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賀上と日比埜の恋愛ゲーム  作者: asit
#1 運命はいついかなる時も
2/19

#1-2

 賀上と日比埜はそれぞれの家に無事に帰りその日は難を避けられた。

 だが、それは翌日に来ることとなった。


「なぁ、マサトっていつの間にかこんな恨み売ったん?」

「少なくとも僕は売った覚えも買った覚えもないのだが」

「そうだと思ったよ。けどさ」

「あぁ、なんなのだろうなコレは」


 翌日。普段通りにユウと学校へ登校をしたマサトは自分の教室に入るとドラマでしか見たことがないようないじめのような仕打ちを受けた。それは、黒板に大体的にマサトとアキはデキている! などと小学生が書きそうなとてもじゃないがくだらないことが書かれていた。


「な、ユウよ。こんなことをする奴はお前的にはどうだ?」

「俺すら知らない幼馴染の秘密を教えてくれてマジ♪ カンシャ♪」

「ほう。ラップで伝えたいほどに感謝しているのか。それとラップをするなら真顔でするな」

「って、言うのは冗談ですよマサト君。本当はなんか怒りすらわいてこないほど呆れてる」

「同感だな。まったくこのクラスには物の分別もつかないクソガキが混じっているようだな」


 そう言ってマサトは自身のバッグをユウに渡し、黒板を一人で黙々と消す。マサトはそのまま表情一つ変えず黒板を消している途中でアキが教室に入ってくる。


「………なに、してんの? しかもそれ」


 教室の出入り口で一人立ちすくむアキ。


「お前、来たか。ならとっとと手伝え」


 マサトは振り向くことはせずにアキに手伝うように促す。どうやら、声でアキが来たことを判断したようだ。


「バッグは俺が預かるよ」

「あ、ありがと」


 ユウが立ちすくむアキに近寄りバッグを預かる。そしてユウにバッグを預けたアキはそのまま黒板へ向かい黒板消しを手に持ち左側の黒板の落書きを消し始める。


「やっぱ、お前その見た目を似合わんな。わざわざちゃんと授業前に登校してくるなんて」

「うっさい。今は目の前の落書きを早く消すんでしょ」

「もう、消し終わったんだ。だからこうやって話しかけている」


 アキが疑って右半分を見てみると確かに落書きが完全に消えていた。


「本当だ」

「なんだ、疑っていたのか。信用ないな」

「昨日、初めて話したやつに信用もくそもないって」

「確かにそうだな。なら、信用を獲得すべく手伝おう」


 マサトはアキの消し始めたばかりの左半分の落書きを消すのを手伝う。そして、アキの隣に立つと誰にも聞こえない声でひそひそと話し始めた。


「おい、いいか。今はとにかく平常を装うんだ。ここで、怒ったり悲しんだりしたらこの落書きをかいた奴らの思う壺だ。いいな?」

「……わかった。今は我慢する」

「よし。ならここは仲の良い友達の体でいくぞ」

「え、なんで?」

「友達って体にして今日から暫くの間は僕とユウと一緒に昼を食べたり、登下校をしてもらう」

「なにもそこまで」

「こんなことを言いたくはないのだが。そのなんだ、お前が心配なんだ。日比埜明喜」

「………え!?」


 あまりの驚きにアキは思わず声をあげてしまう。


「おまっ。まぁ、そのこんなことに僕は疎いのだがユウに聞いたら相手側は執着心は強いそうじゃないか」

「あー、うん。そうかも」

「なら、いっそのこと毎日のように一緒にいたらいいんじゃないかと思ったわけだ。無論、SNS上でのことは守りきれんが」

「……やっぱアンタ面白い」

「? 急になんだ」

「ううん。なんでもない」


 アキは急にるんるんとなって黒板を消し始めた。マサトはそんなアキの様子を見て疑問に思いつつも黒板を消し続け、何とか一時限前にあるショートホームルームに消しおわり、このことが教師にばれることなく大事になることはなかった。

 その後のクラスの雰囲気はいつもとは違いマサトとアキを取り囲む空気感と周りの態度が明らかに違った。唯一、いつもと変わらなかったのは腐れ縁であるユウだけだった。しかし、その後も授業は淡々と続き異様な空気感が続きながらも昼休みになった。


「なぁ、ユウ。今日から昼食をとる仲間が一人増えたぞ。たったら、たったら、たーん」

「おい、やめろ。仲間が増えるのはいいんだけど、マサトがボケるのだけはマジやめろ。ツッコみにくい」

「お前のツッコミ能力はそこまでか。まだまだだな」

「くっ。まさか、試されていただと!?」

「今更気付いても遅いぞ。ユウよ」


 マサトとユウはいつものように楽しそうに談笑している。その様子を一人ぽつんと見るアキ。そんなアキはもくもくと持参のお弁当をはむはむと可愛らしく食べている。それをみたマサトは思わずつぶやいてしまう。


