第十九話 “生”を喰らうモノ
「こっちだ!見つけ次第射殺して構わん、何としても研究室には近づけるな!」
「「「「サー・イエス・サー」」」
「「……………」」
警備隊だと思われる奴らが私たちが入ってきた方に向かっていく。
腕にはアサルトライフル、こりゃ敵も本気だね。
私たちは体の小ささを生かして物陰に隠れて敵をやり過ごしている。
「ねぇ、どうして戦わないのさ。さっきまでやるき満々だったのに」
「セレナのいるところを確認しているんだよ。セレナはあいつらにとって大切だからね、警備が最も厚いところにいるはずだ。ならあいつらが来た方向に向かえば見つけられる可能性が上がる」
小声で会話する。
普通の声でもこの警報のおかげで聞こえないだろうけれどね。
でもそろそろ動き出すか。
「そろそろ出るよ。準備はいい?」
「うん、いつでも行けるよ」
イグナはオースティンにもらったのか木刀を手に持っている。
木刀でも魔力を使えば十分な凶器だ。
むしろ剣よりも使い勝手がいいかもしれない。
「じゃあ行くよ。躊躇ったら殺されるからそのつもりで」
「躊躇わなくても――」
「おしゃべりは終わり。魔力はいくらでも使っていいからとにかく死なないことね」
私は物陰から出ていく。
そして目の前にいた警備隊を魔術を使い全員吹き飛ばす。
「イグナ!行くよ!」
「わ、わかった!」
私達は警備隊をなぎ倒しながらこいつらが来た方向へと走る。
私達を見つけた奴らは容赦なく私達に向けて発砲してくるがこの程度なら魔術で簡単に防げる。
この程度なら刻字の防壁レベルでも余裕。
イグナも何気に役に立っている。
私が敵の攻撃を防いでいると時々私の後ろから出てきて敵を倒したりしている。
止めは刺してないからそれは私がやっているんだけどね。
そんな感じで兵士が出てくる方向へと私達は走っている。
にしてもセレナの詳しい居場所がわからないのが痛い。
私は大体二つの効果の魔術を使い分けているんだけどその片方しか使えないんだ。
片方は前にも言った通り“吸収”及びそれに伴う“引力”。
もう片方は“吸収”と対になる“放出”及び“斥力”。
使えないのは放出及び斥力の方。
吸収及び引力は私の目に見えているところならどこでも使えるし力の調整もそこまで必要じゃないから楽なんだ。
でも斥力は私中心で、力を入れすぎるととんでもなく広い範囲が消し飛んじゃうから。
勿論力の方向とその範囲ぐらいは指定は出来るけどね、力が及ぶ距離の調節が大変。
ロープを引くのに力の加減は対して必要ないけど物とかを押すのは力の加減が必要でしょ?
そういう事。
今はまだ慣れてないから下手したらうっかりこの辺に大きなクレーターが出来ちゃうよ。
クレーターで済めばいい方か。
最悪世界ごと吹き飛んじゃうからね。
だから本当に軽くしか使えない。
具体的には人をその人の後ろの壁ごと木端微塵にするぐらいの強さでしか。
でもそれだとちょっとセレナごと吹き飛ばすかもしれないから使えない。
「イグナ!三体やれる!?」
「わかった」
曲がり角のところから兵士が三人出てきた。
先ほどから少数が固まって出てくることが多い。
あくまでセレナは死守するつもりか。
残りはきっとセレナのいる研究室にいるんだと思う。
それにしてもイグナはセンスないね。
オースティンはそこそことか言っていたけれど私の魔力使ってこれじゃてんで駄目だ。
銃を持った大人三人程度に手間取っているんだからね。
このぐらい一瞬で終わらせてくれないと困る。
「こっちだ!急げ!」
「ちっ、増援か。めんどくさいなぁ。イグナ!一気に突破するよ!」
「この数で!?」
数が少ないと思っていたら今度は一気に来たよ。
通路を塞いで通れないほどの大群が。
と言うか先が見えないんだけど。
しょうがないから少しだけ、私の力を見せてあげるよ。
「【黒球・大吸生】」
私の手のひらの上に小さな黒い球が出来る。
何よりも暗い黒色の球が。
そしてその球が現れた瞬間目の前にいた兵士たちは一人も残らずにその場に崩れ落ちた。
それを確認して私はその黒い球を握りつぶして私が吸収する。
「さあ!急ぐよ!」
「え、あ、うん」
目を丸くしていたイグナに呼びかけて兵士たちが来た方へと急ぐ。
時間的にはそこまで余裕はないはず。
起動までに間に合うか……?




