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運命の筆
いざなぎは、呪われた巫女の元へ向かう。
社は、屋敷の裏の森にある一本道の先にあった。
神社には、賽銭箱に寄りかかっている若い巫女がいた。
キセルを咥えてふかしている。
「ありゃ、誰か来たがね。珍しやぁ。雨でも降るんじゃないけ」
いざなぎは、巫女に事情を説明し、運命の筆を見せてもらうことになった。
二人は神社の裏にある蔵へ入る。
「これだがねぇ。持てるかえ」
黒い筆の持ち手には、貝殻で、花の彫り物がしてある。
いざなぎは、やすやすと筆を持つことが出来た。
「へぇー。持てんのかえ。なら大丈夫かね。お前さんにしばらく貸してやるかね」
「でも大丈夫なんですか。運命を書き換える力がある筆と聞きましたよ」
いざなぎは不安になって、巫女に尋ねた。
「ああ、大丈夫大丈夫。わたしが力を解放せにゃ、筆の力は使えんのよ。持ってき」
「ありがとうございます」
いざなぎは、深くお辞儀をした。
「あい、がんばってちょ」
呪われし巫女は、ゆるい人だった。