「お前、可愛いな」

「……へ?」

「……は?」

「くくっ。おいおい、マサトそれは、くくく」

「あ、えっとそのなんだ。……な?」

「え? あ、う、うん。ね?」


 マサトとアキは言葉に詰まり頬を赤らめながら、な? ね? を言い合っている。その様子は傍から見たら仲睦まじいものだろう。


「この甘酸っぱい青春の空気感を壊すようで悪いんだが、教室で昼食べるのなんかアレっぽいよなコレ」


 ユウは周りを見つつ引きつり笑顔でそう言った。


「……そうだ、ね。付き合ってもらってるのに悪いけどさすがに」

「いや。教室でいいじゃないか」


 マサトはどん、としたまるで頼りになる一家の大黒柱のような存在感をだしていた。


「だから、私はアンタに迷惑が」

「誰が迷惑と言った。それに教室から出て昼なんかを食べたら、それこそ何も知らないクラスメイト達に疑いをかけられるではないか。何も悪事を働いていないのだから堂々と教室で昼を食べれば良いだろう」


 そのあまりにも堂々とした発言と態度にクラスにいた人たちは思わず今までひそひそと話していた内容を変え普段話しているようなどうでもいいくだらない内容になっていた。そのうち昨日あの橋にいた女子数人は舌打ちをしてクラスから出ていく。そんな姿を偶然見てしまったアキは何とも言えない複雑な感情が自身の胸辺りで生まれていた。


「相変わらずお前はスゲーな。心臓にでも毛が生えてるんじゃね?」

「そう言うのなら今から病院に行って確認でもしてみるか?」

「言葉のあやだって。本当に毛が生えていたら今すぐにでも幼馴染やめてるわ」


 マサトとユウはにしし、と悪戯っぽく笑う。


「………」

「おい、どうしたんだ? うかない顔して」

「……え? あ、ううん! なんでもない」

「そうか。ならいいのだが」


 マサトは目の前でうつむき明らかに何かあるそのアキの表情をあえてスルーした。ここで、何か問い詰めても何も聞けないし、かえってアキを傷つけてしまうと知っていたからだ。


「…ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」


 マサトとユウは手を口元の前で合わせながら言う。


「おい」

「………」

「おい!」

「え、あ、うん」

「とっとと、机なおすぞ」

「あ、そうだね。うん」


 アキのそのたどたどしく弱弱しい態度と動きはマサトに謎の不安をよぎらせる。


「大丈夫か? 保健室にでも」

「だ、大丈夫だから! 気にしないで」

「そうか」


 アキの誰から見てもわかるほどのその強がりは見ている方が心を痛ましくする程だった。


「なぁ」

「いいよ」


 マサトはユウに何かを言おうとしたがユウはさすがと言うべきかマサトが声をかけただけで今ユウに対して何が言いたいのかがわかった。


「おう」

「感謝しろよ」


 マサトとユウは二人にしか理解のできないその空気感に包まれ、ただの幼馴染ではなく親友としての二人の姿がそこにはあった。そして、そんな二人が席に着くと同時に授業開始のチャイムが鳴る。


「はい! セーフ! 私遅れていないよね? 教師だからあえてチャイムと同時に来たんだよね?」


 チャイムと同時に教室に入ってきたのはいかにもドジッ子らしい綺麗な黒髪が台無しになっているのが特徴的なメガネをかけた女教師だ。


「って、ことで始めますよ授業! きりーつと言いたいところなんですが授業の前にとてもとても重要なお話があります。入ってきてください」


 その前ふりからは想像もできない重要さは、マサトやアキの他にもクラス全員が思っただろう。しかし、先生の合図で入ってきた人たちを見て教室の空気が一気に凍り重苦しいものとなった。

 それはあの女子たちだった。それを見たアキは一気に怖気に襲われる


「この子たちはある人たちにいじめられていると、さっき廊下で会った時に相談されました。なので、この授業を始める前にその問題を解決しようと」


 そう先生が言い終わる前に女子の一人が驚くべき大根芝居でアキとマサトを指さし叫んだ。


「アンタたちよ! アンタたちが、わ、わた、わだぢをぉぉぉ」


 ぺたんとその場に座り込む一人の女子。そんな女子を見て思わずマサトは口を滑らしてしまう。


「もっと、上手く芝居をしたらどうなんだ」


 その言葉にクラスの何人かがクスクスと笑う。


「芝居ってなによ!」

「ほら、そうやってすぐ泣き止む奴がいるか? それに目の周りが赤くなっていないぞ? 泣いていたんだろ? 赤くしたらどうだ。こすりもすればすぐに赤くなるだろう」

「おい、マサト」


 となりの席にいるユウが小声でマサトを呼ぶ。


「なんだ。ユウ」

「先生を見てみろよ」


 ユウに言われた通りにマサトは先生を見てみると、あからさまに怒りに満ちていた。


「賀上君! この子をいじめてさらにこうやってみんなの目の前で辱めを! 最低よ!」

「そうよ! 先生の言うとおりだわ」

「この女」

「おい、やめろ」


 マサトは立ち上がり女子の方へ行こうとするがユウがマサトの腕をつかみそれを止める。もし、マサトがここで女子を殴ろうものならそれこそ良い状況証拠になり言い逃れはできなくなる。


「ユウ! 離せ!」

「離すかよ! 少しは冷静になれよ!」

「僕は冷静だ! だからこの手を」


 ――――パンッ!!


