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第三話 動き出すは表

「それじゃあ私は仕事があるから、二人で町に行ってきてくれる?」

「はーい」

「……………」

「それじゃ、いつものよろしくね~」

「じゃあいこっか」

「……………」


 どうして私はまだここにいるんだろう。

 と言っても外に出るにはあそこの大きな門をくぐらないといけないんで出れないんですが。

 よって私はここにいるしかないと。

 このままここに住ませてもらうってことになるのかな……


 私はこの子に手を引かれて町へと向かいました。

 町はそれほど広くはなさそうですますはい。

 幾つか店がありそのほかには家が何件か。

 住んでいる人の数は百いくかいかないかというところかと。


 町の外れ、囲いの中の外側部分と言うややこしい所に畑がありここで食料を生産しているようです。

 今回は町の中にある店の一つにやってきました。


 私たちがその店の前で立っていると店の中から愛想のいいおじさんが出てきました。


「こんにちはー」

「おお、坊じゃないか。いつものだろ?ちょっと待っていな!」



 そう言っておじさんは店の奥に一回引っ込んだ後すぐに戻ってきてこの子に何かが入った袋を手渡しました。

 町の規模が小さいからきっとみんな良く知っている仲なんだろうね。


「おや?この子は……」

「ああ、この子は昨日外から来たっていう子だよ。記憶がないみたいなんだ」

「ど、どうも」


 私は会釈します。

 おじさんは目を細めて私を見てきます。


「髪の毛といい目の色といい確かにこの辺の者じゃないな。どこから来たのかも憶えてない、と。お母さんは何て言っていたかい?」

「何か辛いことがあって記憶を閉ざしたんじゃないかって。時間で記憶が戻るかもとも」

「そうか、ならゆっくりしていけばいいさ」


 おじさんはその大きな手で私の頭を撫でてくれます。

 ごつごつしていてちょっと痛い。


「しかし目の色が左右で違うっていうのは何なんだ?病気か何かなのか?」

「お母さんでもわからないみたい、生まれつきじゃないかって」

「そうか、なら安心だな」


 その後この子とおじさんが少し雑談している間私は街中を行く人たちにじろじろ見られてつらい目に……

 話が終わったのはそこそこの時間が経ってからでした。


 一体それまで何人に話しかけられたか……

 知らない人に話しかけられるってとても緊張します。



「それじゃあいつもの貰えたし帰ろうか」

「…いつものって、何?」

「ん?御飯の材料」

「……いつもあそこで貰っているの?」

「いや、あそこで食材をもらうのは特別な時だけだよ」



 その言葉を最後に家まで無言でした。

 …気まずい。

 私、このままお世話になってていいのかなぁ?

 何か駄目な気がする。

 よくわからないけれど。 


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「あら、お帰り」

「あれ?お母さん居たの?」

「ああ、その子の記憶を戻せるかなーって思ってお医者さん呼んだの」

「どうも、平坂と申すもので」


 ヒラサカさん?

 白い服を着た人で人相はいい人ですが……

 どうしてか安心出来ない、近づきたくもない。


「それじゃあお願いしますね」

「分かりました、最善を尽くします」


 そう言ってお母さんとあの子は別の部屋に行き、この部屋には私とヒラサカさんだけが残りました。

 ……えーと。



「それじゃあそこの椅子に座って、これを見てくれるかな?」

「は、はい……」


 私はヒラサカさんが指さした椅子に座り、ヒラサカさんが取り出した火のついた蝋燭を見つめます。


「まずはこの火をよく見て、何も考えなくていいから」

「は…い……」


 私はなぜかとても眠くなってきました。

 起きていながら夢の中にいるような、そんな不思議な感じ。

 まるで宙に浮いているような感覚。



 …トランス状態とはこれまた厄介。

 これじゃやるしかないじゃん。


「それじゃああなたのお名前を教えてくれるかな?」

「名前は……名前?」

「そう名前」

「名前は…なま、え……?」



 これは一回引っ込めないと駄目かな?

