第十八話 敵地突入
何言っているんだこいつ。
これから起こることがわかってないの?
準備運動代わりにこの場で殴り殺してやろうか?
前みたいに振り払おうと思ったけどイグナの目は真剣そのものだ。
…なんか私こういった真剣な眼に弱いなぁ。
シアンとオースティンもなんか微妙な目してるし。
「…わかった。でも条件がある」
「条件?なんでもするよ」
「簡単だよ、今すぐ私の手の甲に口づけをしなさい」
「「えっ!!!」」
なんだよシアンも一緒に驚いちゃって。
時間がないんだから一々説明させないで欲しいんだけど。
まったく、もう。
「今のイグナを連れていってもおとりにも使えない、ただ死ぬだけだよ。でも私と簡単な契約をして軽く私が力を分け与えれば多少は使えるはず。オースティンに魔力を使った剣術は習ったんでしょ?」
「一応の初歩は……」
「なら十分。早くしないのなら置いていくよ」
「う、わかったよ………」
なんか嫌々だね。
私個人としてはどうでもいいんだけど。
セレナに言ったらまたイグナへの好感度が下がりそうだ。
イグナは少しばかり躊躇した後顔を赤くしてやっと私の右手の甲に口づけをした。
これで契約完了だね。
少しだけこの契約について説明しておくと、これは簡単な“主従契約”だよ。
主となるものの手の甲に服従の証として口づけをする。
これは簡単に出来るので契約も主が切ろうと思えば切れる今の状況にはかなりあったものなんだよ。
当然主は従者に力を分け与えられるし、従者は主に従わなければいけないが命令じゃなくちゃ別に無視しても構わない。
簡単なものは束縛も弱いってことだね。
本当に凝ったものは結構な準備が必要なんだよ。
主に物とか場所とか時間とか。
…さて。
「それじゃあイグナ、そのまま私の手をしっかりと握っていてね。死にたくなければ」
「え――」
イグナがきちんと私の手を掴んでいるのを確認してから私は走りだす。
瞬く間に周りの風景が変わっていく。
私にとっては見慣れた光景だけど見慣れていない者ならきっと感動とかするんだろうね。
もっとも目が開けられるのならの話だけど。
イグナは目を開けられてないだろうし。
スピードを緩める気はさっぱりないよ。
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さて、あいつらのこの世界の拠点と思われる場所に到着。
セレナの体はこの場所にある。
パッと見この場所には何もなく、他と何も変わらない荒地のように見える。
でもよくよく見ると違和感がある。
地面が固いんだ。
「セレナは地下にいる。ぶち破って突入するよ」
「ちょ、ちょっと待って」
なんだ、イグナは今になって怖気づいたのか?
ならもう帰ってほしいんだけど。
と思ったけれど怖気づいたってわけじゃなさそうだね。
「俺は何をしたらいい?」
何を、か。
と言うかイグナの一人称って俺だったっけ?
今はどうでもいいことか。
「セレナの詳しい居場所がわかるまで私は本気を出せない。だから敵との戦闘はそっちも受け持ってもらうよ」
「わかった。…殺さなきゃ駄目なのか?」
「当然、これは稽古じゃないんだ。死んだら元も子もないんだからね」
さて、それじゃあ突入しようか。
「心の準備の時間はもう終わりだよ。この地面を……ぶち壊す!」
私は地面の固い部分に手を向ける。
すると地面はミシミシ音をたてながらどんどん沈み、大きな音を出して粉々になった。
結果地面には大きな穴が開いたが、その下の方にはよくわからない実験施設のようなものが発見でした。
「やっぱりここだったか。よし、入るよ」
「え、えぇぇぇぇぇ!」
私はイグナの手を取り、穴の中に跳び下りる。
『侵入者あり!侵入者あり!警備隊直ちに現場に急行せよ!』
けたたましい警報がなりながらそうアナウンスが鳴り響く。
さあ、楽しいパーティーの始まりだ!




