表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/16

雨音

 雨が降る音が聴こえる。

 美玻璃はベッドの上で丸くなって、寝具越しに雨音を聴いていた。

 こうしていると落ち着くのだ。

 雨音に包まれ、守られているようで。

 シーツが擬似的な海となる。

 しとしとと言う音を耳に。


〝僕にとってもそれは同じだ〟


 万智人の声が今でも耳奥に響く。

 貝殻を耳に当てると、海の音がするように。


(万智人は、私を宝と想ってくれる)


 ぎゅ、と美玻璃は一層丸くなる。


(例え私が海を呼んでも。町を海に沈めても)


 万智人は美玻璃を許すのだろう。





 新開夫人がベッドでしどけない媚態を晒す横で、陸彦はさっさと身支度を整えた。

「嫌だわ、陸彦さん。情緒が無いのね」

「そんなことはありませんよ、伯母さん」

「嫌。美禰(みね)と呼んでくれなきゃ嫌よ」

「美禰さん」

 要望に応じて、陸彦は新開夫人――――美禰の名を呼び、手の甲に口づけた。

「知っているのだから。わたくし」

「何をですか?」

 余裕を以て訊き返す陸彦は年相応の若々しさと闊達さ、そして朗らかな色気を備え、美禰の視線を釘づけにする。

「貴方、あの子が好きなんでしょう。美玻璃が好きなんでしょう、そうでしょう?」

「ええ、好きですよ」

「物怖じせず認めるのね。憎らしい」

「俺は貴女も好きですが」

「二番目かしら?それとも三番目、いえ、四番目かしら?」

 美禰が芝居がかった顔と声音で憂いてみせる。

 陸彦はそれには答えず、ただ、にこっと笑った。




挿絵(By みてみん)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