 誰しもがマサトとユウの言い合いに視線と耳を傾けていると突然女子たちがいる黒板の方から爽快な音が聞こえた。


「あ、アンタ」

「………」


 その音を聞き一気に視線が黒板に向く。そして、マサトとユウも言い合いをやめ見てしまう。

 すると、そこにはアキと肩頬を手で押さえている女子がいた。


「アンタ何をしたか」


 女子がそう言おうとした瞬間、それを遮るかのようにアキが叫ぶ。


「黙れ! 自分の思い通りに使えなくなったらコレか! 私から金を奪いまくっていたくせになに偉そうな口叩いてんだ! それに今度はたまたまあの時あの場所に居合わせたあいつを………カガミを巻き込んで何がしたいんだよ! そんなに中心にいたいのなら生徒会長にでもクラス委員長にでもなればいいじゃん! そんな醜いちっぽけなプライドのために私を助けてくれた大事な人を巻き込むな! 私だけをいじめればいいだろ!」

「はは。何それだけ? てか、私がいじめられてるんですけど? 頭大丈夫?」


 アキの真っ直ぐなその言葉をあざ笑うかのように女子は、あはは、と笑う。アキは自分の想いが届かなかったことがなによりマサトを自分のせいで巻き込んでしまったことが悔しくなりその場で泣いてしまう。


「へー。今度は泣き落とし? ばっかじゃ」

「申し訳ございませんでした!」

「……へ?」


 思わずその場に居合わせたユウは微笑んでしまう。それは、せわしない兄弟を見ているかのような温かい微笑みだ。そんなユウの視線の先にはアキの隣で土下座をしてオーバーなほどに謝っているマサトがいた。


「ちょ、アンタ何やってんの? 急に土下座なんかされても」

「申し訳ございませんでした!」

「だから、何を」

「申し訳ございませんでした!」


 そのマサトの姿はまるで何かを必死で守っているようなそんな頼もしさがなぜかあった。


「申し訳ございませんでした!」

「いい加減、やめ」

「賀上君。もうやめなさい」


 先生のその言葉を聞きマサトは何事もなかったかのように平然と立ち上がる。


「もう、わかりましたから。このことについては」

「先生。何なかったことにしようとしているんですか」

「え? 何を言って」

「もとをただせば熱血が過ぎ、ちゃんとクラスの状況を判断できなかった先生にも罪はあるのですよ。その点どうかお忘れなく」


 マサトがにこっと笑う。その笑いが女子たちと先生にはまるで悪魔のような笑顔に見えた。


「そ、そうね。さ、授業を始めるわよ」


 その言葉を聞きマサトは、ふんっ、と笑う。


「ちょ、カガ、アンタ待ちなさいよ」

「なんだ? もう、カガミと呼んでくれないのか。僕は日比埜に呼ばれてうれしかったんだが」

「な、………か、カガミ」

「あぁ」

「そのなんで土下座なんか」

「そんなの当たり前だろ。目の前で困っている人がいたら助けるのは。いや、今回はいつもとはちょっと違うな」

「違うって何よ」

「そうだな。どういえば分らないが、きっと大事な人を一人で悲しませたくはなかったんだろうな。なぜかは知らんが日比埜の涙を見た瞬間にそんな気持ちが湧いて出てきた」

「な、なぁ~」


 アキとマサトが机と机の間のちょっとした通路で言い合っているとユウがあることを言ってきた。


「おーい、お二人さん。まわりをみてみん」

「…は?」

「…え?」


 マサトとアキはユウに言われた通りに周りを見渡してみると、そこには頬を赤く染めた人やあわわわと開いた口がふさがらないでいる先生やきゃー、といつの間にか小さく叫んでいた人がいた。

 そう、二人はそこが教室であることをすっかり忘れていた。しかも、それが授業中だと言うことも。


「しまった。やってしまった」

「な、やってしまったって何よ」

「やってしまったものはやってしまったのだ。僕はこう、なんだ」

「だから何よ」

「今、この瞬間になぜか日比埜を独り占めしたい。クラスメイト達に見せるのはもったいない。やってしまった。と、瞬時に思ったのだ」


 マサトのその言葉を聞き頬を最高潮まで赤くさせるアキ。


「だから、今日うちに泊まりに来い」

「……は!?」

「くくくっ。マサトナイス!」


 今までの状況のことをまるで、なかったことに出来るようなそのマサトの発言にはユウを除くクラス全員が呆然とする。

 しかし暫くすると今さっきまでのあの、重苦しいのはなんだったのか。クラス全員がそう思い何かが外れたかのように笑いだす。


「な、なにが可笑しい」

「な、何って何もかもよ!」

「俺はナイスだと思うぜ」

「あのー、今授業ですよー」


 そんな先生の泣き言を簡単にクラス中に響く笑い声が消し去り終わりのチャイムが鳴った。

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