 でもそうすると面倒臭いことになるな。

 ……まだ様子見にしよっか。

 壊れそうになったら出てくるという事で。



「じゃあどこで生まれたの?」

「……………」

「これも駄目か……何か憶えていることはある?」

「……………」

「やっぱり駄目、か。しょうがない、じっくりと行こう。はい、もう終わり」


 そう言ってヒラサカさんは手を叩きました。

 それと同時に私の意識は再びはっきりとした世界に戻り、思考も纏まり出します。



「ちょっとお母さんを呼んできてくれるかな?」

「はい、わかりました。それでは」


 私は部屋を出て、隣の部屋にいたイグナのお母さんにヒラサカさんが呼んでいたと伝えました。

 その後あの子のお母さんがヒラサカさんと何か話してる間に、イグナのお母さんと同じ部屋にいたイグナと少しお話を。



「何やってたの?」

「んー、憶えてない」

「えぇ!さっきのことじゃん!」

「だって憶えてない……」

「まあいいか。それじゃあ御飯の準備しよっか、お母さんに頼まれたんだ」


 そう言ってイグナは台所の方に歩いていきます。

 その後二人で食器なんかを用意していますとイグナのお母さんがやってきました。

 あとはもういいと言われると私とイグナは椅子に座り、御飯を待つ態勢になります。

 何かお母さんが浮かない顔をしていたのは気のせいでしょうか?

 イグナは気が付いていなかったようですが。

 鈍い子。


「はーい、御飯出来たよ。食べ終わったらイグナは私と一緒に畑ね」

「ふーい」

「私は……?」

「あなたは町を見て回っておくといいわ。一応町の地図くらいは頭に入れておいた方がいいから」


 へぇ?町を見て回れるんだ。

 これはチャンスかも、ちょっと承諾しておこうか?

 

『ほら、はいって返事!』

「は、はい!」

「どうしたの?いきなり大声出して。まあ元気なのはいいことだけどね。それじゃ、一通り見てきたら家の中で待っていてね」



 そう言ってお母さんとイグナは出ていきました。


 さっきの声は誰?

 さっきはついつられて返事をしてしまったけど……?

 どこから?


 ……取りあえず今は深くは気にしないで町を見に行こう。

 何かそうした方がいい気がする。



 という事で外に出ます。

 町を詳しく見て回ろう。


 最初ら辺は街並みを見て回っていましたが次は外側にある畑の方を見ていました。

 街灯なんかはないので夜は暗くて何も持ってない普通の人間なら何にも見えなさそう。


 …そこまで広くもないし簡単に道は憶えられました。

 今日はもう帰って、眠ろう。

 何だか眠たいし、そんなに動いてないのに……

 取りあえず、寝よう。


 お休みなさい。



 さて、セレナも寝たしやるか。

 下見はしっかりした、あとはなるべく人目に付かないルートを考えておかなきゃ。

 あいつらに見つからないようにあの壁も壊さないといけないから色々と策を練らないと。

 いやー、まさかこんなところにまでいるとは思わなかったよ、気付かれてはないみたいだけどさ。

 怪しまれている以上早いところ退路を確保しておかないと。


 ……そろそろ帰っておこう。

 あまりに長い間ぶらついていると帰ってきた時が気まずい、通報されるかも。

 通報はさすがにないか。

 でも気まずいことには変わりない、さっさと戻ろう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「ただいまー。あれ?どこにいるのかな?」

「ちょっと二階見てくるよ」

「うん、お願い」


「…ああ、僕の部屋で寝てたよー!」

「きっと今日の診断や町を見て回って疲れたんでしょ。ゆっくり寝かせてあげましょう」

「はーい」

「しかしそうなるとこれはまた明日ね」

「えぇー」

「しょうがないでしょ、この子を我が家に迎え入れる歓迎の為の食材なんだから」

「ふーい」

「じゃあ今日はいつも通り食べて、寝ましょう」

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