作し、適宜資料を出しながら、説明していくビーチェ。
そのプランは、以下のようなものだ。
まず第一段階。王国の経済を、限界まで搾り取って弱らせる。
実はこれは、すでにというか、前々から始めている。
さっき言った通り、王国は他国から、食料や鉱石等を大量に買い付けているわけだが……そのルートの中に僕らの傘下の企業がすでにいくつか含まれている。
さらに、買い付け先である『共和国』と『大公国』において、僕らドラミューザや帝国、さらにはアルベルトが個人的にも買い付けを進めることで、徐々に品薄になってきている。
結果、流通量が少なくなり、現在、値段はだんだんと上がっていっている。
ただでさえ火の車の王国には、これだけでもつらい、真綿で首を締められているような状態だろうが……ここからさらに、限界までコレを続け、取れるだけ取ったところで……梯子を外す。
何をするかって? 簡単だ。
『お金が無くなった人にはもう物は売れません』って、突っぱねるんだよ。一斉に。
王国国内においては、表の流通すら僕らは一部牛耳っているので、そこをストップさせてやれば、王族貴族の生活、あるいは軍事行動に必要な資源が枯渇し、慌ててそれを、残っている無事なルート……すなわち、海外からの直接の、政府ルートでの輸入で補おうとする。
しかし、そんな、いきなり輸入量を激増させようとした王国に対して、もともとこの国の財政=支払能力はもう限界だと薄々わかっている他国は『これはもうパンクする』と判断するだろう。
もうこの国に、支払う金はない。そのせいで、国内の財政がストップした。
もし後払いなんぞで物を売れば、踏み倒される。もう相手にするべきじゃない、と。
同時に、僕らドラミューザのフロント企業も同じように取引を完全ストップさせるので、王国は経済が大変なことになっている上に、物も足りなくなるというダブルパンチを食らうことになる。
王国の領地か権利か何かを担保にするとかの取引でもすれば、まだ少しは買えるかもしれないが……無駄にプライドだけは高い王国上層部の連中がそれを納得するとは思えない。少なくとも、すぐに決めるなんてことは無理だろう。
そうなると、どうやってこの危機を乗り越えようとするか。
恐らくは、平民からの搾取だ。バカの一つ覚えみたいに。
そして、ここで作戦の第二段階に移行する。
王国では、税金を納めなかったり、反乱を起こしそうな町や村に対し、国家反逆罪を適用して丸ごと粛清するなんてことが当然のようにある。恐怖統治のためにも有効だから。
そのための軍事拠点がそこかしこにあるわけだが……おそらく、今言った『搾取』を行う際、これらの出番が来るだろう。
搾取そのもののために人員・戦力を動員するか、あるいは搾取に反発した平民の反乱を武力で制圧するために動かすか……いずれにせよ、暴力装置として、搾取の際に稼働するはずだ。
が、これを……手段は何でもいい。こっちで抑えてしまえば、平民を押さえつけるものはなくなる。反乱を起こしても、納税を拒否しても、それに力で制裁を加える者はいなくなる。
『ドラミューザファミリー』として処理してもいいし、『エリアボス』の権能で魔物とかをけしかけてもいい。なんなら、アルベルトと示し合わせて、帝国兵を招き入れて破壊工作とかさせてもいいだろう。
その結果何が起こるか……抑える者がいなくなったことによる、平民の反乱である。
暴力革命的な、直接的な行動を伴った『反乱』じゃなくても、少なくとも王国政府の思い通りにならない、政府のために働いたりしない、という意思と行動が起こればそれでいい。
その動きを『ドラミューザファミリー』として支援して、崩されないようにしつつ、彼ら彼女らの生活は保障する感じで動くから。
そうすると、王都やその周辺の大都市が孤立する。軍事力は中央にはあるにはあるが、あまりに反乱が起こっている範囲が広すぎて対応できない状態になる。
綿密に戦略を練り、時間をかければ対応は可能だろうが、その頃には……そうはできなくなる。
ここで、第二段階と同時進行で進める、第三段階と第四段階についても説明しよう。
この2つは、王国ではなく帝国で行う。
アルベルトの情報だが、今の帝国の皇帝は……持病が悪化しており、もう長くない。
余命半年、と宣告されていたそうだ……もう、半年近く前に。
つまり、正真正銘、余命いくばくもない状態である。
アルベルトや、彼とつながりのある宮廷医師の見立てでは、もう半月はもたないそうだ。
そして、仮に半月後として、皇帝が没した場合……存命である第一皇子が即位するわけだが……アルベルト曰く、そうするとロクなことにならないので、小細工するらしい。
簡単に言うと、謀殺して皇位継承権を繰り上げ、第三皇子である自分が即位して『皇帝』になる、とのこと。
あまりにあっさり話された下克上プロジェクトに、事前に聞いていた者を除く全員が固まっていた。まあ、無理もないけど。
しかも、
「すでに準備は済んでいる。謀殺の手段はもちろん、その後の権力集約のための根回しや、証拠隠滅のための段取り、即位前後の政策立案や政務かじ取りの方針まで全部揃えてあるから、何も心配はいらんぞ? 何なら今からすぐにでも始められるくらいだ」
逆にこえーよ。
そして、その第一皇子様だが、どんな人物なのかと言うと……良くも悪くも本質は凡庸で、恐らくは自分では、この国のかじ取りをできるだけの力はない。せいぜい、亡き父と同様の政策方針をなぞるようにやっていくくらいしかできない、とのこと。
それだけならまだいいが……すでに結婚しており、その嫁の実家が戦争賛成派の頭目に近い立ち位置にいるらしい。そのため、その実家の操り人形になりかねず、帝国全土を巻き込んで戦争が余計に泥沼化しかねない……すなわち、今よりも悪化しかねないそうだ。
そうなる前に、自分が皇位につくと。
……まあそれはいいとして、
その皇位簒奪が第三段階。
その後の第四段階は……王国と帝国の全面戦争である。
このタイミングをちょうど、王国が『限界』になるところに持ってくる。内部の反乱で補給もへったくれもなくガタガタになっている所に、絶対に無視できない帝国との決戦。当然、兵力は戦線に集中させるしかなくなる。
しかし、反乱の危険がある状況下で王都周辺に兵を置いておかないわけにもいかない。結果として、戦線には『総力戦』とは呼べない程度の塀しか集まらないだろう。
それを迎え撃つのは、帝国の元々の強大な戦力に加え、アルベルトと『ドラミューザ』のテコ入れでさらに強化した軍隊。そのまま国境線を食い破り、各地の要所を制圧して、電撃戦で王都まで攻め込む。
その途中で、さりげなく僕ら『ドラミューザファミリー』も王国内の要所を落としていき、最終的に帝国軍に合流して王都で決戦。
そこで王政府を打倒し、王国を完全制圧する……という道筋だ。
その後は、戦勝国である帝国、そしてその皇帝であるアルベルトによって、王国は帝国に併合されて統治されることになるだろう。そして僕ら『ドラミューザファミリー』は、協力の報酬兼統治政策の一環として、王国と帝国、両方の裏社会、および表にも連なる流通の一部を、政府公認で牛耳る権利を得る。
この戦争の終焉として、王国と帝国を合わせた結果誕生する超巨大国家。
その、表をアルベルトが、裏を僕ら『ドラミューザ』が支配する、ってわけだ。お互いに手の届かないところを補い合って、平和な世の中になるように。
これが、僕らが描く……王国と帝国の戦争終結への道筋である。