参話 見知らぬ地
[No Side]
さんさんと日の光に照らされる中、美少女然とした顔立ちの少年は自身の記憶に残る見覚えのある塀に囲まれた街の目の前に立っていた。
何の因果か前世の記憶を持つ彼だが、外見に引っ張られたのか精神年齢は外見に見合った、否、それよりもさらに幼いためか、自分の置かれた現状に蒼の瞳を潤ませていた。
風に揺れる長い白銀の髪は少年としては不本意なのだが周囲の反対によって未だはさみを入れられていない。
閑話休題。
「ゔぅ~~、まさか今ここに来るなんて……、だいたいなんで魔方陣が反応したんだ?俺の魔力じゃ成功するはず ッぃだ!何するのリッカ‼」
「何するのじゃないわよ‼さっきからブツブツ言って……それに何度言わせるのッ俺じゃなくて僕でしょ‼」
自分の中にある書籍と先ほどの現象を照らし合わせ、原因を考える中遮るように、否遮るつもりだったのだろう純白のフクロウが主人であるリシャロットの頬を思い切りつつく。
ほら日が暮れる前にさっさと中に入っちゃいましょう
とばかりにふわりと舞い上がると先に進む
「ちょっ、ちょっと待ってよッ」
「早くしなさいッ私の可憐なこの姿がどうなってもいいの⁉」
「俺の髪と同じだからって色黒くしたくせに……」
「あら、おいて行っていいのね?それじゃお先に♪」
リッカの言葉にリシャロットが小さくこぼすと羽ばたく速度を速めておいていく。
「えっ⁉ちょっとッ~~~ッリッカ‼」
歩く、より少し速く歩を進めるリシャロットは走り追いつこうとするが空を舞うリッカに追いつくことができるはずも無く。気づけば一人取り残されていた
さて、先ほど述べたが周囲は知らない転生者という秘密を持つ彼も現在は10歳、それ以下の精神年齢を持つただの子どもであることを思い出してほしい
ほとんど知らない地で一人残される行動は想像がつくだろう
「ゔっ~~ッゔぅ~~」
溢れる涙を止めることができず立ち止まってしまった。
周囲はここに飛ばされた時よりも茜色に染まっている。
夕闇が近づいていた
ヒュッ パサっ
一つの黒い影が肩に降りる。
リッカだった
「――ワタシが悪かったわ。だからほら、もう泣かないの」
ポロポロとこぼれる涙を翼で届く片方だけだが器用に拭い慰める
「――うん」
こぼれそうになるほどの涙を目に溜めてリッカを見つめるがふわりと花の咲くように笑って歩き出す
「……ありがと、リッカ」
「(――これだからこの子は……)別に、大したことないわ」
リッカは内心呆れたように微笑むがツンとした態度で前を向く
先ほどまでのケンカの後は残っていなかった